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異世界ソウルチェンジ -家出少年の英雄譚-  作者: 宮永アズマ
第1章 異世界オンユアマーク
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猫耳少女達

俺は広大になった自分の持ち場を眺める。

元々は10人、15人位で守っていた範囲を

今では俺一人で担当している。


いったいどれ位いるんだ?


俺は地上に転がる魔狼の死体を眺めながら疑問を浮かべた。

その疑問は魔狼の死体の数であり、森の中に隠れている魔狼の数でもあった。


俺が仕留めた魔狼だけで1000頭はいる。

この区画だけで1000頭なら街全体では


「……10万超えるのか」


自分の出した概算に唖然とする。

10万という数字は今までに襲ってきた魔狼の数だ。

その数には今から襲ってくる魔狼の数は含まれていない。


これから襲ってくる魔狼達は暗闇から弾けるように飛び出してくる。


「いつ終わるんだ」


俺は毒づきながら氷矢の狙いを定める。

魔狼は同胞の死体を避けながら向かってくるので

コースが読みやすい。


俺は奴らの走りやすい場所目掛けて氷矢を放つ。

魔狼は俺が定めたポイントに吸い込まれるように近づき

氷矢の餌食になった。


こうして新たな魔狼の死体でコースが潰れた。


もう俺のところから壁目指すの無理なんじゃないか?


俺は死屍累々の有様からそんな事を考えた。

それでも魔狼は突っ込んでくる。


俺はロイの様子を窺う。

魔狼が3頭歩廊を疾走している。

1頭は遅れているため、ロイは2頭を相手することになりそうだ。


大丈夫なのか。


俺は一抹の不安を覚えるがロイなら何とかするだろうと思い直した。


さて、歩廊はロイに任せて俺は外の魔狼を駆除するか。


俺はロイから視線を切って外に目を向ける。

接近する魔狼と火弾、そして


「!?」


視界の端に人影が写った。

二度見して正体が分かった。

イネスとサラがこちらに向かって走ってきていた。


何で二人がこっちに?

デイムが加勢に行って戦況が安定したから、こっちに二人を寄越したのか?


頭に浮かんだ疑問を解消したいが、今はタイミングが悪い。


俺は風弾を空中に創造しながら、火弾の数を数える。


「……4、5、6発か」


火弾の数に合わせて風弾を並べる。

撃ち漏らしも考えて、さらに6発追加する。


見えない脅威を展開した俺は火弾に向かって順次解き放つ。

重く低い音が暗闇を震わせる。

そして平たい花火が暗闇を消し去っていく。


「ロイさん、左のやつは私が」


イネスがそう言いながら俺の後ろを走り抜けて行った。


気になる。

俺はイネスが戦っている姿を見たことがない。

だから、どれほどの強さなのか確認しておきたい。


俺はちらりと壁に接近する魔狼の位置を確認し、直ぐにイネスへと視線を戻した。

イネスの後ろ姿、すらりと伸びた脚が床板を踏みしめてイネスを前進させている。

その手には剣が握られている。


ロイが右側に寄りイネスのスペースを作る。


これで1対1で戦える。


俺はホッとした。

だが、魔狼にとってはそうではない。

数的有利だったものが土壇場で壊されてしまったのだ。

明らかにイネスを見つめる瞳の剣呑さが増している。


イネスはその眼光に怯むことなく魔狼に突っ込んで行った。

ロイも合わせて踏み込んだ。


イネスが下から斬りあげる。

ロイが上から斬り落とす。


水っぽい音が二つした。

魔狼の首が宙を舞う。


「お見事です」

「ありがとうございます」


ロイがイネスの腕前を褒める。

イネスは微笑を返した。

数秒見つめ合うロイとイネス。

2人の間に実力を認め合った者同士だけの持つ信頼感みたいなものが生まれ始めている。


ドゴ、ドタ。

2つの生首が床に落ちた。

そして俺のそばまで転がってくる。


「ぉ!」


俺は飛び退いた。

魔狼は絶命しているみたいだが、

マジで心臓に悪いからやめてほしい。


「大丈夫ですか?」


サラが遠慮がちに声をかけてきた。


「……」


完全にカッコ悪い姿を見られた。


「ちょっとびっくりしただけ」


素直に告白する。


「そうですか」


サラは俺をじっと見つめ、それから歩き出した。


「? な、何してるんだ?」


「通行の邪魔なんで」


サラはそう言って魔狼の生首を持ったまま俺の方に振り向く。

生首をしっかり掴んでいる。


俺は見慣れない光景に戸惑ってしまう。

でも、サラは違う。

サラは平然としている。


怖くないんだな。


何となく意外な感じがした。

サラは俺と接する時おどおどしていたので気の弱い女の子なのだと思っていた。

普通そんな子は死体を気味悪がって近づくことさえ嫌がるはずだ。

だが、サラは違った。魔狼の死体に慣れている。


サラはそのまま魔狼の生首を防壁の外に放り投げた。


「……」


どれ位殺せば、これほど無造作に死を扱うことができるようになるのか?


疑問が俺の胸を締め付けた。


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