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無限の青に、僕らはいた

作者:suturi
 県大会トップ3に入るほど足の速い夏蝶。風を切って走り、リレーでも一番になる。そんな夏蝶と正反対に、少年・カエデは子どもの頃の交通事故で左足をひきずって歩いていた。
 家に帰りたくない夏蝶は、夏休み前に図書館に入り浸るようになり、図書委員のカエデと仲良くなる。夏蝶は、兄二人が医学部に進学している医学系の家系だが、「女の子が医者になる必要はない」という父親の言葉で、家に居場所がない。医療ミステリーや医療本を読むことだけが楽しみだったが、夏休みの間は読む本がないと悩んでいる。カエデは入院生活が長かったため、本を沢山もっていた。夏蝶は、カエデから本を借りるようになって急速に仲良くなる。
 
 事故にあって左足をひきずっているカエデ。本来なら普通に歩けるくらいに回復するはずだったが、処置やリハビリが悪くて引きずることになった。頭がいいのに、医学部に進学させてもらえない夏蝶。現状に満足できない二人だったが、蝶のように空の向こう側に羽ばたいて行きたい=自分の夢を叶えたい、と話すようになる。
 カエデは東京に行くという夢を持つようになり、夏蝶も、一緒に東京に行くと決める。

 だが、夏休みの終わり。夏蝶の誕生日に公園で待ち合わせをした二人に悲劇が訪れる。カエデが、交通事故で死んだのだ。子どもがひかれそうになったところを助けようとしたという。車は子供の姿を見た瞬間にハンドルを大きく切っており、まっすぐにカエデだけを轢き殺したという。カエデは誰も救うことができず、踏みつぶされた蝶のように死んだのだ。遠くの青い空を見ることも、もうできない。秋の名前をもつカエデは、秋を迎えられなかったのだ。
 
 高校を卒業した春。卒業式を出たその足で、夏蝶は駅に向かう。自力で二時間かけて歩くしかなかったのだ。リュックサック一個におさまった引っ越し道具。専門学校には受かったけれど、本当にうまくやれるかは分からない。そう思った時、目の前に、蝶が羽ばたいた。はっと顔を上げるが、蝶は消えてしまう。そうだ、まだこんな寒い時期に蝶がいるはずがない。夏蝶は走り始める。一瞬の風になり、あの青い空の向こう側に、羽ばたくために。
カエデといた夏
2022/03/15 01:01
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