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どこに行こう

作者: 星野☆明美
掲載日:2023/03/25

彼女とケンカした。

部屋を飛び出したは良いが、これといっていくあてがない。

夜のとばりが降りて、鳥たちがねぐらに帰る。

こっちへおいで。

誰かが呼んでる気がして街を彷徨う。

「……さん。兄さん」

辻占の老婆が呼んでいた。

「あんたは今迷っているね?」

「ああ」

「現在・過去・未来。占ってしんぜよう」

「悪いが持ち合わせがないんだ」

「無論、ただで良い」

水晶占いらしい。何も浮かんでこないのに、老婆は一点を見つめる。

「道は無数にある。選ぶのはあんたの気まぐれと運。たった今まで最高の運気だったのにおのずからだめにした。いつでも最良であれ。そうすれば幸運は手に入る」

「ふうん」

「今からどこへ向かうつもりだった?」

「繁華街」

「出会いを求めて?」

「まあ、そんなとこ」

「新しい出会いは凶と出てる」

「へえ?」

片方の眉を上げる。意外だったから。

「古い知り合いに会いに行きなされ」

咄嗟に思いつかない。

「ああ、まあ、気に留めとくよ」

適当に言って、手を振り払うと、老婆から離れた。

人の流れに乗ってさまよう。

様々な人の顔・顔・顔。

さがしびとはどこにいる?

「ねえ、あなた」

不意に手を引かれる。

「今夜、暇?」

振り向くと、色白の美人が露出度の高い服に身を包み、微笑んでいる。

なんだかんだ言いながら路地裏まで引っ張っていかれる。

「おい、にいちゃん。俺の女に手を出したな」

やばい。美人局だ。

「すみません、勘弁してください。一文なしです」

どが。

腹を蹴り上げられる。

「けっ。シケてやがんの」

まともに入って苦痛に転げ回る。

「なあんだ。つまんない」

女が吐き捨てて言う。

見ぐるみはがれてポイと捨てられる。

「ミサキ先生……」

小学校の頃の担任の先生の顔が何故か浮かんだ。涙がひとしずく頬を伝う。

どうしてるかな。もう、何年も前のことだし、お互い歳をとっただろう。

身を起こし、店舗の裏に干してある服を拝借して表通りに出る。

「どうして勉強しなきゃならないの?」

「仕事に就いて家族を養って行くために知識が必要だからよ」

「結婚して子どもができたら、もう、お払い箱になるのに?」

「どうしてそんなこというのかなぁ」

「俺の父ちゃん、単身赴任で病気になって呆気なく死んじゃったから。なんか、男って虚しいと思うんだ」

「それは、たまたまそうだっただけで、あなたも全く同じ人生とは限らないじゃないの。子どもができたら、奥さんと子どもを幸せにしてあげなさい。そうしたら、あなたも幸せになるから」

そうかなぁ、ねえ、先生?

「帰ろうか……」

のろのろ歩いて彼女の元へ帰ると、心配して待っていた。

「どうしたの?どこか痛いの?この服は?」

「ごめん」

ぎゅっと抱きしめる。

帰る場所があるのは良いな。うん。

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