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腹の虫というか蛇が収まらない日の対処法

作者: 雪ばたり

どうにも腹立たしいことがある。


大したことではない。

命を脅かされた訳でも、人格否定をされた訳でもない。

外から見たら取るに足らない、世界にはもっと大変なことがあるのもわかっている。


それでも、どうにも世界全てから少しずつ歯車がかみ合わないと突きつけられる瞬間がある。

そしてそれは、大抵重なる。


腹の奥底、胃と腸の間くらいに、どうにもマグマのような苛立ちが残ってなくならないのだ。

腹の虫が収まらない、という言葉があるが、これは虫のような小さなものではない。蛇のようにとぐろを巻いて存在感を主張してくるのだ。


こういう時、人は酒に逃げるのかもしれない。

今日も終電近い電車の中で、席からずり落ちているサラリーマンを見た。

そこまで酔えるくらいに自制心がないことを羨ましく思ったりもする。


しかし、もう酒に逃げすぎると記憶もなくすし、翌日膝も痛くなる。逃げた後のダメージを考慮してしまうくらいには、我慢できる蛇なのだ。

これが大蛇のごとき大きさであるならば、私もサラリーマン同様、潔く酒に逃げることができる。

絶妙に我慢できる大きさであるから腹立たしい。

それがまた苛立ちを若干増幅させる。

我慢し、ストレス解消の方法を持たない自分を突きつけられるような気がするのだ。


仕方なく、自宅で一杯やろうと思ってコンビニに寄るのだが、こういう時に限って目当ての酒がない。

もう1件コンビニを巡る余力もなし、かといって他の酒では違う。今日だけは。

虚無感を深めただけの寄り道をし、何も買わずにコンビニを出る。

とことん今日は世界と歯車がかみ合わない。

こういう時は、早く帰り、寝室に直行し、布団と戯れるべきなのだ。実行した。


今度は、眠れない。

蛇が主張してきて、中々寝付けない。またそれに苛立ちを覚えながら、布団の温もりで身体が温まるまで待つ。

ある寒い冬の夜。


そして目覚めると、腹にいたはずの蛇は消えて、あれだけ振り回されたのは何だったんだと思う。


私は知っている。また同じ蛇に悩まされる日がいつか来ることを。

その日のために、この記録を書き留める。

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