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動画において、カメラは視聴者の目の代理である

作者: えどまき
掲載日:2025/08/30

 最近、YouTubeである種のMMD動画をよく観てます。ボディラインくっきりなきわどい衣装の3D美少女キャラが、部分的にゆっさゆっさたゆんふるんと揺らせながら、歌に合わせて踊る系の動画です。アイドルマスターの動画もいいですね。とくにMODで透け透けえちえちな衣装にしてるのとか。

 観てると「エッッッw」とか「デッッッw」といった声が聞こえてきそうです。これぞ叡智です。紳士な娯楽とはかくあるべきよのう。


 キャラはゲームやアニメのものらしいのですが、元ネタを知らないまま観てます。かわいければええじゃろ、な感じで。あと、歌そのものにはまるで関心がないもんで、音声はミュートして、ただ映像のみをネットリした視線で眺めてます。

 まー、いい歳こいて何見てんだ、というとこなんですが。あと今頃になってMMDって何周遅れ? とか言われそうな気もします。でも、かわいいキャラが動きまわる様はなんとも目の保養になりますなあ。ゲヘヘヘ。(狒々爺の笑みで)



 そんなこんなでけっこうな本数を観てるのですが、ふと気になったのは、カメラの動きがやたら激しくて、ずいぶんとせわしない動画が多いなあ、という点です。


 カメラが前後に寄ったり引いたり、あるいは右に左に振れたり、上向いたり下向いたり、ぐるっとひっくり返ったりと、視点が縦横無尽に動き回って、それが1~2秒もするとパっと画面が切り替わって、また同じように視点が動き回る、と。その繰り返しです。

 観ていて、ちょぉっと落ち着きがないかな~という印象が強いです。



 映像を作る人がそうしたくなる理由も、なんとなく想像はつきます。

 ずっと編集作業をしてると、だんだんと映像を見慣れてきてしまいます。そうなると、同じような画角が続いていたら画面が単調に思えてくるんです。それでカメラで激しい動きをつけたくなっちゃうんじゃないでしょうか。


 なにしろ現実の撮影風景と違って、CGの3D空間ではカメラの置き場所に制約がありません。障害物で被写体が隠れちゃうような場合は別ですが、それ以外だったらどんな位置でもどんなアングルでも撮影できます。

 そのうえ、CGの映像編集環境だと、1コマ単位でカメラの位置を指定できちゃいます。

 いくらでも自在にカメラを動かせてしまえるのです。


 ただ、完成した動画を観る視聴者はだいたいは初見です。作成者は動画の中でどのタイミングで何が起こるか、画面がどう動くか完全に把握していますが、視聴者はそうではありません。

 そのため、画面が激しく動く映像に視聴者はついていけず、おいてけぼりになってしまう。そういうことなんだと思います。


 中には、そこをきちんと理解していて、固定カメラだけの動画を出す作者さんもいたりするんですけどね。



 なんでわたしがそんなとこを気にするかというとですね。

 わたしは以前、とあるフライトシューティング系ゲームの開発に携わったんですが、そのゲーム、カメラがものすごく独特な挙動をすることが企画段階で決まっていたため、それを現実のプログラムとして組み込むのにえらく難儀しまして。

 そういう経験があるもんで、それ以降、わたしはゲームに限らず映像作品全般でのカメラの動きというのにはどうにも神経質になってしまいましてね。動画を見ていると、カメラの挙動が気になってしまうのです。



 閑話休題。

 ここで、カメラがガンガン動き回ることの影響を考えてみたいと思います。


 みなさん、ゲームをプレイしていて、高いところから落ちるときに胃が「きゅ~っ」となったことはありますか? エレベータで下に降りるときの感覚を大幅にパワーアップしたような感じですね。わたしはよくあります。3Dのゲームはもちろん、2Dのゲームでも感じることがあります。

 ゲームの画面の中だけのはずなのに、現実で高いところから落ちるときに感じるのと同じように、胃が「きゅ~っ」とくるのです。

 これは画面に映し出された映像を見てるだけでも、現実の肉体に生理的反応を引き起こせるという事例といえます。


 POV映画って形式の映画、観たことありますかね? 作中の登場人物が持っているカメラやスマホで撮影した、という設定のドキュメンタリー風の映画です。『ブレアウィッチ』や『クローバーフィールド』辺りからこの形式が話題になり、このタイプの低予算映画が大量に作られてたりしますが。

 あの手の映画は手振れが激しくて、ずっと観てると酔うケースがあります。慣れてないとテキメンにきますね。

 あれも映像によって生理的反応を起こす一例と言えます。


 ゲームの『3D酔い』も現象としては同じでしょうか。あれも、慣れないとキツいですねえ。

 わたしの想像ですが、たぶん3D酔いというのは、

・画面の視点位置と現実の体の視点位置のズレ(ゲーム内の(カメラ)の位置と現実の頭の位置が一致していない)

・画面の視野角と現実の視野角のズレ

などが合わさって、脳が違和感に対処しきれずバグってしまうのが原因なんではないか、と思ってます。慣れると気にならなくなるのは、このズレに脳が順応するからだと。

 恐らく、初見でこれを解消するには、オプション設定で現実でのプレイヤーの頭の位置とモニターの距離、モニターのサイズなどを入力することで、現実空間とのズレを解消する必要があるんじゃないかな、と思います。



 なんにせよ、映像が脳に影響を与える、というのは間違いないでしょう。

 普通の映像を見ているときでも、吐き気というレベルまではいかずとも、何らかのストレスが脳にかかっているんじゃないでしょうか。


 これがアクション映画とかであれば、そうしたストレスも緊張感を高める演出につながります。だから映画ではここぞというところで激しく動く場面を入れています。

 でも、女の子が踊ってる姿をナメるようにじっとりと鑑賞したい、という動画でそういうストレスは本当に必要でしょうか?



 動画において、カメラとは視聴者の目の代理である。

 動画作成者はそこを忘れてはいけないんだろうな、と思います。自戒をこめて。


〔了〕


お読みいただきありがとうございます。

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