2話
【てめぇ誰だ?】
【神の使いです。】
秒で帰ってくるメール。
早いな。想いをよせる子だったらめっちゃ嬉しいやつじゃん。
【悪戯にも限度があるぞ。】
【悪戯かどうかはもうすぐわかります。疑いのメールを送り返してきたのは貴方が最初です。貴方にはステキなスキルを付けておきます。】
なんだよ、スキルって。課金ゲーなのか。
ていうかこんなフザケたメール送って何か得する事でもあるんだろうか。
家につく頃には19時を回っており当然、ゲームスタートのメールは来てたが完無視してやった。
何がスタートだ。ゴールしてるんだよお前の人生。
「ただいま。」
誰の声もしない。この空間だけ音が切り取られたように静かだ。灯りはついている。
「凪沙、いないのか?」
小学生の妹、凪沙はいつもなら、お兄ちゃんおかえりと音速で出迎えてくれるのに。妹の癒やしがないと俺は、既に死んでいる。
「母さん、父さんもいないのか?夜逃げか?離婚か?」
冗談を言ってみるが返答はない。
リビングに行って唖然とした。
倒れ込んでいる3人の姿に目を奪われ、一瞬何が起きているのか把握出来なかった。
「おい、凪沙!死んでんのか?!」
凪沙の体を揺すってみるも反応はない。
「おい、母さん!……息してない。」
強盗か?しかし、荒らされた痕跡がない。3人の体に外傷もない。
おいおいまじかよ。まさかこれがゲームとかいうんじゃねーだろなー。
スマホを開く。左上に錬という見慣れない文字があるのに気づく。錬をタップすると、貴方は錬金属性です、と表示される。
属性?
そして、インストールした覚えのないアプリがある。
死体変換アプリ。
どっかで見たな。最近見たな。
削除しようとするが出来ないらしい。
恐る恐るタップしてみると、死体にかざして下さい、と表示される。
そんなアプリがあってたまるかと思いながらも3人のどれで試そうか迷ってる俺がいた。
父さんに犠牲になってもらうか。
父さんにスマホをかざす。
すると、父さんの姿がだんだんと消えていく。
最終的には完全に消えてなくなった。
ポイント変換完了、現在のポイントは、100ポイントです。
おい、マジかよ!シャレになってねーぞ。俺だけおかしくなったか?
そんな時に、電話が掛かってきた。ビックリしてスマホを落としそうになる。
ディスプレイにみなみ、の文字。
まっ、かかってくるか。
「大ちゃん!大変!」
「なんだ、お前の両親も死んだか?」
「そーなの、家に着いたら死んでたの。もーびっくり。」
こいつ、なんでこんな平然とした声なんだ?
「取り敢えず、スマホに死体変換アプリみたいなのがあるはずだから、それ使えよ。家族の死体見るの嫌だろ。」
「あー、もうやった。」
「えっ?」
俺の幼馴染はやる気満々らしい。
「お前、怖いとか、悲しいとかいう感情は今ないの?家族がいきなり死んでんだぞ。」
「だって、ゲームクリアしたら元に戻るんでしょ?そもそもこれゲームでしょ。」
「ハハ…」
俺の幼馴染は結構頼り甲斐があるらしい。
「とにかく、今日はもう寝よう。明日学校来いよ。詳しいことは学校で。」
そう言って電話を切り、母さんと凪沙をポイントに変えた。
最後に凪沙をポイント変換する時に、お兄ちゃん冗談だよっ!と言って笑って欲しかったが、凪沙は目を閉じたまま動かない。
俺の家族が一瞬でポイントに変わる。恐怖から手が少し震えていた。