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066 踊りましょう

深紅のドレスを身に纏い、揺らめく炎のような少女が一人。


「皆さま、ようこそ御出で下さいました。

モニカ・フローでございます。

今宵の舞踏会は、普段、貴族と平民という身分の違いによって滞っていた交流を促進するために設けられた場です。

ですので、普段接することのない学友とも積極的に交流を図り親睦を深めて頂ければと思います。


戸惑う方もいらっしゃるでしょう。

ですが、こうして私達がこの場に集えたのは、ガジャ魔法学校に入学したからこその縁。

この縁を大切なものだと認識し、より絆を深め強固なものへと育んでいくことが、皆さまの学生生活を豊かなものへと変えていくと私は信じております。

主催者の一人として、今宵の舞踏会がその一助となれれば幸いです」


モニカの挨拶が終わる。

会場は割れんばかりの拍手が鳴り響く。


俺も強めの拍手を続ける。


「ご立派なことで」


拍手に紛れて冷めた声が聞こえた。


「え?」


俺は思わず隣の少女ローザを見上げた。


「え?」


ローザが驚いて見下ろす。

自分の独り言が俺に聞き咎められると思っていなかったようだ。


「え、ちが、いや、違わなくて。

モニカ様、立派な人だなと思って、つい声に出ちゃって」


誤魔化すように笑うローザ。


「ああ、そうですよね。

モニカさん、立派ですよね」


俺はローザの発言を額面通りに受け取ることにした。

モニカも仲良くしようぜと言ったばかりだ。

わざわざ追及しても益はない。


そもそも、この舞踏会に対して面白くないと思っている平民もいるだろう。

何せ、自分達が参加したいと言っていない貴族社会に参加するために貴族様がわざわざ練習に付き合ってくださるのだ。


勝手に決めんじゃねぇと反感を持っても不思議ではない。

ローザもその1人なのだろう。


キャーと黄色い声が上がる。

ダンスフロアでメイソンとモニカが手を取り合って向き合っている。


軽快な音楽に乗って二人が踊り始めた。

開幕の一曲、俺達への見本の踊りという意味もある。

それに選ばれた二人だ。


「絵になりますね」


俺はローザに話し掛ける。


「そうですね。

お二人ともお美しいです」


踊る二人を見つめるローザ。


「メイソンさんは、やっぱり女性人気が高いようですね。

かなりの数、踊る約束をしているみたいですよ。

ローザさんもメイソンさんと踊られるのですか?」


「私は踊る予定はありませんよ。

お誘いしてくれた方とだけ踊ろうと思っているので」


素っ気ない態度のローザ。

メイソンに興味が無いのか、プライドが高いのか、その素っ気ない態度の理由は分からない。

とにかくローザは舞踏会を楽しむつもりは無いようだ。


周りの少女達はキャーキャーと声を上げ楽しそうだ。

その対比を見てしまうと、もったいないと思ってしまう。


だからと言って俺に出来ることはない。

出来ることと言えば踊りに誘うことぐらいだ。


ちょうどメイソンとモニカの踊りが終わった。

二人は万雷の拍手を受けながらダンスフロアから身を引いた。


さあ、ここから本番だ。

あちこちで、少年が少女をダンスに誘っている。


俺はネイトとミックに開始の合図を送る。

頷く二人を見届け、俺は自分の相手に向き直る。


「ローザさん、僕と踊ってくれませんか?」


俺はそっと手を差し出す。

ドキドキする。

断られるのでないかと不安がよぎる。


「ええ、喜んで」


ローザは薄く微笑むと手を重ねた。


俺とローザは、他の少年少女達と同じように光り輝くダンスフロアに足を踏み入れた。

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