第8話 ハズラム教団の侵攻 ~燃ゆる温泉旅行~
蠢動するハズラム教団。
「商店街のくじ引きで温泉旅行が当たっただと?」
「うん。特賞だよ。天の方舟温泉に七名様ご招待だって!」
雨乃は七枚の招待券を掲げて見せた。
「なかなか太っ腹な商店街じゃのう」
「さすがは特賞じゃん」
ニニアンナとパウエラは嬉しそうだ。
「あたしと湊斗と杏樹とニニアンナとパウエラとパーメラが行くとして、あとひとりはどうしよう?」
雨乃は白間家のリビングルームを見渡した。
「おばさんも一緒に行く?」
「あらあらあら、行っちゃってもいいのかしら?」
「それはよい考えじゃのう。子供ばかりでは何かと問題があるかもしれんし、保護者は必要なのじゃ」
「おまえもパーメラもパウエラも子供じゃないけどな」
「何か言ったかのう」
ニニアンナかポーチから巨大ハンマーを取り出したので、
「ソラミミじゃないか?」
と僕はしらばっくれる他なかった。
「お父さんは最近出張で家にいないからうちらがいなくなったらお母さんひとりになっちゃうし行ってもいいんじゃない?」
杏樹も賛成し、こうして温泉旅行の七人のメンバーが決定した。
そんなこんなで連休の初日、天の方舟温泉の旅館に到着。
「うわぁ! 大きな部屋だね!」
一番乗りで部屋に入った雨乃とパウエラが感嘆の叫び声を上げる。
「さすが七人部屋じゃん」
格子戸を開けた杏樹が目を輝かせた。
「見て見て、プライベートの温泉もあるよ。エッチしたあとすぐに温泉に入れるね」
雨乃の瞳がキラリと光り僕を捉える。
「湊斗、今夜は寝かせないから覚悟してね」
窓の外に目を向けると観光名所の天の方舟の遺跡がちょうど見えるようになっている。
「景観もいいし、なかなかいい部屋だな」
「さあ、エッチの順番を決めるのじゃ!」
ニニアンナの掛け声とともに、女の子たちは手を振り上げた。
「じゃんりゅっく、ぽんてぃ!」
「ああっ、負けちゃった」
「うう、負けてしまいました」
「しおしおのへにゃんこじゃん」
杏樹とパーメラとパウエラが敗退し、決勝戦は雨乃とニニアンナの一騎打ちになった。
ニニアンナは額に皺を寄せて集中しているようだ。
「くっ、未来が見えん」
「おまえそんなことに未来視使ってんのかよ」
「そんなこととはなんじゃ! 一番搾りを譲るわけにはいかんのじゃい! 西の大魔女の名に賭けて!」
「せーの、じゃんぴえーる、あらーせん!」
「ああああああっ! 負けてしもうたのじゃ。ストレンジ・チャイルドの未来は不明瞭過ぎるのじゃ」
「わーーい。湊斗の一番搾りゲットだよ!」
「よかったな、雨乃」
「仕方ない、わらわは温泉につかって傷心を癒すのじゃ」
「あーしもいくじゃーん」
「うちもいく」
「まあまあまあ、わたしもご一緒させてもらうわね」
「ではエマーリン様、ご存分にお愉しみ下さいませ」
「うむ」
こうして、雨乃と僕の二人を部屋に残して皆は温泉に入りに行ったのである。
雨乃が期待に満ちた瞳でこちらを見つめている。
「湊斗はもう魔法が使えるんだよね? 幼女にしてくれる? それからエッチしよ」
「ああ、わしの魔法をとくと味わうがよい」
「魔法を使うときは口調も変わるんだね」
「『無垢なる少女、純潔なる魂、幼き心。これらをもて幼女の姿へと変じさせよ。アビス・ペルヴェルテレ』」
ボンッ!
「こ、これは!」
ビビビッと体中に電撃が走ったような衝撃だった。
かつてエマーリンがひとめぼれをしたという赤ん坊の姿そっくりに雨乃は変化したのだ。
「ばぶばぶぅ」
「これが恋というものなのか!」
赤ん坊のかわいらしさ、キラキラとした生命力、内包する魔力の美しさ、にじみでるストレンジ・チャイルドのオーラ、その全てに魅了される。
「抱いていいか?」と問うと赤ん坊ははちきれんばかりの笑顔になった。
「ばぶぅ!」
僕は赤ん坊を抱いた。(性的な意味で)
赤ん坊に触れられたムスコはすさまじい爆発を起こし周囲に精液の雨を降らせた。
「きゃっきゃっ!」
赤ん坊は大喜びだ。
一時間後、元の姿に戻った雨乃は僕のムスコにまたがっていた。
「17歳でもエッチできるか試してみようよ」
僕には不安があった。15歳を過ぎた女の子には勃起しないのではないかという『真性ロリコン』ならではの不安が。だがそんな不安はすぐに杞憂だとわかった。
「あ、勃ってるよ! 湊斗のムスコが勃ってる!」
ムスコは正直者だ。雨乃は特別な存在、大賢者が恋をした赤ん坊であり、湊斗の初恋の相手でもある。
今度は僕がありのままの彼女を受け入れる番だ。愛のレッスンの成果をいかんなく発揮すべく幼馴染を押し倒す。
ふたりで楽園への階段を上っていく。
ドバッ!
思いのほか大量に放出された精液に腟内を満たされた雨乃は恍惚とした表情を浮かべる。
「あたしの中が湊斗でいっぱいになっちゃった。今までで一番湊斗を身近に感じるよ」
「待たせてすまなかった」
「これからもたくさんエッチをしようね」
皆が温泉から帰ってきても、雨乃と僕はエッチを続けていた。
「こらこら、おぬしら何回目じゃ?」
「三回目だよ」
「なんじゃと! 次はわらわの番なのじゃ!」
すかさずニニアンナとのエッチになだれ込む。
「あたしも温泉に入ってくるね。湊斗は?」
「皆とエッチしたらすぐに行く」
「先に入って待ってるね」
雨乃を送り出し、ニニアンナ、杏樹、パーメラ、パウエラの順にエッチを終え、ようやく温泉に向かった。
廊下を歩いていると赤毛の幼女に声をかけられた。
「おにいちゃん」
「シベール! 何故君がここに?」
「うふふふ」
シベールは幼女らしからぬミステリアスな笑い声を漏らす。
「君はまさか……?」
いや、詮索はやめておこう。ここは温泉街、日常から隔絶した幻想世界なのだから。
「こっちに多目的温泉があるわよ」
腕をひっぱられて多目的温泉に連れていかれる。
「ここはめったに人が来ないから、エッチし放題よ」
「それは僥倖」
10歳の幼女と温泉で逢瀬という夢のようなシチュエーションを満喫する。
シベールとの逢瀬を愉しんだせいでずいぶん遅くなってしまった。
「雨乃のやつ待ちくたびれてフヤケてしまってないだろうな」
温泉の中を探したが雨乃はいなかった。
「さすがにもう上がっちまったか」
しばらく温泉につかった後、部屋に戻ると雨乃はまだ帰ってなかった。
「雨乃は?」
「おぬしと一緒じゃないのかえ?」
雨乃……どこをほっつき歩いているんだ?
* * *
最初に異常に気づいたのは杏樹だった。
「なんか変なニオイがしない?」
ガゴン!
窓に何かがぶち当たる音がして、皆の視線がそちらに集中した。
「ギエッ、ギエッ!」
真っ黒なカラダに真っ黒な羽を生やした不気味な生物が窓に張り付いていた。
「ガーゴイル!?」
「悪魔の先触れじゃ。ハズラム教団の奴ら悪魔を召喚しよった!」
「なんだって!?」
窓の外に次々とガーゴイルが集まってくる。
「どうするのこれ?」
あわあわと杏樹はあわてふためいた。
「悪魔を祓うには神聖魔法を使うしかあるまい。エマーリン、行けるな?」
「ああ、問題ない」
ニニアンナと僕は魔石を手に取り神聖魔法を発動させた。
「『輝ける真理の光よ、悪しき魔を封じ込めよ。アルカナ・エクソシズム』!」
「ギャアアアアッ」
ガーゴイルたちが次々と溶けて消滅していく。
「あーしだって。『セイント・ピュリフィケーション』」
「パウエラには負けません。『セイント・ピュリフィケーション』」
パウエラとパーメラの聖属性魔法によってガーゴイルたちが浄化された。
その時、窓の外に男の姿を一瞬だけ捉えた。そいつは雨乃を肩に担いで走り去っていく。
「雨乃!」
「むうぅ! あの男は!」
影が薄いとはいえ見間違えるはずはない。17年間一緒に暮らしていた男の姿を。
「あれは……オヤジだ!」
動き出したハズラム教団。運命のカードは切られた。