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異世界ソウルチェンジ -家出少年の英雄譚-  作者: 宮永アズマ
第3章 ピカピカの1年生
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043 学友との出会い

「これにて閉式とする。

ガジャ魔法学校一同、諸君らが実りある学校生活を送れることを祈っておる。

そのために親睦の場を設けた。隣に座るのはこれから学友となる者だ。これを機に仲を深めるとよい」


マイケル・ワイマン校長の締めの挨拶で入学式は終了した。


式の途中で、この国のお歴々が登壇していた。

顔は覚えたので、今度見かけたら物陰に隠れてやり過ごそう。


さて、後は親睦会に参加して本日のイベントは終了だな。


俺はやおら立ち上がった。


「自己紹介させてもらってもいいかな?」


そう言って俺の目の前に隣のイケメンが立ち塞がった。


「ど、どうぞ」


「僕はメイソン・ミルズ。よろしくね」


「こちらこそよろしくお願い致します。カイル・フットです」


「やはり君がフット伯爵のお孫さんなんだね」


やはりとは何ぞ? と一瞬思ったがこの少年は俺がデイムと一緒にいるところを目撃していたのだろうと

納得した。


「横から失礼します。私もご挨拶差し上げてもよろしいですか?」


少女の声が降ってくる。

俺は顔を上げてその少女が誰か把握した。


新入生挨拶で登壇した少女だ。


「私はモニカ・フローと申します。こちらは同郷のユーニス・ヘインズビーとワンダ・ホア。ともに仲良くして頂ければ嬉しいです」


勝気とも強気とも言えない不思議な圧力を感じる。

これが大貴族フロー家のご令嬢の力なのか。


ロイの貴族講座で出てきたフロー家。

広大な領地を有し現当主はデイムと同じ宮廷魔法士。

敵に回してはいけない一族だ。


「こちらこそよろしくお願い致します」


挨拶を返す。


座る場所が悪かったな。

式中何度も思った事を改めて思う。

まさかモニカ達三人娘の隣に座っていたとはマジで想定外だった。


お偉いさんとは出来るだけ接触を避けたい。

だが、俺の思惑とは反対にモニカは俺を逃がす気がないようだ。


「15歳を待たずして魔法学校に入学してくるなんて珍しいですよね」


「ええまあ、家の事情というか何というか」


「家の事情というと、後継者としての実績作りでしょうか?」


後継者? 実績作り!?


予期せぬ言葉に面食らう。

そんな気は全く無い。

だが他人からはそう捉えられてしまうという事に驚いた。


「モニカ。他所の家のことを聞き出そうとするなんて品のある行為とは言えないな」


「あらメイソン。貴方もカイル君に興味があるから声を掛けたのでしょ」


メイソンが俺を庇ってくれたが、モニカは意に介していない。

お互いの名前を敬称なしで呼び合っているので、既に交友があるのだろう。


「僕が興味があるのはカイル君の実力だよ。その若さでここに来るんだ。相当な腕のはず」


そう言ってメイソンは俺に視線を向ける。


「確かに、実力についても興味はあります。

王族貴族の子弟が集まるこの学校で、私達のように成人した者は珍しくありませんが、

成人する前からここに来るのは貴方ぐらいです。余程の自信があるのでしょう」


そう言ってモニカも俺に視線を向ける。


美男美女から視線を集めて落ち着かない俺。


「お二人が興味を持たれるほど強くはないですよ」


謙遜、というか肉体強化を使えない俺はかなり弱い方だと自認しているので、この俺の発言はほぼ真実だ。


「ご謙遜ですか。私は今すぐにでも実力を披露してもらいたいところですが、お願いするのはさすがに非常識ですからね。今日は我慢することにします。それに学校生活が始まれば自ずと分かることですし」


モニカは微笑を浮かべる。


そんなに俺の事気にしなくていいじゃん。


モニカの言う通り、そのうち魔法の授業かなにかで実力、つまり肉体強化出来ないことがばれるだろう。

別に隠すつもりは無いのでばれても問題ないのだが、勝手に期待されて勝手に失望される未来が見える。

辛い。


だからあまり期待しないでほしい。


「その日が来るのが楽しみだな」


メイソンが朗らかに笑う。


だから期待するなと。

逆にお前達の実力はどの程度なんだよ。


最強へ至る道、その登竜門であるガジャ魔法学校に入学してきたのだ。

それ相応の実力があるはずだ。


俺は二人の様子を観察する。


二人共、背筋を伸ばし直立する姿勢は品がある。

品はあるが強そうな雰囲気は感じない。


戦っているところを見るまで分からんな。


そもそも俺は、この異世界での強さというものがいまいち把握できていない。

どれ位が普通で、どこからが強いなのか、それを測る物差しが俺の中に備わっていないせいだ。


経験不足としか言いようがない。

異世界に来てから他人の強さを見る機会が少なかったから比較対象が少ないのだ。


だが別に気にしてはいない。経験不足なら経験を積めばよいだけの話だ。


ここには普通以上の強さを持つ生徒達が大勢いる。化物クラスの強さを持つ生徒もいるかもしれない。

学校に通うだけで彼らの戦う姿を観察することができる。


強さの常識を学ぶことができるのが、学校に通う数少ないメリットの一つだ。


同級生ってなんて有難い存在なんだ。


俺が感謝の念をもって周りの新入生達を見回す。



新入生達が遠巻きに俺達の事を窺っている。

今は親睦会の会場に移動するべき時間のはずだが、何故が皆足を止めている。


挨拶待ちか?


この国では、挨拶は、上位の者が下位の者に声を掛けるようになっている。

そのため下位の者は声を掛けてもらえるように上位の者の周囲で待機するのだ。


俺が疑問に思っているとメイソンが声を発した。


「モニカとカイル君が一緒にいれば皆嫌でも注目してしまうよ。なんたって今年の新入生注目株の一番と二番なんだから」


なるほど。皆、俺達が何の会話をしているのか関心があるのか。


確かに、実家が強く、新入生代表も務めた恐らく優秀な魔法使いであるモニカ・フロー。

そして、何で子供がここにいるの?代表を務める謎のお子様であるカイル・フット。


気になる組み合わせなのは確かだ。

ついでにメイソンの発言で気になる点がひとつ。


どちらが一番で、どちらが二番なのかしら?


「どちらが一番で、どちらが二番なのかしら?」


モニカと思考がかぶった。


「それは僕には判断できないかな」


メイソンが笑って追及をかわそうとしている。

俺達をおだてて気持ち良くさせようとしたのだろうが、不用意な発言だったと思うぞ。


現にモニカが楽しそうに目を輝かせている。


「貴方個人はどう思っているの?」


「そういうのは僕だけじゃなく皆の意見も聞かないと分からないものだと思うよ。

ちょうど、これから親睦会があるから、話題の一つとして挙げてみれば盛り上がるんじゃないかな」


メイソンは逃げ場を親睦会に求める。


苦しくないか。そんな話題、提供されても皆困るだけだと思うぞ。


俺がメイソンを見上げていると「さあ行こうか」とメイソンが俺の肩を抱き歩き始める。


「話は親睦会でもできるんだ。ここに留まると皆が移動しにくくなるから場所を移動しよう」


メイソンはモニカに提案しつつも歩くことは止めない。

呆れ顔のモニカも周囲を一瞥し、やむなしと歩き始める。


やっと親睦会の会場に移動できるようだ。


「……」


でもなんか、俺捕まってなくない?

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