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討伐隊の隊長と出会う

 前回のあらすじ


 討伐隊のキャンプ地に到着。

 丸太の壁で囲まれたキャンプ地の中には、防御施設以外の建物が少なく、大小様々なテントが無数に張られている。


 キャンプ地で生活する者の種族は、人間、エルフ、ドワーフ、リザードマン、オーガ、獣人など多種多様。そのため、人間と違うモン娘たちが、違和感なく普通に生活出来そうだった。


 鉄を加工する音、雑談をする音、ケンカをする音、様々な生活音が混じりあい、騒音となって鳴り響く中を、誠志郎たちは黙って歩く。


 (はぁぁ~~、異世界凄い、エルフとかドワーフが普通に歩いている。おぉー! 巨大な両手剣だ。あんな重そうな物、誰が使用するのかな? えぇっ! なんという大きさ、2メートル以上の大男が居た。しかも、全身の筋肉がバッキバキでムキムキしてる。怖いわぁ~)


 初めて見る種族、地球に無かった物など興味を()かれるものが多く、誠志郎はキョロキョロと周りを見回す。


 すると、注意力が散漫になっている誠志郎を心配して、レイが小声で注意する。


 「ご主人様、周囲に気を取られ過ぎです。私たちが護衛しているとはいえ、油断してはダメですよ」


 「へぇ!? あっ、ごめん。気を付けるよ。だけど、始めて見るものが多いから、つい見ちゃうかな」


 「確かに、そうですね。私は、強い人間の存在が気になります」


 「へぇ~、強い人間がいるんだ」


 「はい、戦闘を見たわけではないのでハッキリと断言出来ませんが、ここまで強い人間は始めて見ました。しかも複数います。正直言って、驚きを隠せません」


 「なるほどね。それじゃあ、他の種族は?」


 「強いですね。ですが、私たちの方が上だと確信しています。安心してください、ご主人様」


  精兵の雰囲気がする者を見て、誠志郎は歩きながら考え込む。


 (強い人間かぁ。ゲームの世界では、弱い人間が強いモン娘に守られながら生活していたはず。野生のモン娘は自我を持たずに暴れ、テイムされたら自我を獲得し人間社会で共存する。世界観は、こんな感じだった気がする)


 考え事をしながらキャンプ地の中を移動していると、大きなテントの前に辿り着く。


 誠志郎たちが、はぐれていない事を確認した案内役の警備兵は、テントに向かって敬礼をした後、大声で話し出す。


 「隊長、自分は本日の警備担当、リリューシャです! 今日到着した、ケットシーの料理人が面会を希望しております」


 「…………入れ! それと、今日の夜警について相談したい事があるから、ガガーシャに来るよう伝えてくれ!」


 「はっ! 了解です」


 立ち去って行く警備兵を見送り、誠志郎たちはテントに入っていく。


 大きなテントの中は、熱がこもって汗などの臭いがするため、少し臭い。床や棚には、武具と謎の道具などが雑然と置かれている。


 テントの奥の方に置かれている大きな机の上には、書類が積まれ事務仕事をしている人間の女性がいた。


 女性の姿は、金髪ショートヘアーで鎧を身に着けていた。他に人が居ないことから、彼女が討伐隊の隊長らしい。


 誠志郎たちの姿に気付いた女性は、事務仕事を止めて話しかけてくる。


 「やあ、ようこそ討伐隊へ。私は、隊長を任されているフレアだ。まぁ、とりあえず椅子に座って。…………あぁ、いけない、客人用の椅子が無かったな。仕方ない、とにかく楽にしてくれ」


 「初めましてニャ。僕は料理人のケットシーだニャ。腰痛が悪化した師匠に代わって、今回は僕が討伐隊に参加するニャ。よろしくお願いしますニャ~」


 「こちらこそよろしく、君の活躍に期待する。美味しい食事は、隊の士気向上に必要不可欠だ」


 「任せて欲しいニャ! 秘伝のレシピを、師匠から叩き込まれたニャ。とっても美味しいニャ~」


 笑顔でニャゴ丸と話をしていたフレアが、何気なく誠志郎たちを見ると驚いて二度見する。


 その後、じっくりとモン娘たちを見つめてから、動揺を隠し平然を装って口を開く。


 「そちらの女性たちは、護衛の者かな?」


 「はいニャ! 本当は、別の者に護衛を頼んでいたけど、事情があって変更したニャ~」


 「ふむぅ、そうですか。まあ、戦闘能力に問題は無さそうですから、討伐隊に受け入れましょう。ところで、戦闘能力の無い一般男性が、どうして絶望の森に来たのですか? 危険ですから、早く帰りなさい」


 フレアに大切な誠志郎をバカにされ、不機嫌になったワンコが強い口調で抗議する。


 「隊長殿、誠志郎様は私たちの指揮者。権謀術数に長け、戦略知識も豊富。冷静沈着な指揮で私たちを勝利に導く、偉大な人物! 正に、英雄と呼ぶに相応しいのです」


 (止めてぇー! 無駄にハードルを上げないでぇぇ~~。俺は普通の民間人だよ? 無理無理無理、過度の期待は止めて!)


 「そうでしたか…………。コホン、君の活躍に期待する」


 (納得された! もしもーし、俺は本当に平凡な人間ですよ! 期待しないで欲しい、プレッシャーに負けるから)


 「あぁ、そうだ。大切な事を伝え忘れていた。討伐隊の3ルールを教えるから、忘れないように」


 「はいニャ!」


 「まず、ルール1、身分や種族などの違いで差別をしてはダメ」


 「はいニャ!」


 「次に、ルール2、過去の経歴など個人的な事を詮索してはダメ」


 「はいニャ!」


 「最後に、ルール3、仲間同士で本気の戦闘は禁止。非戦闘員に対する攻撃は、絶対に許されない。ただし、女性が性的に襲われた場合、相手を殺害しても良い」


 「はいニャ! 他に気を付ける事は、あるかニャ?」


 「ふむぅ、ケットシーの君に関係ない事だが、女性たちは服装に注意してくれ」


 モン娘たちの痴女みたいな服装を見て、フレアが小さなため息をつくと頭を抱える。


 「この討伐隊には女性が少ない。だから、男性を刺激する様な服装は控えてくれ。そうだなぁ、具体的に言うと肌の露出を抑え、男性用の服を着て欲しい。後、女性らしさを可能な限り隠しなさい」


 フレアに服装を注意されると、ニッコリと微笑んだレイが答えた。


 「えぇ、分かりました。服装には気を付けます。…………襲われた場合、相手を殺害しても良いのですね?」


 「あぁ、もちろんだ。ただ、出来るだけ殺すのは止めて欲しい。玉を潰すくらいで、許してやってくれないか?」

 

 「ふふっ、善処します」


 「うむ、そうしてくれ。では、他の者に君たちの居住テントと調理場に案内させよう。コホン、誰かいるかぁーーっ!」


 フレアがテントの外に向かって声をかけると、直ぐに人間の男性が入ってくる。


 「隊長、御用でしょうか?」


 「あぁ、この者たちを78番テントと調理場に案内してくれ」


 「はっ! 了解です」


 「新入りの料理人、ケットシーだニャ。よろしく頼むニャ~」


 誠志郎たちが、案内役の者と共にテントから出ていくと、1人残ったフレアが大きなため息をついて、深く考え込む。


 (ふぅ、私のスキル鑑定眼は間違いないはず。だが、信じられない。精霊女王? 覇王竜? 殲滅(せんめつ)女神? 自称ではなく、本当に実在するのだろうか。それに、獣人風の2人は、九尾狐に漆黒狼…………初めて聞いたな。さらには、魔改造スライム? もう何が何だか…………これ以上、考えるのは止めよう。答えが出そうにない)


 頭を抱えて悩んでいたが、疲れたフレアは考えるのを止め水筒の水を飲む。


 「はぁ、不味い。…………今日の夕食、楽しみだなぁ~」


 静かなテントの中に、フレアの独り言が響く。

 

 次回予告、きねとワンコ


 「突然ですが、私は漆黒狼です。つまり、嗅覚が非常に良いです」


 「うむ、九尾狐の我も嗅覚が良いのじゃ」


 「ハッキリ言います。このキャンプ地、臭いです! 鼻が壊れそうなレベルで臭いですね」


 「よく言った! その通りなのじゃ」


 「さてと、苦情を言ってスッキリしたので、次回予告です。次回は、夕食を食べます」


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