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101番目の百物語異聞  作者: サイトウケンジマンA
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異聞外話・迷いの森のロア①

※概要

ある日、都市伝説事件を解決した帰り道。

「101番目の百物語」と呼ばれる存在を従兄弟に持つ須藤理亜は電車の中で眠っていた。

不意に気がつくと。


そこは、怪しい車内へと変化していたのだった。

◆"MidNight-Station"


 不意に目が覚めた私は、列車の中にいました。

 普段、列車の中で寝ることなど絶対にしない私なのですが、今回ばかりは油断してしまっていたようです。


「むにゃむにゃ……リアー、もう食べられないわようー」


 私の左肩に頭を乗せてコテコテの寝言を呟いているのは、同じクラスの友人スナオ・ミレニアムさんでした。夢の中で何かを食べているらしく、口がもごもごと動いています。金髪のドリル髪が頬に当たり、少しだけくすぐったく感じました。


 それにしても今は何時くらいなのでしょうか。


 見回してみると、列車の中は他に誰も乗っていません。外の景色は暗くてよく分かりませんが、結構な田舎を走っているようにも思えます。

 スナオさんを起こさないようにスマートフォンを取り出して時間を確認すると……時計は二十三時を大きく過ぎていました。もうすぐ二十四時。いつの間にかかなりの時間眠ってしまったようです。


 かなりの時間……?


 そもそも、私がこの列車に乗ったのは何時くらいだったでしょうか。そして、その時に乗った列車はこんな内装だったでしょうか……?

 吊り広告もなく無機質な印象を受けるやや古い車内には、ガタンゴトンという規則的な音だけが響いています。

 確か、海沿いに出没するという奇妙なロアの調査に出向いて、その帰りに……。


「……その帰りに乗ったのは特急だったはずです」


 私はその事実に気が付いて、慌てて立ち上がりました。


「ふにゃっ」


 私という支えがなくなってスナオさんが可愛らしい声を上げて椅子に倒れこみます。


「んもう~、どうしたのよう、リア~……むにゃむにゃ」


 目元をこすりながら非難するスナオさんはまだちゃんと目が覚めていないようです。なので、ここは敢えて返事をしないでおきました。

 私は列車の中を改めて見回します。


 ガラッ。


 すると、後部車両のドアを開けて誰かが入ってきました。

 長い銀髪が薄暗い灯り中でもキラキラと輝いている少女……私のもう一人の相棒でもある、アリサさんです。


「よう、おはようさんリア」

「おはようございます、アリサさん。他の車両を確認してきたのですね」

「まあな。ちなみに完全に無人。運転手も車掌もいなかったぜ」

「……やはり、ですか……」


 おそらく私たちよりも先に起きて、色々調べていたのでしょう。アリサさんはやれやれと肩を竦めながら、私たちの向かいの席に座りました。


「この手のタイプのロアは私の予兆が通じないんだよなあー」

 なんてぼやいています。

「え、うそ。いつの間にかあたしたち、ロアの攻撃食らってんの?」


 スナオさんはようやくハッキリと目を覚ましたのかキョロキョロと見回していました。


「そうかもしれない、という感じですね」

「え、じゃあこの列車どこ走ってんの!?」


 そのまま外の風景をじーっと睨むように見つめています。


「なんか、山と草原ばっかなんだけど! 家とかもほとんどないわっ!」

「お、なんだスナオは夜目がきくのか?」

「うん? お嫁さん?」

「そうだな。スナオはお嫁さんにしたいくらい、暗い所を見るのが得意だもんな」

「そうでしょう、そうでしょう! あたしくらいの凄いロアになると、真っ暗闇でもちょっとは見えちゃったりするもんなのよ、えへん!」


 アリサさんがスナオさんの勘違いを上手く繋げて褒めていました。この気の利いた言い回しは私にはできないので、素直に感心します。


「どんなロアの可能性がありますか、アリサさん?」

「そうだなあー。このまんま列車に乗らされ続ける幽霊列車系とか、どっかに辿り着いたらそこが地獄っていうあの世行きの列車ってパターンか、後はどっかの駅に着いたらそこから出られないってのもあるな」

「対策は……大体解りますね」

「まあな。幽霊列車なら列車がロアだろうからぶっ壊せばいいし、地獄に辿り着くならどっかに車掌か運転手のロアがいるからぶっ殺せばいい。だが、一応パッと見た感じ列車はロアっぽくなかったし、運転手も車掌もいなかったぜ」

「どこかの駅から出られない、の場合は……駅そのものがロアでしょうか?」

「大半はそうなるな。しかし、駅から移動すると良くないってパターンの話もあるから、もしかしたら別のロア要因なのかもしれないな」

「なるほど……」


 アリサさんの、魔女としての知識は大変参考になります。


『予兆の魔女アリシエル』。


 人の死や病魔の『予兆』を象徴する知識やジンクスが具現化した魔女です。彼女が何も告げないということは私たちからはまだ死の予兆は見えないということでしょう。

 彼女はそれが見えた時、躊躇いもなく『お前さん、もうすぐ死ぬぜ』と教えてくれる、そういう都市伝説みたいなものですから。


「それで、リア。実際のところ『終わらない(エンドレス)千夜(シェラ)一夜(ザード)』として、上手いこと対抗神話は見つかりそうかい?」

「そう……ですね……」


 私の『物語の主人公』としての能力、『千の夜話(アルフライラ)』。

 対象のロアの物語は無事に解決した、という内容の対抗神話を唱えることで、対象のロアの都市伝説を強引に『終わらせる』というものです。従って、そのロアがどんな話なのか、何が恐いポイントなのかさえ解れば、ほとんど対応することができます。

 強いて弱点を挙げるとすれば対抗神話を唱える時の朗読時間が、それなりにかかることでしょうか。その間は、今は私たちの話の邪魔をしないように大人しくしてくれているスナオさんが守ってくださるので、全く問題はありません。

 ですから、今のうちにイメージと対策方法はある程度考えておくことにします


「それなりには、対抗神話も浮かんでいます。幽霊列車であれば『その列車はついに駅に辿り着いたのでした』というものですし、地獄行きの列車であれば『その行き先は元の場所だったのです』で締めれば大体は平気のはずです」


 最後の『そこから出られない』系のロアであっても『その先は元の世界でした』などの話にしておけば、無事に帰るだけならば可能でしょう。その場合はロアの退治とまではいきませんが、まずは敵のテリトリーから抜け出すというのも大事です。


「ってことは、結構ラクショーなの?」


 話をじっと聞いていたスナオさんが綺麗な碧眼をくりくりと輝かせて見上げてきます。


「ま、今のとこお前さんたちが死ぬ予兆はないな」

「油断はできませんが、よりによって私たちを巻き込んだ、ということを後悔させて差し上げたいのは確かですね」

「そうね! ギッタンギッタンにしましょ!」


 スナオさんがすっかりやる気を出しています。

 私の頼れる仲間、アリサさんとスナオさん。


 この二人がいる限り、私に負けはない。そう思えました。

※作者のひとりごと的な何か

理亜、スナオ、アリサの女子中学生トリオが都市伝説事件に関わるお話です。

作中でも最強である理亜ですが、いかんせん中学生の女の子。

その強さと弱さみたいなものを外伝でまずはしっかりと描きました。

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