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3月某日の一幕

作者: 砂町 峰

ノリで書きます。


よろしくお願いいたします。

るんるんと春に近付く陽気の中、家付近にある緑道を歩く人間。風景のモブ。究極の地味存在。



もちろん|砂町(私)です。


そんな私の背後から忍び寄る・・・一台の車。その車の後部座席のドアが、中の人物によって開けられました。


もちろん振り向きません、それで振り向くほど私は野次馬根性を持ち合わせていないので。


「砂町~、お久」


おや?背後から声が掛けられましたね、誰でしょう。


「あれ、小林(仮)じゃんさ。お久~」


「そうそう、久しぶりなんだなこれが」


視線の先には、しばらくお会いしていなかったマブダチ大親友の小林様が。一般地味モブを自覚し続けてホニャララ年の私にとってさえ、殴りたいほどお綺麗な顔で微笑んでいらっしゃいました。


「ああ、私は忙しい身だったからね」


色々とあったのです、私には。



「で、こっちは放っておかれたと」



「は・・・?」



「春なのに」



恨みがましい発言を、笑顔で繰り返す小林様。春なのにって何ですか、なにかあるのでしょうか春って。



「春?・・・って、そもそもアナタ、国内にいらっしゃらなかったじゃありませんかね」


そうなんです、恨みがましいこの小林様。何と国外にいらっしゃったのですよ。会えるわけもないし、そもそも放っておいたわけでもないのです。



「帰ってきたなぁ、三週間前に」



「そりゃ知ってたけどね。メール来たし」


私はそのころ特に忙しかったがね。でも一応返信はした筈・・・。




「で、砂町は今暇?」



いきなりの質問でした。


「暇・・・とは言えないけどね。心底暇になったことの方が少ないでしょ」


「なら行こうか」



行く?


「何処に?」


「荷物は用意してあるから」


「――は?」


いやはやなんとも、意思の疎通が成り立っていませんでした。私の肩に手を置き、頭一つ分程高い位置から響く小林様のお声。


「さっさと車に乗ろうか」


そのままぐいぐいと、車の中へ押し込めようとしてきます。今気づきましたが、車の中には新たに四人の人物。皆私と小林様の共通のオトモダチです。にやにやとこちらを見る視線は、明らかに面白がっている臭いがプンプンです。


「いやいや、拉致る気ですか」


「拉致とは人聞きの悪い、友人同士友情を深めに行こうな」


「いやいやいや、謹んで遠慮しますよ」


何だそれは、こちらは予定も何も立ててすらいないのに。しかも、明らかに泊まりだろう!


荷物を用意してあるとはどういう事だ!!!


「大丈夫、砂町の家にはもう連絡入れた」


「何て・・・?」


「最近は予定もそれ程入ってない、だそうだ。遠慮なく持って行けだと」


連絡を入れたついでに家へと寄れば、速やかに用意されていたお泊りセットを渡されたそうな。


「おのれぇ・・・っ、余計な事を!」


そんなことを言い、成し遂げるのは母に違いない。そう思った私は、怒りやらなんやらの炎を瞳に滾らせました。


「さっさと行くぞ、時間がおしてる」


「うをっ!?」


しかし、そんな私も何のその。小林様は軽々と私を車の後部座席へと運び込んでしまいました。




それからの私~~~




「で・・・・・・どこ行くの」


もうげんなりです。抵抗する気力も起きません、しても無駄なことは重々わかっています。


「「「「「遠藤(仮)の家の別荘」」」」」


そろう五つの声、打ち合わせでしていたのでしょうか。じつに気に入りませんね。


それよりも、ですね。


「あそこけっっこう遠いよねっ!?」


「スキー場近いからいいよな」


「流すな赤塚(仮)!!」


スキー大好き茶髪男、赤塚が余計なことを言います。


遠藤の家の別荘とは、某県にあるスキー場に程近い小ぢんまりとしたログハウスのことです。友人同士でのお泊りでは、遠出に位置するこの別荘。


「まあまあ、落ち着いて砂町。別にいいじゃん、スキー好きだろ?」


「洒落か大塚、古いぞー」


後部座席から声をかけていらっしゃったこの人物。大塚、とはメガネをかけた友人たちの中では常識人な方に位置するお兄さんです。醤油顔で、のんびりとする時はこの人の傍が一番と私が思う人なのです。


まあ、拉致組織(友人たち)の一味ですが。


「うるせえぞ赤塚、お前茶々入れしてねえで運転しろよ」


「さっさと高速乗りなさいよ、馬鹿赤塚」


この声は車内六人の中で、二人の女性の内一人である佐藤さんです。姉御肌と言うか・・・とにかく可愛がってくださるお方。助手席に座っていらっしゃいます。


まあ、私を拉致した一味でもあるわけですが・・・。


「はいよ」


因みに赤塚と佐藤さんは恋人同士。腐れ縁の如き長い年月を一緒に過ごしていらっしゃるそうです。


「砂町は、ぶすくれてるなぁ」


後ろから頬をつついて来るのは、元暴走族、今はホニャララな職業についていらっしゃる遠藤さん。別荘の持ち主一家の方ですね。私を猫みたいに可愛がるオッサンです。最年長だし。



「手段が強引なんですよ、普通にお誘いがくればよかったんです」


「そりゃあ、面白くないな」


「拉致は面白いんですね」


「面白いぞ、充分」



ニッカリと笑う顔が男臭い、加齢臭でしょうかね。



「お~い、俺はまだ三十にもなってないぞ」



口に出ていましたね、失敗失敗。


まあ取り敢えず、適当に怒りを表現したのでこれで満足することにしました。


これくらいはやらないと、ますます調子に乗って何を仕出来すかわからないのがこの友人たちなもので・・・。




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