異世界生活の始まり
前回のあらすじ
質問に対して、YESを連打したら大変な事になった。
「起きてください、ご主人様」
何時の間にか眠っていた誠志郎は、女性の声で目を覚ます。すると、太陽の光が眩しくて目がくらんだ。
目の調子が戻り、キョロキョロと周りを見たら、優しく微笑むモン娘に膝枕をされていることに気付く。
「えっと、ワンコ?」
「はい、そうですよ。ご主人様の忠犬、ワンコでございます」
(なにこの状況、ゲームキャラに膝枕されていた? それに、どうして森の中にいるの?)
突然の出来事に混乱していると、複数のモン娘たちが誠志郎に話しかけてくる。
「ご主人様、突然の事で驚かれたでしょう。どうやら私たちは、異世界に転移したようです」
「我の考えでは、元の世界に帰る事は難しいかもしれんのう。ふむぅ、この世界の住人が敵とならねば良いのじゃが」
「ご主人様、強い子良い子のドラコが守るから大丈夫!」
「ふふっ、ドラコさんが守る必要はありませんわ。殲滅女神の私が、この、わ、た、く、し、が! 全ての敵を滅ぼしてやりましょう。見敵必殺ですわ!」
「あの、大声を出すのは止めて、耳が痛いです。まったくもう、静かに話せないのですか? 駄女神さん」
「あら、犬くさいと思ったら、いらっしゃったのですか? それにしても駄犬さんは、今日も犬くさい、田舎くさい、辛気くさいですわねぇ。おほほほ~」
「はぁぁ~~、愚者との会話は疲れます。やはり言葉ではなく、武力で解決する方が楽ですね」
「ちょっと待って、2人ともケンカはダメ! ほら、ご主人様が呆れていますよ」
にぎやかなモン娘たちを気にせず、あまりの出来事に誠志郎は放心して立ちつくす。
(どうしよう、部屋の中でゲームをしていたら急に森の中。しかも、モン娘が動き回っている。これは夢かな? …………違うと思う、これは現実だ。深く考えずにYESを連打。その結果、異世界に飛ばされ元に戻れない。うん、悪いのは俺だな。自己責任かぁ~、今後の生活はどうなるんだろう。あっ、来月発売のゲームが出来ないのか、…………はぁぁ~~)
「ご主人様、大丈夫ですか? 気分が悪いのでしたら、少し横になって休んでくださいね」
「…………えっ、なに? あー、うん、平気だから気にしないで」
「ねえねえ、具合が悪いの? おいしい物を食べると治るよー」
「回復なら私にお任せですわ! どんな怪我や病気でも簡単に治して見せますわよ」
「いつも考え無しで、敵に突撃して行く殲滅女神なのに回復が得意とか、面白い冗談ですね」
「私の辞書に、不得意分野と言う文字はありませんわ。天才ですから、何事も超一流の仕事が出来ますのよ。おほほほ~」
「はぁぁ~~、脳筋の貴方が天才? 調子に乗っていると、引っ叩きますよ」
犬猿の仲である2人が、仲良くケンカする? そんな感じの彼女たちを見ていると、誠志郎に平常心が戻っていく。
(いいなぁ、モン娘たちを見ていると癒される。よく考えたら元の世界に未練はあんまりない、戻る必要は無いかな。それよりも憧れの異世界で、モン娘たちと生活する方が良い。大丈夫なんとかなる、考えるな感じるんだ。さあ、異世界生活を始めよう)
異世界で生きていく覚悟を決め、改めてモン娘たちをじっくりと見つめる。
精霊女王、レイ。
性格属性、『真面目』、『リーダーシップ』
モン娘としての特徴は特に無いが、神秘的な美しさと虹色の長髪が目立つ。
(ゲーム画面で見るより、実物の方が綺麗だなあ。しかも、肌の露出が多い薄手の服を着ている。正直言って、いろいろヤバイ。もしも~し、風邪ひきますよー)
覇王竜、ドラコ。
性格属性、『あほの子』、『熱血』
ゲームの設定で見た目は大人、頭脳は子供。そのため行動と口調が幼い。しかし、2メートル近い長身でスタイルはとても良い。
深紅の髪が似合う美女だが、モン娘の特徴として太く長い尻尾と頭に角が2つある。
(確か設定では、バ火力キャラ。力のコントロールが苦手で、無自覚に物を破壊していく。そんな感じ、だったはず…………。うん、危ないから近づくのは止めよう)
殲滅女神、ベル。
性格属性、『脳筋』、『陽気』
背中にある白い羽が特徴的だけど、それよりも身に着けている武装が悪目立ちしている。なぜなら、それは金色の鎧と盾、無駄に装飾の多い片手剣だから。
(金髪に金色の武装、ゲームキャラとしては有りだが、実際に存在すると微妙。目に優しくない、凄くキラキラして眩しい。ザ、ゴールド!)
九尾狐、きね。
性格属性、『知性的』、『策士』
和服っぽい服を着た黒髪の美人さん。見た目の特徴として、キツネ耳とふっさふっさの尻尾が九つある。
(着崩した服の胸元が、こぼれ落ちそうなほど大きく盛り上がっているなあ。エロいお姉さんの雰囲気があって、いかがわしさ大爆発!)
漆黒狼、ワンコ。
性格属性、『皮肉屋』、『忠犬』
黒い犬耳とふっさふっさの尻尾が特徴的な女性。ゲーム画面では地味キャラだったけど、実際の感じは公式設定通りに、妖艶な大人の色香が凄い。
(なんとまあ巨大な山が、たゆんたゆん…………良い。コホン、えっと、黒い長髪と黒衣を着ているから、全身が真っ黒だな)
魔改造スライム、スイとライ。
性格属性、『無口』、『マイペース』
強力な生物を作るため、人工的に生み出されたスライム。防御能力に極振りしたスイ、防御能力と特殊攻撃能力に特化したライ。
基本的に銀色のスイ、緑色のライだが、擬態能力によって現在の姿は美少女。
(無口、無表情キャラだから、何を考えているのか分かりづらい。どうやって、話しかけたら良いのやら)
今後の生活など不安な事もあるが、モン娘たちの姿を確認すると、現在の状況は悪くないと思えた。
彼女たちの見た目から、痴女集団に思えるが実力は本物、最強で最高のモン娘と言える能力を持っている。
伝説のモン娘は、防御能力に極振りしたスイ以外、総合的な能力値が非常に高い万能型のキャラ。その中でも、攻撃役、盾役、支援役、回復役がいるため、チームとして隙が無い。
(彼女たちが居てくれて良かったぁ~。とにかく強いから安心できる。見た目はアレだけど)
「ご主人様、考え事の途中に失礼します。あの、この場所に止まっているより、周囲の森を調査しませんか?」
「えっ、あっ、そうだね。レイの言う通りだと思う。でも、ちょっと待って欲しい」
(うん、やっぱり行動を開始する前に、謝罪をするのが先だな)
次回予告 担当者、レイとベル。
「次回は猫を助けますわ!」
「あの、それでは意味が分かりませんよ。もっと詳しく話してください」
「おほほほ、レイさんは心配性ですわね」
「コホン、次回は魔物に襲われているケットシーを助けます。そして…………」
「次回予告、終わりですわ」