20話
ドラゴンは目の前に、女の子一人だろうと構わない。口から黒い炎を吐き出した。高々女一人にあの炎を吐き出すとは、地獄の鬼も愛想笑いしてるぞ。
「危ないっ!!」
俺は、思わず叫んでいた。
女は刀を下から斜め上方向に振り上げると衝撃波が飛び出した。衝撃波は地面を削るように進み黒い炎を切り裂いた。
躊躇うことなくドラゴンへとダッシュで近づき、右足を薙ぎ払う。
まるで、水を切るように、簡単にスパッと斬れる右足。
ガクンッとドラゴンの首が女の頭上付近まで落ちると、刀を真上に振り上げ、ドラゴンの首が飛ぶ。
あのドラゴンが弱いのか、あの女が強すぎるのか分からないが、多分後者だろう。
まさに剣士と呼ぶに相応しい。黒いロングの髪が勝利の旗を振るように風に揺れている。
ブーブーブー
何だこんな時にメールか。
【只今このエリアにドラゴンはいません。なおソロでドラゴン三体討伐に成功した霞さんには、特別報酬として50万ポイント差し上げます。 神の使いより】
「何であの娘だけ!!このエコびいきヤロー!!!」
「うるせぇな!お前の方が声デカイんだよ!お前また、文句を。そもそもお前が神様に文句言うからドラゴン来たかもしんねーんだぞ。」
「誰?イヤらしい視線を感じるわ。」
霞がサッとこちらに振り向く。
「いやーお見事。凄い剣さばきですね。」
俺は拍手しながら瓦礫から出た。
「貴方は……あの時の……。」
あれ?何か様子がおかしい。顔が紅くなって、モジモジしてらっしゃる。
「隠れて……その、見てたの?私を……。」
その言い方だと変な奴みたいになってるよ俺が。
「いやー、別に隠れてた訳じゃないんだけど。なんでそんな下向いてんの?」
「人の唇奪っといて……。」
いや、奪ってないまだ。そんな事言うと、本気にするやつが俺のチームにいるんだよね。
ほら、4人の冷たい目線が俺に集中する。
「いやいや、奪ってないって!!」
「とにかく、生きていて良かった……。」
「ん?誰が?」
「いやいや!何でもないわ。」
そう言うと、霞はトボトボ何処かへ歩いて行ってしまった。
「あの娘あんたに気があんじゃないの?」
「私もそう思う。」
「そんな訳ないって。ハハハッ。もしそうだとしたら、あの娘は見る目があるじゃないか。」
おい、俺を無視して何処へ行く!
「これから、どうする?アジトなくなっちゃったし。」
ああそうか、俺の家壊れたんだ……。
「多分俺達の家も無事ではないだろう。」
駅前を通り過ぎ、俺達はただひたすらに歩いた。
時刻は、夕暮れ時。当たりに人影はない。
いや、向こうに人影が見える。10人くらいいるだろう。
「警察の格好してるぞ、警察官じゃねえのか?」
警察の格好をした人達何人かに女の娘が囲まれている。
あんか、あの後ろ姿見たことあるなぁ。
ついさっき見たような気がする。
「警察官なら安心だろ。話掛けに行こうぜ。」
お前は、警察官じゃなくて女の方に興味があるんだろ。
いくら警察官と言えど、この世界では無力のような気がするが。
「銃刀法違反だ、おとなしくしてろ。」
近くに行くと、リーダーらしき警察官が銃を女に向けている。
「あれ?霞とかいう女じゃない。大ちゃん良かったね。」
何が良かったんだろうか?
銃を向けられていこの状況は絶対に良くない。
「貴方達だって銃を持っているわ。それに、私に銃を向けないでくれる?」
「俺達は警察官だぞ!銃くらい持ってて当たり前だ。」
笑いが起こる。一人は笑い転げている。
「そちらが、銃を向けるのなら、こちらも対応させてもらうわ。」
霞は刀を構える。
止めに入ろうと俺達は走って駆け寄る。
「スキル発動。デートラヘレ。」
警察官がそう言うと、霞の手から刀が一瞬にして警察官の手に渡る。
「えっ??嘘でしょ。」
「銃刀法違反って言っただろ。こんな物騒なもんは没収だ。おい!手錠を掛けろ!」