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089 商人ギルド

とりあえず話を聞くために商人ギルドにやって来た。


受付はどこだ?


辺りを見回す俺。


「受付窓口はこちらですよー」


お姉さんが手を振っている。


俺は、ダリアとテレサを連れて歩き出す。


受付窓口の前には、長椅子がいくつも並べてある。

だが、誰も座っていない。


ここが狩人ギルドなら暇な狩人達がたむろしているはずだが、

商人ギルドはそういう感じではなさそうだ。


「いらっしゃいませ。

私は、ナンバーワン受付嬢のシェリー、十八歳です」


語尾に、きゃぴって付きそうな軽い挨拶が飛んできた。


シェリーは満面の笑みで俺達を見ている。


子供扱いですか。

まあ、三人とも子供なので仕方ないか。


はい、はいとダリアが元気良く手を挙げる。


「ダリア、六歳です!」


「……テレサ、七歳です」


ノリ良く自己紹介するダリアと、数秒ためらって自己紹介するテレサ。


え? この流れで自己紹介するの?


シェリーとダリアから期待のこもった眼差しを向けられている。


「すみません。

カイル・フットと申します。

本日は、個人でリンゴを販売する方法をご教授して頂きたくお伺いしました」


流れを無視して用向きを話す俺。


ダリアは不満げな顔。

シェリーは、一瞬目を丸くし、笑顔から営業用の微笑みに表情を変えた。


「失礼致しました。

担当者を呼んできますので、あちらの応接室でお待ち下さい」


そう言われて案内された応接室で、しばし待つ。

応接室の内装は、質素でも華美でもない落ち着いた雰囲気のものでまとめられている。


「なんか地味だね」


ダリアが腰掛けたイスから足をぶらぶらさせながら感想を漏らす。


「黙ってなさい」


テレサが叱る。


「……」


俺は何も言わず担当者が来るのを静かに待った。


扉が開き、初老の男性が姿を見せた。


「お待たせしてしまい申し訳ございません。

当ギルドの長を務めているドルフ・シモンズと申します。

以後、お見知りおきを」


にこやかな笑顔で握手を求めてくるドルフ。


いきなりギルド長が出てくるとは、どうやら俺達は歓迎されているらしい。


「カイル・フットです。

当然お邪魔してしまい申し訳ございません。

ギルド長直々にご対応頂けて光栄です」


俺はドルフと握手を交わす。


「それはこちらのセリフですよ。

フット家の天才児が我がギルドにお越しくださるとは望外の喜びです」


「商才はないと思うので、是非お知恵をお貸しして頂きたいと思っております」


ドルフのお世辞に苦笑いで応える俺。


俺とドルフはテーブルを挟んで話を続ける。


「個人的にリンゴの販売を行いたいのであれば、

まずギルドに加入して頂いて、商人登録を済ませる必要があります」


「やはり加入しなければいけませんか?」


ダメ元で聞いておこう。


「面倒な事ではありますが、市民生活を守るうえで、都市で売買される品の安全性を確保しなければなりませんので、ご理解ご協力の程をお願い申し上げます」


ドルフが丁寧に加入を勧める。


やっぱダメか。


「とりあえず冬まで販売できれば良いので、短期での加入は可能でしょうか?」


「ええ、可能です。

ただ、短期加入の場合は、保証金をギルドに預けて頂く事になります」


保証金か。

何かトラブったら返って来ないんだろうな。


「おいくらなのですか?」


覚悟を決めて質問する俺。


「三百万エンです」


何度も口にした答えなのだろう。

ドルフは間を置かず答えた。


高い!


俺の心情が顔に出たのかドルフがこう言った。


「ご安心ください。

リンゴの品質に問題が無ければ、全額返ってきますので」


品質ねぇとテレサをチラ見する俺。


「一等級以上のリンゴしか販売しませんから、大丈夫です!」


テレサが意気込んで答える。


「ほう、一等級以上ですか」


感心したのかドルフが目を細める。


一般人は二等級品で満足する。

テレサは意気込み過ぎた。


「いえいえ、販売するリンゴの等級はまだ決めていません。

それに、この場で決める必要もないのでしょう?」


このまま話を進めると、後でこちらが不利になりそうなので

俺はテレサの発言を訂正する。


「ええ、もちろんです。

決めるのは後日でも構いません。

しかし、決めなければいけない項目は、リンゴの等級だけでなく、

数量、価格、販売場所、現場責任者などもございますので、

なるべく早く決めた方が都合がよろしいかと存じます」


「現場責任者……?」


俺は学校があるから無理だ。

テレサとダリアを見る俺。


「はいはい、ダリアがやります」


ダリアが率先して手を挙げる。


「子供は責任者にはなれませんよ」


ドルフがやんわりとした口調で否定する。


ですよね。


「現場責任者は……考えておきます。

販売場所は、どこになるのですか?」


「そうですね。

人気店の一画を間借りする方もいれば、

裏路地に店を構える方もいます。

けど、一番多いのは、露店ですね」


露店

青空の下、真っ赤なリンゴはさぞ映えるだろう。

いいんじゃない?


「店代が掛からなくていいですね」


笑う俺。


「土地代は掛かりますけどね」


俺の甘さを一刀両断するドルフ。


「それに、人気の高い場所から埋まっていきますので、

こちらも早く決める事をお勧めします」


急かされる。

商売って大変だな。


その後、ドルフに露店を出す候補地をいくつか紹介してもらった。

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