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異世界ソウルチェンジ -家出少年の英雄譚-  作者: 宮永アズマ
第1章 異世界オンユアマーク
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カイルと魔法

俺がこの街を守る。

と啖呵を切ったのはいいが

守る術である魔法は一度も使った事がない。


カイルは俺に魔法の才能があると言っていたが

実際に魔法を行使してみないと本当かどうか分からない。


現在、俺は召喚魔法が行われた屋敷の裏庭に一人立っている。

デイム達は遠巻きに俺を見守っている。


魔法が使えるか確かめたい俺と

自分達が召喚した存在がどれ程強いのか確かめたいデイム達の

思惑が一致した結果、魔法の試し打ちの場として裏庭に案内されていた。


しかし、居心地悪いな。あの人達、俺が魔法を使ったことがないって知らないから

ここで魔法を使えなかったら失望されてしまう。


失望されるだけなら俺のプライドが傷つくだけですむが

彼女たちが激怒した場合、俺を殺してしまう可能性もある。


俺が役立たずだとカイルの献身が無駄になってしまうのだから、

その失意と怒りの矛先をカイルの代わりとして出張ってきた俺に向けるのは仕方がないことなのかもしれない。

理不尽だと思うけど、それだけカイルとデイム達は親愛の情で結ばれている。

祖母のデイムは言わずもがな執事のロイもカイルが生まれてきた今日まで世話をしてきた。

年上である獣人少女達も実の弟のように可愛がっていた。

カイルも祖母達が大好きだったし大切だった。だから守りたいと思っていた。


カイルの記憶を見てしまった俺には分かる。

「はあ」

知らずにため息が零れた。

どうにか出来なかったのかな。詮無いことを考えてしまう。

どうにか出来なかったから、俺がここにいるのだ。

カイルの願いを叶えよう。


俺は気を取り直し魔法の練習を始める。

カイルはデイムに魔法を教わっていた。

俺もデイムに教われば一番いいのだが、そんなことをすれば俺が魔法初心者だとばれてしまう。

心証が悪くなるのを避けるため教えを請うことが出来なかった。


まあ、問題はない。

魔法の知識はすでにこの頭の中にある。


「悪いな、カイル」


一言わびを入れカイルの記憶を探る。

カイルはコンプレックスを抱えていた。

魔法の才能がない。

このコンプレックスのせいでカイルは物心ついた頃から苦しんできた。


別に魔法の才能がなくても死ぬわけではない。

生きていける。

生きていけるが万人が出来ることを出来ないとやはり下に見られる。


カイルは領主の孫で後継者だった。

上の立場のカイルが他者から侮られるのはゆくゆくの領地統治に支障がでる可能性があった。

幼心に将来の危惧を悟ったカイルは魔法の習得に励んだ。


頑張ればどうにかなる。

その一念を胸に秘めたカイルはひたすらに魔法の研鑽に没頭した。

そのおかげで様々な魔法を習得したが、その度にカイルの心は絶望の色を濃くしていった。


カイルの魔法は全てが中途半端だった。

攻撃魔法は威力が低い。

回復魔法も擦り傷など軽いものだけしか治せない。

カイルは魔法使いとして実戦、実用レベルに達していなかった。


それらの原因は魔素保有量が少なすぎることだった。


この世界は魔素に満ちている。

魔素は森羅万象の根幹を構成し、魔法使いは魔素に干渉し事象を創造する。

魔素の保有量が多ければそれだけ大きな魔法を行使でき、逆に少なければ小さな魔法しか行使できない。


カイルは極端に魔素保有量が少なかった。

だから大した魔法が使えなかった。


本人が悪いわけではない。カイルは努力した。悔し涙を流しながら頑張っていた。

だが結果は人並み以下だった。

仕方がない。生まれが悪かったのだ。カイルは悪くない。

そんな言葉は何の慰めにもならない。


カイルは落ちこぼれだった。弱かった。目の前に魔獣の群れが迫っても何も出来ない位弱かった。

何も出来ないから、出来ることに飛びついた。

デイム達が反対しても頑として譲らなかった。召喚魔法の生け贄として死ぬことを。


俺は胸を締め付けられるような感覚を覚える。

12歳の子供が志願するような役回りではない。

カイルは死を覚悟していた。

だが結果は死ななかった。俺がカイルの魂を望まなかったからだ。


そのおかげでカイルは魔法のない世界を手に入れた。

魔法がなくとも頑張ればなんとかなる世界だ。

カイルなら俺より上手く生きていけるかもしれない。


俺はカイルの未来に幸福があることを願いつつカイルの記憶を探っていく。

魔法の記憶は苦痛の記憶だ。

カイルの失意と自己嫌悪の感情を探し出せればおのずと魔法の記憶にたどり着ける。

罪悪感を覚えるが、俺もここで死ぬわけにはいかないんだ。

俺はひたすらにカイルの記憶を漁っていった。


「よし、これでいけるはずだ」


魔法の使い方を理解できたと判断した俺は目の前の景色を確認する。

スペースは十分にある。芝生を短く刈り込まれていて延焼する可能性は低そうだ。


「ふう」


深呼吸をひとつ。

これで魔法が使えるか使えないか判明する。

俺の人生が変わる分岐点だ。




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