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128 空の覇者

上空でホバリングしている赤竜。


仕留めそこなった俺。

赤竜に制空権を獲られてしまった。


「ベアトリス様、すみません。

失敗しました」


俺は別の場所にいるベアトリスに謝る。


「問題ありません。

これで遠慮なく魔法を行使できます!」


威勢のいい声が返ってくる。


確かに、これで味方への誤射の心配は無くなった。


「総員、全力で赤竜を撃ち落としなさい!」


ベアトリスの号令が響く。


獣人達が各々魔法を放つ。


だが遠い。

魔法が届く前に赤竜がその場から離れてしまう。

そして旋回して俺達の後ろを獲る。


ドラゴンブレス


一網打尽で俺達を焼き尽くそうとする火炎が上空から降り注ぐ。


「くっ」


俺は急いで鉄塊によじ登る。


「風よ」


右手を空にかざし風を生み出す。


風が壁となり火炎が放射状に拡がっていく。


ドラゴンブレスは対処できる。

受けながら確信する俺。


だが、防戦一方では勝てない。

攻撃の一手が欲しい。


俺はエリンの言葉を思い出す。

夏休みの闘技場で出会った狩人の女性エリン。

竜殺しグレアムと共に緑竜を討伐している。


確か……

エリンが炎の鞭で緑竜を牽制し、グレアムが緑竜の首を断った。


今、牽制は俺がやっている。

ならあとは誰かが赤竜に接近し、その首を断てばいい。


……それ誰がやるんだ?


赤竜は空にいるので、飛んで近づくしかない。

だが、飛行魔法を使用中に赤竜に魔法封じの魔眼で捕捉されれば、何も出来ずに墜落してしまう。

おそらく死ぬだろう。


接近するだけでも命懸けだが、接近してからも大変だ。

獣人が鉈で攻撃しても赤竜には刃が通らなかった。

こちらのメンバーで物理攻撃で赤竜にダメージを与えられる者はいない。


何でもいい、何か攻撃しなければ。


制空権を手に入れた赤竜には余裕がある。

地上からの攻撃に集中すればいいだけなので、挙動にためらいが無い。


あの余裕を削りたい。

焦りを感じる俺。


「姫さん、これからどうするんだ!?

あいつが帰るまで持久戦か!?」


魔法の攻撃音が響く中、ユーグが声を張り上げてベアトリスに尋ねる。


!?

なるほど、勝つ必要はないのか。


赤竜の脅威を目の前にして勝たなきゃ生き残れないと思い込んでいた。

勝つ必要が無いのならやりようはある。


「……」


俺はベアトリスの指示を待つ。


「持久戦です!

やつが根負けするまで攻撃を続けなさい!

ただし無理はしないように!

やつの視界に入ったら直ちに身を隠すように!」


ベアトリスの大声が響く。


おう! という獣人達の歓声にも似た応答の声が響く。


この戦いの結末がイメージ出来たからだろう。

士気が上がっている。


俺も戦う目的が、勝つ事から応戦に変わった事で気持ちが楽になった。

ドラゴンブレスがおさまり俺も鉄塊の後ろに身を隠す。


「ふー」


俺はにやりと笑う。


威力はほぼ互角だった。

だが、手数勝負では負ける気がしない。

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