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136 魔人の襲来

夜の見回りを続ける俺達。


!?


閃光と轟音が連続で弾けた。


「闘技場の方です!」


ベンジャミンが叫び走り出す。


学生組も後を追う。

全力疾走

こういう時、肉体強化が出来ない俺は大抵置いて行かれる。


皆に付いて行くために風魔法で走力のなさをカバーする。


急げ急げ!


俺達は街路を疾走する。

歓楽地区を走破し、闘技場エリアの入場ゲート前の広場に躍り出る。


衛兵隊が続々と集まって来ている。


「学生の皆さんはここで待機していて下さい」


ベンジャミンが指示を出す。


「ベンジャミンさん、中に行くんですか!?」


俺は驚いて声を掛ける。


「衛兵なんで。

カイル様、襲撃犯が出てきたらその時は宜しくお願いします」


一礼したベンジャミンが走り出す。


「カイル、俺達はどうするんだ!?」


ネイトが上ずった声で尋ねる。


「指示通りここで待機しよう」


「大丈夫なのか?」


ネイトがベンジャミンの背中を目で追いながら尋ねる。


中は激戦だろう。

襲撃犯は奴隷を解放するまで戦いを止めないはずだ。


「ベンジャミンさんは強い。

あの人を信じよう」


ベンジャミンは魔法学校の卒業生だ。

実力は確かだ。


「でも今回も襲撃が成功したら、またどこかの街が被害にあうんだぞ。

ここで止めなくちゃダメだろ!?」


ミックが義侠心を燃やしている。

足が震えているが見ないふりをする俺。


「中は殺し合いの最中だぞ。

それでも行くのか?」


俺はネイトとミックに覚悟を問う。


「行こうぜ、二人共。

ここに居たって何も出来ない」


ネイトが覚悟を決める。


「よし! 行くしかないよな!」


ミックも覚悟を決める。


覚悟を決めてしまった友達を見る俺。


「……」


衛兵として待機命令が出ている。

命令を無視した事が後々咎められるかもしれない。

仕方ない。


「ここからフット伯爵家として動く。

二人共付いて来い!」


衛兵隊を抜ける決断をする俺。


「「おう!」」


元気良く返事をするネイトとミック。


俺達は入場ゲートを潜り獣人奴隷の居住地に向けて走る。


「獣人の居住地は森の奥にある。急ごう」


暗い森を走り続ける。


赤い明かりが木々の隙間から見え始める。

走る。

男達の怒号が聞こえる。戦っている。


「突っ込むぞ!」


俺は声を張り上げる。


獣人達が訓練に使用している広場

所々に篝火が設置されているが、全体的に暗い。

一瞥で状況を把握する事は困難だ。


その中を衛兵隊が何者かと戦っている。

頭をすっぽり覆った目出し帽とマントを羽織っている集団。

これでは正体が分からない。


捕縛がベストだと思うが、今は事後の事を考えている余裕はない。

高速で鳴り響く金属音

肉体強化魔法を用いた高速戦闘が目の前で繰り広げられている。

人数は把握できない。

乱戦だ。


「皆、苦戦している。カイル加勢しよう」


ネイトの提案。


衛兵隊の方が数が多い気がする。

もしくは意図的に数的有利な二対一の場面を作っているのかもしれない。

だが、それでも仕留め切れない。


「襲撃犯の動きが良すぎる」


ミックが俺と同じ感想を抱く。


動きだけで襲撃犯が獣人だと分かる。

獣人は身体能力が優れている。

ただの人より夜目が効く。


夜間戦闘はこちらの不利だ。


「光を創る。

二人共、俺を守ってくれ」


「「わかった」」


ネイトとミックが俺を中心に据える。


よし、いくぞ!


念じ、空を見上げる。


「照らせ!」


俺は魔法を発動する。


白色光が降り注ぐ。

闇を払拭し視界が良くなる。

広場に誰がいるかよくわかる。


視界の不利はなくなった。これで互角に戦えるはずだ。


「つまんねぇ事してるじゃん」


後ろから声がした。


え?


振り返る。


「「カイル!!」」


二人の叫ぶ声


首に衝撃、体が浮いて地面に叩き落とされた。


首がいてぇ。


俺は両手で首をおさえる。

そこで初めて兜が無くなっている事に気付く。


「この野郎!」


叫んだネイトが向かっていく。


「カイル、早く立て!」


ミックが俺を急かす。


俺はなんとか立ち上がる。


誰だ?

誰が俺に攻撃した?


俺は相手を見る。

槍使いだ。

やはり目出し帽とマントを羽織っている。


「赤い目」


魔法を解除しなかった自分を褒めたい。

明るいからこそ確認できた槍使いの目の色。


俺は知っている。

赤い目を持つ種族を。

天覧山脈を越えた先の大地を支配する種族


「魔人」


俺の呟きが聞こえたのか、槍使いの目が笑ったように見えた。

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