神々の遊戯
苦痛と抑圧を断ち切り、永遠と安息をもたらした我らの偉大なる王ライジン。
これは、我らの偉大なる王のみが知る、あの日の歴史である。
---
宇宙が創造される以前から存在し、万物を創造した唯一無二の存在――神。
彼らは全ての生命の父であり、決して被造物などが及ぶことのできない汎宇宙的存在である。
彼らは望むもの全てが可能であり、彼らが構想する全ては現実となる。
しかし今、その無限なる創造者たちは、ある光景を眺めながら静かに笑っていた。
その光景からは、鉄と鉄がぶつかる音、不吉な爆発音が絶え間なく響き渡っていた。
何か不吉な音だった。彼らはいったい、何を聞いてるんだろう。
その音を追いかけさらに近づくと、鉄の衝突音は苦痛の絶叫に変わり、爆発音は死を呼ぶ咆哮と変化した。
ついにそれが何であるかが明確となった。
驚くことに、それは戦争であった。
人間が人間を殺す場面、人間が亜人を殺す場面、亜人が人間を殺す場面。このような、恐ろしく見苦しい画面を神々は笑いながらみていた。それは、神々を信奉する被造物にとって信じられないことであったが、これは紛れもない現状であった。
多くの存在が上げた悲鳴は山脈を越えて響き渡り、撒き散らされた赤い血は大地を濡らし、まるで川のように流れていた。それは凄惨であり、悲惨であり、残酷であった。
生命体のうち、誰かは神に祈りを捧げることもあり、また誰かはその圧倒的な苦痛により精神が崩壊し自ら命を絶った。この恐ろしい戦争は、まるでウイルスのように生命体の本質を蝕みながら広まっていった。
さて、ではなぜ神々たちはその光景を見ながら笑っていたのか。彼らがこの凄惨な惨状を見て笑っていた理由は簡単だった。それは、この破壊と絶望の元凶が彼ら自身であったからだ。そして彼らは、この残虐な惨状を「神々の遊戯」と呼んだ。
しかし、全ての神々が狂気に染まったわけではなかった。闇があれば光があるように、善の本質を持つ神々も少数存在した。神殿の奥深くで、一筋の光のように集まっているその善良な神々の前に誰かが近づいてきた。
そうだ、彼こそ我らの偉大なる王であった。王が彼らに近づくと、善神たちは彼を警戒の眼差しで見た。
すると王は慈悲深い微笑みを出しながら言った。
「我は--------である。そう警戒することはない。」
彼の名前が明かされると、善神たちの顔には驚きが広がった。
「あなたが……?なぜ……ここに……?」
だが我々のような存在があの御方の神名を知ることは不可能であった。
しばらく時間が経った後、偉大なる王は彼らとの対話を通じてこの惨劇の全貌を把握した。たとえ短い時間であったとしても、善神たちは自分たちが提供できる全ての情報を提供してくれた。
善神たちは自らの本質に従い、王に隠すことなく全てを語った。彼らは真に善を行おうとする者の前では決して真実を隠さなかった。全ての真実を知ったその瞬間、偉大なる王は心の奥底で決意した。
「もはやこの光景をただ見ているだけではいられない。」
王は決断した。死んでゆく者たちに目を背けないと、絶望に侵食されたこの世界を救うと。
悲鳴に覆われた世界、闇に囚われたこの地へ向けて、彼は光を掲げて進むだろう。神々ですら遊戯として楽しむその世界のために、偉大なる王は自ら動くことにした。
取るに足らない儚い命のために、彼はどんなことも厭わない。我らの偉大なる王は、闇のみが存在するあの世界に、再び燦然たる光を授けるだろう。
---
事の始まりはこうだった。
創造の権能すら退屈に思えるほど無限の歳月を生きてきた神々は、もはや創造にも興味を失っていた。永劫を生きてきた神々たちは「新しさ」という感覚に飢えていた故、ついにある神へ声をかけた。その神は太古の神々の一人であり、「面白さと悪戯の神」と呼ばれるロキであった。
神々はロキに頼んだ。「我らに新たな遊戯をプレゼントしてくれ。」と。
創造の退屈さを超える刺激を渇望した神々は、最も危険な存在に新しさの鍵を渡した。
ロキは新たに与えられた仕事にふふっと笑い、すぐに行動を開始した。だが、神々は一つのことを忘れていた。偉大なる神である彼の悪戯は、常に代償を要求するということを。
ロキは神々の権能である力を集め、取るに足らない微物――すなわち人間をはじめとする生命体たちに「魔法」と「武闘技」という強大な力を与えた。それは確かに偉大な贈り物のだった。だが、贈り物はすぐに呪いとなった。
それは偉大なる神々の霊を利用した、いわゆる禁術であり、神々の生命そのものを与えた非常に危険な実験だった。ロキは神々と微物たちに同時に代償を要求した。神々には神々の霊を犠牲にさせ、微物たちには――
ーーー
アスラン。その世界を神々はこう呼んだ。四方を果てなき深淵の海に囲まれた、脱出不可能な監獄。或いは、絶え間ない戦争と苦痛が大地を侵食している、いわゆる森羅万象の地獄であると。これにてロキは遊戯を完成させた。神々のための演劇、生命体たちを嘲笑う巨大なサーカスの幕が始まったのであった。
事は現実に戻り、この全てを把握した我らの偉大なる王は、ついにロキの元へと向かった。ロキはいつものように道化の服装をし、神々の間を漂いながら自身を誇示していた。まるでサーカス団の団長に見えた。その滑稽な姿は王にとって、それ自体が嘲弄であり挑発だった。
王はゆっくりと、しかし決して軽くはない足取りでロキに近づいた。彼の一歩一歩に神々の視線が注がれた。その足取りは単なる動きではなく、意志と権能の重圧を込めた歩みだった。王の内心から湧き上がる怒りはすでに彼を抑えきれないほど揺さぶっており、彼が近づくにつれて世界そのものが歪むかのようなオーラを出していた。彼のオーラは、まさに太古の神々の中で「真の頂点」だけが出せる圧倒的な威圧であった。
その圧倒的な存在にロキは当然気づいた。そして、ロキは微笑みながら王に注目した。や果て、彼らはお互い目線を合わせるほど近づいた。先に口を開いたのは王であった。
「ロキ、一体どこまでこの悪意を続けるつもりなのか?」
「ああ……やはりあなたですか。」
「単刀直入に言おう。今すぐ、この狂気をやめろ。」
「数十の次元を糸のように撚り合わせても、結局あなたはここにいらっしゃいましたね……。」
「まさか、断るつもりはないだろうな?」
その言葉にロキは手を顔に上げて笑いながら言った。
「あなたに逆らうことができる神がどれほどいるでしょうか?ですが、残念ながら……私はこの狂気をあまりにも愛していましてね。ご期待には沿えません。」
ロキの皮肉げな言葉が終わる同時に王の右手に一振りの剣が現れた。その剣は燦爛たる黄金の輝き――世界で最も純度の高い金で装飾されたかのような光輝であった。神々ですらその光に目を細めるほどであったので、その剣が持つ光は想像すら難しかった。その剣は【世界の剣】。鍛冶神ヘパイストスが命を賭して製作した伝説の名剣。
王は無言で、ただ一筋の黄金の軌跡を描きながら剣を振るった。剣は正確にロキの首へと向かっていた。誰も追うことのできない速さで、素早く進む王の剣。剣先が彼の皮膚に触れるわずか数ミリメートルの直前―― 剣と何かがぶつかる音が聞こえた同時に巨大な砂埃が現れた。王は即座に剣を振るって視界を遮る埃を切り裂き、その光景を目撃した。
黒い翼を持つ存在が、一つの盾をもって王を睨みつけていた。彼の名はルシファー堕落した天使たちの王であった。王の一撃を辛うじて防いだルシファーは、身の毛もよだつような微笑みを浮かべて言った。
「偉大なる神々が互いを殺すなど、決してあってはならないことです。」
その言葉にロキもにやにや笑いながら言った。
「彼の言う通りですよ。ふふっ……本当に面白い。」
王は重い息を吐きながら、手から剣を収めた。【世界の剣】は亜空間の中へと消えた。しかし、まらりの空気がおかしくなっていった。それは、神が神に向けて剣を振るったという、絶対不文律の違反であったからである。沈黙が周辺を支配した。一体誰がこの空気を破ることができるだろうか。
しかし、その空気はある神の叫びによって簡単に破られた。
「くっそ――っ!!!!! おい、みんなこれ見て!!!!! 超――面白ぇぞ!!!!!」
その叫びに、全ての神々の視線が彼へと向かった。そして、ロキは笑っていた。
ーーー
【栄光の時代】 / それは、宇宙と世界が存在する以前――ただ神々のみが君臨していた、時代を指す。その時代を神々は畏敬を込めて【栄光の時代】と呼んだ。では、なぜ彼らは敬意をもつんだろう?それは、神々の間の序列を明確にするための【位階の祭り】が開かれたからであったからだ。この祭りは単なる力の競い合いではなかった。
彼らの存在性、太古から定められた位相の重さを測る、意味と栄光の衝突であった。その序列の頂点に並び立つ存在が三人いた。「面白さと悪戯の神ロキ」、「正義と高潔の神デメス」そしてもう一方は【-------】。
だが、二つの存在の間で起こったある悲劇的な事件は、すぐに【-------】に過酷な運命をもたらした。彼は世界から、いや、全ての生命と神々から拒絶された。存在そのものを否定された者。彼は神々の間から消し去られ、記憶すら遮断された。その結果は彼を無限の孤独に陥れた。
時間すら意味をなさない世界の中、静寂の中に漂う亡霊のように存在しなければならなかった。だが理由は分からなかったが――全てを脳楽するロキと、全てから見捨てられたその【-------】は、互いを見つめ合っていた。その間には言葉のない長い沈黙が流れ、その沈黙はもしかすると、新しい時代の序幕だったのかもしれない。その奇妙で危うい静寂を、一柱の神の狂気じみた叫びが破った。
「くっそ――っ!!!!! おい、みんなこれ見て!!!!! 超――面白ぇぞ!!!!!」
その、言葉にロキは反応した。
「今日は〜〜アスラン大陸で一番面白いことが起こりますよ!みんな〜〜画面に集中〜〜!」
王はその場面を眺めながら、どんな言葉も、どんな行動もできない無力感に沈んでいた。彼は静かに目を閉じた。そして考えた。「……どうすればこの狂気を止めることができるのだろうか。」って。彼の内面では、数えきれないほどの葛藤が噴き出した。彼は今、神としてなすべきことを、生命体のとして守るべき使命を考えていた。そして、王の瞳の中に一つの決意が浮かび上がった。
ーーー
アスラン大陸――神々が創造した戦争の地獄。数多の神々の手が触れたその地には、数えきれないほどの様々な種族が互いに絡み合い、生きていた。それぞれ異なる言語、異なる肌、異なる思想と伝統。そしてその全ての差異は、結局分裂と衝突を生み出した。その差異は自然と神々の謀略によって増幅され、結局アスラン大陸は絶え間ない戦争の渦巻きに飲み込まれた。
戦争は波のように押し寄せ、その波にはあらゆる種族が押し流された。強者は弱者を踏みつけ、弱者は消え去った。その繰り返しは果てしなく、永劫の時を超えて続いた。生の終わりは常に苦痛であり、死は安息ではなく、また別の戦争の始まりであった。かくしてアスランは文字通り――神々が産んだ地獄となった。
空は黒い雲に覆われ、太陽はもはや大地を照らさなかった。炎と血に染まった大地。洪水、地震、山崩れ、飢餓と疾病、そして何よりも――殺人と殺戮。その中で人々は絶叫した。自分たちを救ってくれと王に、指揮官に、仲間に、同僚に、友達に、家族に。そして最後には神に。だが神々はその悲鳴を嘲笑の種とした。彼らの必死の声はただの遊びであったのだ。
アスラン大陸は神々の遊び場となり、人間はただの玩具に過ぎなかった。今、疲弊したアスラン大陸を見るがよい。彼らに残されたものは、飢えた獅子のような捕食と殺戮、そして生まれたばかりの兎のような脆弱さだけが、彼らに与えられた唯一の神々の贈り物なのである。
ーーー
【魔法】
それは神々が被造物に初めて与えた偉大な権能であった。医大と創造ではなく、破壊と変革の炎。光と闇の全てを内包する二重の遺産。魔法は火を見たことない猿たちに火を見せてくれた。崇拝と恐怖の対象であった嵐と雷を操る力を与えてくれた。ここで、全ての悲劇が起こった。
神々を畏敬し尊敬していた彼らは、もはや自分たちが神であると信じ始めた。そしてその信念はすぐに狂気へと変質した。魔法の炎はもはや神秘ではなかった。それは、殺戮の手段であり、破壊の道具であった。どこからでも炎は現れ多くの人々の命を奪った。誰かは魔法で数十人を焼き殺すことに快感を覚えた。
そして、それらの集団が集まり部族となり、国となって結果戦争が起きた。無数な戦争は全てを破壊した。人も物も自然も惑星も…
そして、「カン」が生まれた。神に愛される最高の存在。アスラン大陸最高の殺戮者が。「カン」は国を作り全てを破壊し始めた。彼が渡った道は血の海が現れ、悲鳴が溢れた。人間も、エルフも、ドワーフも、獣人も、亜人ですら――誰も「カン」に対抗しようとはしなかった。なぜかって?それは、「カン」の前では誰でも赤ん坊なものだったからだ。それほどの、力の差。
かつて燦爛だった人間の文明は彼によって灰燼に帰し、数千年にわたり守られてきたエルフたちの大森林は灰に変わった。獣人の種族自体が抹殺されることもあり、ドワーフの巨大な工房群もまた、粉々に打ち砕かれた。そして彼がその全ての破壊を「罪」としなかった理由――それは、彼が神の寵愛を受ける者であったからだ。
神々は彼らを咎めなかった。むしろ、彼らの破壊を見て笑い、称賛し、楽しんだ。カンは神の心腹、狂気の代理人、そして魔法という権能の堕落を象徴する存在となったのだ。
このように魔法は祝福ではなかった。それは最初から破滅の火種だった。人間が神の領域に足を踏み入れた瞬間、その結果はすでに決まっていた。炎は温めることができるが、直接触れると苦痛はがあるように、それは触ってはいけない領域であったのだ。そして、炎はすぐに世界を飲み込むだろう。
ーーー
ダッダッダッ
巨大な漆黒の馬に乗ったカンたちが、アスラン大陸で最も弱いと噂されるアウスへの侵攻を開始した。
わずか数時間でアウスの全領土を焼き払ったカンたちは、残るは最後の砦である王城への侵攻のみ残っている状態だった。王城は巨大な門で固く閉ざされていた。だがカンたちはそれを容易に破壊できただろう。しかし彼らはまだ侵攻を開始していなかった。なぜなら、カンの命令がまだ届いていなかったからだ。
「カンのお言葉はまだかっ!?」
一人の男がものすごく雄叫びを上げて叫んだ。彼の名はタカイ。カンの最も信頼する部下であり、アスラン大陸で最も強い武力を持つ男であった。タカイは2.5mを超える巨大な体格を誇り、その圧倒的な大きさの前には誰もが自然と頭を垂れるしかなかった。
しかし、今日はどういうわけかカンの命令が遅れていた。タカイはカンをひどく心配し、軍を撤退させるべきか悩んだりもしたが、獲物を置いて逃げる獅子はいなかった。彼は忍耐力を持って、カンの命令を待った。そして、その時、カンの言葉が聞こえてた。
「あ、あ、マイクテスト。よく聞こえるか?タカイ?」
カンの声から聞き慣れた声が聞こえた。そうだ。その声の主、カンの真の正体は、まさに面白さと悪戯の神、ロキであった。
「はっ!はいっ!!よく聞こえます!カン様!!」
「相変わらず声が大きいな。」
「すっ、すいません!!!」
「さあ、いよいよパーティーの始まりだよ〜 彼らに絶望と恐怖をプレゼントしてね〜〜!!」
「はっ!!必ずこのタカイ、ご期待に沿えるよう頑張ります!!」
「オッケー」
かんの最後の言葉が聞こえると同時に、タカイは天幕を出た。そしてアウスの城壁とその向こうにある巨大な城を眺めた。まるで何か面白い考えが浮かんだかのように、タカイは薄い笑みを浮かべ、自分が持っていた偃月刀を両手で握りしめた。
彼が持った偃月刀は数十キログラムを超えているように見えたが、タカイはまるでそれが軽いかのように自由自在に操った。彼は偃月刀をあちこち回しながら、体をほぐした。まるで戦場に出る前に何らかの儀式を行おうとしているかのようだった。
偃月刀はまるで扇風機のように非常に速く回転した。左手から右手、再び右手から左手へ。タカイはその動作を繰り返しながら、準備を続けた。そしてついに、彼は先に行っていた行動を止め、息を整えながら腰と脚に力を込めた。足を地面にしっかりと固定したまま、タカイは偃月刀を半円を描きながら後ろに回した。
わずかな時間が経過し、タカイはすぐに行動を開始した。刹那、偃月刀の鋭い刀身が右肩の向こう、斜め下の地点からせり上がった。身をかがめていた猛獣が獲物に襲いかかるように、タカイは腰の力を爆発的に注ぎ込み、まるで黒い稲妻のように素早く振り抜いた。
それは「武闘技」の頂点に立つ男の渾身の一撃であった。
「【地砕斬】!!!!!!」
タカイの雄叫びとともに、信じられないことが起こった。巨大な黒い稲妻がそのまま城に向かった。そして、信じられない威力でアウスを守っていた城門と共に城まで切断した。さらに、アウスを真っ二つに分断してしまった。王城はタカイの斬撃によって徐々に崩れ落ちていた。まさに規格外の怪物であった。
自身が作り出した結果を見て満足げに、豪快な笑みを浮かべながら彼は言った。
「くはははは!!!! これがカン様に下賜された偉大なる力だ!!!! 卑しき生物どもよ!!!!」
タカイの一撃の後、カンの軍勢は一斉に王城へと駆け出した。彼らの戦術はまるで旧石器時代の無知な戦闘方法のようだった。ただ獲物に向かって突進し、戦う方法。投石機で石を投げ、簡単な武器で戦う方法。だが、彼らが持つ力は違った。投石機で投げられる小さな石が山のように変わり、簡単な武器の斬撃は微物たちが真似すらできない強力な一撃へと変身した。天変地異そのものであった。
今まさに神々が喜び始めた。ついに神々が喜び、待ち望んでいた微物たちの殺戮が始まったからだった。喜べ、神々よ!満喫せよ、神々よ!
ーーー
カンたちが通り過ぎた場所に、赤い聖水が大地を染めていた。王城は粉々になり形跡すらとどめず崩れ落ち、飢えた獅子たちは逃げ惑う弱々しい兎たちを蹂躙し始めた。アスラン大陸で最も弱いと噂された人間たちの文明は、残酷にも滅亡してしまった。だが、その滅亡の中で面白いことが起こった。
王城の一部生存者たちはカンを恐れていなかったのだった。彼らは意味の分からない言葉を繰り返し続けた。その言葉は次の通りだった。
「王は必ず来るだろう。故に我々は、この死を謙虚に受け入れよう。」
タカイはその言葉を初めて聞き、笑い声を上げながら、偃月刀を振るって多くの人々を虐殺した。しかし彼らは動揺しなかった。まるでそれは、死など恐れてはいないという無言のメッセージであった。そして突然、彼らは祈りを始めた。
[偉大にして全能なる「王」よ。私たちはあなたが来ることを知っています。]
「なんだ?こいつらどうした?」
タカイと兵士たちは戸惑った。
突然起こったこの光景を、彼らはただ見守るしかなかった。
[敵の剣と槍がこの東方を打ち破ろうとも、兄弟たちが敵に無惨な最期を迎えようとも、私たちは限りなく耐え抜くでしょう。]
しかし、しばらくの戸惑いの後、彼らは理性を取り戻した。彼らは直ちに皆殺しを開始した。その日、アウスは滅亡し、カンたちは彼らの宝を探すためあらゆる場所を捜索した。だが王城には宝というものが一つもなく、ありふれた金や銀もなかった。さらに怒り狂った彼らは手当たり次第に城を漁っている最中、ある洞窟を発見し、その奥深くで一つの石碑を見つけた。
[ 天と地が数えきれないほど慟哭する日、「王」は生まれる。「王」は処女の体から生まれ、不屈の体を持つだろう。「王」は神の奇跡を下賜され、偉業を授かり、偉大な知略をもって全世界の支配者となるだろう。
だがその日まで、数えきれないほどの魂がこの大地を去り、苦痛と慟哭がこのアスラン大陸を染め上げるだろう。敵の剣と槍がこの東方を打ち破ろうとも兄弟たちが敵に無残な最期を迎えようともいつか訪れるその日のために、私たちは喜んで命を捧げなければならない。「王」は必ず来るだろう。]
この石碑の意味を知らない野蛮人たちは爆笑を上げ、その石碑を一撃で打ち砕いた。