5話
バンっと!音を立てる教室のドア。たいてい、こういう開け方をするのはヤンキーと決まっている。
「おい、みなみ!居るんだろ!」
怒鳴りつけるように言葉を発した青年は金髪でピアスをしている。ここ一応進学校なんだけどなんでこんな不良見たいのが居るんだ?
てか、こいつ後輩だよな。
「何しに来たんだよ、陵。」
「知り合い?」
「付き合ってくれって付きまとわれてんの。」
ああ、ストーカーって言うやつね。ストーカーにしてはやたら派手だな。
「俺のチームに入れ。まぁ、断るっていう道はねぇけどな。」
陵とかいう金髪ストーカーの後ろには数人いるのを確認した。こいつらも、恐らくチームなんだろう。
「私もう、チームに入ってるの。早く帰れ。」
おい、頼むから俺の名前を出さないでくれよ。関わりたくない。
「おい、昨日までとは状況が違うんだぜ。分かってんだろ。力づくでもお前を連れて行く。」
一歩教室に入った陵の前にうちのクラスの隆史が目の前に立って睨みを効かす。
成績優秀な上に生徒会長、今日もその眼鏡が似合ってますね。身長なんて180センチもある。俺より10センチも高い。
「ここは、3年の教室だ。面倒事はゴメンだ、出て行ってくれ。」
クラスの女子がヒューヒューと煽り建てる。
それでも構わず前に出ようとする陵の肩を手で静止しようとする隆史。
「おい、汚い手で触んな。スキル発動。」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴を上げてその場に倒れ込む隆史。一体何が起こったんだ?
それから微動だにしない隆史。
教室の騒がしい空気が一気に静かになった。
おい、隆史、死んだのか?嘘だろ。
「俺のスキルは、静電気。触れたら感電するんだよバーカー。まさかここまで威力があるとはおもわなかったがな。」
笑いが止まらない様子を見てると怒りが頂点を越していた。
「おい、こいつを死体変換しろ。」
足の裏で隆史を踏みながら後ろのやつに指示する陵。
俺の体は無意識に動いていた。
「その汚い足をどけろ。」
結局関わるハメになった。クラスメイトがこんなクソガキにやられて正気でいられるほど俺は大人じゃない。いやいや、ただモテたくて前に出たのかもしれない。臆病な俺がこんな事言うなんて自分でもビックリしている。
もうコイツはスキルは使用できない、大丈夫だ。
「なんだ、ヒーロー気取りか?次はお前が死ぬか?」
近くで見ればコイツ、苛つく顔してんじゃねーか。
俺は迷わず、魔法発動のボタンをタップする。詠唱時間5秒。カウントが始まり、0になるとスマホから刀の柄の部分が飛び出した。
なんだ、これ?引き抜けば良いのか。
鞘から刀を抜くように、スマホから日本刀を取り出す。
普通の日本刀って書いてあったけどかなり立派な刀じゃないか。
「おい、いつの間に魔法発動させたんだ?んじゃ、俺も魔法使うわ。魔法使わなくても勝てそうだけどな。エレキボール。」
陵の手に電気を纏ったボール状のモノが現れる。
「コイツに当るとお陀仏だぜ。苦しいぞー、電気ってやつは。雷属性で良かったわ。」
ペラペラ自分の情報を言ってくれてありがたい。コイツが馬鹿で良かったわ。
しかし、あの電気の塊をこの刀で受けても感電するよな。避けるしかないか。
何とかエレキボールを交わして、あいつに近づき、斬るイメージを浮かべていると陵の背後を取る人物が居るのに気づいた。
瞬きした間に、陵の体には後ろから何か黒い尖ったモノが、突き刺さっていた。
口から血を流し、何が起きた?という表情の陵。
背後にいたのは、死んだはずの隆史だったことには俺も驚いた。
「死ぬ前に教えてやろう。そこで倒れている、お前が殺したと思っているのは俺の変り身だ。そして、自分の影を操る魔法を発動させた。以外に使えるな。」