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107 決勝戦 モニカ対メイソン

「賭けに勝ったのは、メイソンの方だったか」


何とも言えない表情をするクリス。


「みたいですね」


同意する俺。


メイソンは自分の強みを活かすべく賭けに出た。


逃げる事でロジャーを釣り、急反転からの剣術勝負。

ロジャーの間合いに入った時点で逃亡不可になるおそれもあった。

だが、メイソンは賭けに勝った。


そこから逃げる事に成功し、ロジャーを釣り出した。

そして、すぐさま急反転しロジャーを跳び越え、魔法を叩き込んだ。

これも成功率の低い賭けだった。

でも、メイソンは賭けに勝った。


俺達のちゃちな賭けではなく、デカい賭けに勝ったのだ。


「「……」」


無言の俺とクリス。


「流石、メイソン様ですね」


称賛する少女の声。


「ワンダさん。

と、ユーニスさん」


現れたのは、ワンダ・ホアとユーニス・ヘインズビー。

二人はモニカ・フローの従者だ。


「カイル君、決勝戦、一緒に観戦しませんか?」


そう言って微笑むユーニス。


ユーニスは剣術の授業で練習相手をしてくれる貴重な存在だ。

その願いを無下には出来ない。


「喜んで、ユーニスさん」


即答する俺。


「僕達はメイソンを応援するけど、いいの?」


クリスが少女達に問う。


!?


クリス、何勝手に決めてるんだ!?


「構いませんよ。

私達はモニカ様を応援しますので」


ワンダが答える。


あ~これで二対二になってしまった。


俺は中立な立場で決勝戦を観戦したかった。

何なら、ユーニスの好感度を稼ぐためにモニカを応援してもよかったのに。


クリスのせいで好感度が下がるかもしれない。


俺はワンダとユーニスの表情を窺う。

ワンダとユーニスは、俺達がモニカを応援しないと分かったのに、気にしたそぶりをしていない。


この二人、何をしに来たのだろうか?


普通なら、モニカを応援したい人と一緒に観戦するはずだ。


勝敗予想でも聞きに来たのだろうか?


それ位しか理由が思いつかない。


もし聞かれたとしても、どちらが勝つかなんて分からない。


「カイル君、どちらが勝つと思いますか?」


ユーニスが穏やかな声で質問してくる。


!?

分からない、とは答えたくない。


「えーとそうですね」


頭を回転させる俺。


「これまでの試合を通しての感想ですが、

勝った人は自分の強みを活かして勝利しています。

決勝戦の二人なら、モニカさんは格闘と魔法、メイソンさんは剣術。

ですので、自分の強みを発揮できる瞬間を作り出す事が出来た方が勝つと思います」


「その瞬間を作り出す作戦はございますか?」


さらなる質問を投げかけてくるユーニス。


それは本人達に聞いてくれ。

とは言えないので、また考える俺。


「そうですね。

メイソンさんなら、剣での勝負を貫いた方が勝率高そうですし、

最初から剣術有利の試合です、作戦は不要でしょう。

その有利を覆す作戦が必要なのがモニカさんです。

格闘戦にもちこむのは難しいと思うので、

メイソンさんがやったように、逃げながら魔法を撃てるチャンスを作るしかないと思います」


そのチャンスをどう作る?

それが問題だ。


モニカもメイソンの頭上を跳び越える?

いや、同じ作戦が通用するとは思えない。

メイソンも警戒しているだろうし。


メイソンを出し抜くには、予想外の一手が必要だ。


何がある?


俺はユーニスの表情を窺いながら問い掛ける。


「本気の早撃ちを解禁したりしちゃったりします?」


「ふふふ」


微笑だけを返すユーニス。


あるのか?

こんな大勢の目の前で、秘匿すべき最速の魔法発動を披露するのか?


割に合わない気がする。

学年代表戦で優勝すれば、その名は一気に国中に広がる。

宮廷魔法士を志すモニカにとっては、箔付けのために獲っておきたいタイトルだろう。

でも、それでも割に合わない気がする。


「う~ん」


小さく唸る俺。


「ふふふ」


そんな俺を見て微笑するユーニス。


手玉に取られているような気がする。

でも、可愛いから良し。


決勝戦

学年首席 モニカ・フロー

学年次席 メイソン・ミルズ


「決勝戦、試合開始!」


審判役のイングが、開始の合図を告げる。


早撃ちは……なかった。


モニカは逃げを選択した。

メイソンが追う。

メイソン対ロジャーの試合と同じ展開。


互いに魔法を警戒しながら、剣を交える。


モニカが逃げ続ける。

あえて、決闘場の角へと逃げ続ける。


「場外狙い?」


モニカは、一回戦の第一試合で、ダンを場外に押し出している。


メイソン相手でも同じ事を狙っているのか?


自ら退路を無くしたモニカ。

メイソンが押し出せば、モニカが場外負けとなる位置取り。


足を止め剣を交え続ける二人。

牽制目的の攻撃では、メイソンでもモニカを崩す事は出来ない。


メイソンが踏み込まない気持ちが、理解できる俺。


踏み込めば万が一が起こるおそれがある。

優勝が手の届く所まで来て、慎重になっているのだ。


その弱気をモニカが突く。

剣速を上げ猛攻を仕掛ける。


モニカが一歩進み、メイソンが一歩下がる。

すぐさま一歩下がるモニカ。


一歩分だけ、距離と時間が出来る。


風が唸り声を上げた。


早撃ち!?


モニカが場外で尻餅をついている。


「勝負あり!

学年代表戦、優勝 メイソン・ミルズ!!」


イングが訓練場全体に届くように大声で告げる。


うおおお、と観客の生徒達から歓声と拍手が起こる。


早かった。

俺が知る限りでは、メイソンの早撃ちで一番早かった。


「マジか」


メイソンが、魔法使いの切り札をここで切ってくるとは思わなかった。

予想外の一手だった。

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