表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ソウルチェンジ -家出少年の英雄譚-  作者: 宮永アズマ
第1章 異世界オンユアマーク
1/140

よし、行くか異世界

前書き欄を確認したい。

「はぁ」


知らずにため息が漏れた。

真っ暗な室内、居るのは自分ひとり。

だから静かだ。だから、階下の声がよく聞こえてくる。

両親の言い争う声が。


いい加減にしてくれ。


寝返りを打って両親の声を誤魔化す。

ほんの数秒の気休めで体勢が落ち着くと、また声が聞こえてくる。


「拓真の親権は私がもらいます!」

「あの子は俺の子だ。親権はやらん!

 籍を抜きたいやつだけ、この家から出て行けば良いんだ!」


何度繰り返した会話だろうか?


俺はこの半年の離婚騒動を思い出そうとして、そして止めた。


何の意味があるんだ。


正確な回数が分かったところで何の意味も無い。

俺は自分を苦しめる物に脳のリソースを割きたくないのだ。


離婚するならさっさとしてくれ。


俺は内心毒づく。

両親もその気だろう。夜な夜な喧嘩する相手とは一日でも早くお別れしたいはずだ。


だが、できない。

できない理由があるのだ。


「拓真の受験が終わったらすぐにでも出て行きます!」


母の甲高い声が答えを告げる。

そう、受験だ。4ヶ月後に迫った大学受験が、我が家のライフイベントを阻止しているのだ。


いらいらする。

俺は被害者のはずなのに、この状況を作り出しているのは俺自身だ。

何の冗談だ。

俺は一体どうすればいいんだ?


決まっている。

どうすることも出来ない。

ただ待つしかない。

受験が終わるのを、そして高校を卒業することを。


「ふぅ」

気持ちを落ち着かせようと息を吐く。


あと4ヶ月だ。

あと4ヶ月。


自分に言い聞かせるために心の中で何度も呟く。


だが、だめだ。


何で俺が我慢しなきゃいけないんだ!


面倒くさい。面倒くさい。

何で俺はガキなんだ!

この状況を変えることも出来ない。

なにもできない。


俺は自分の無力さにきれそうになる。

切実に思う。

一人で生きていける力が欲しい。

そうすれば親に縛られず自由に生きていける。


大人になった自分を想像してみる。

働いて給料を貰って一人暮らししている姿を。


あと4年か。

大学に進学した場合、最低でもあと4年は親の庇護下にいることになる。


もういっそ高卒で就職しようかと思ったが、

普通科高校に進学した時点でその選択肢は存在しない。


何故なら俺は何も出来ないから。

工業、商業の同年代が専門知識を習得していた間、

俺たちは金にならない机上の勉強をしてきた。

ここから大学に進学して実力をつけて初めて社会で通用する人間になれる。


長い。長すぎる。

自立するのに22年も掛かるなんて長すぎる。


もっとシンプルに生きられないのか?

動物を狩って肉を食べる。夜は家で寝る。家の近くで米か麦を育てる。

それだけで良いじゃないか。


分業しすぎなんだよ、今の社会は。

細分化し専門性が高まって素人は全く手が出せない。

だから勉強する。

脇目も振らずひとつのゴールに向かって走り続ける。


一つの分野を極め最先端を走り続ける。これが勝ち組。

それ以外は負け組。


俺たちはピラミッドの上で暮らしている。

社会には沢山のピラミッドがあり、俺たちは好きな物を選べる。


そのまま順調に上に進めるなら問題ない。

だが、上手くいかない場合だってある。


その場合はそこで踏み止まるか、見切りをつけて新たなピラミッドに挑戦するか、

決断しなければならない。

踏み止まって人並みの生活が出来るなら重畳だがそれ以下の生活なら苦汁をなめる事になるだろう。


俺なら耐えられない。

ひとに馬鹿にされるなんて嫌すぎる。


だから、できるだけ上を目指す。

そのための努力もしてきた。


俺はこのまま頑張ってピラミッドのどの辺りに行けるんだろうか?

国公立を卒業できれば、そこそこ良い会社に入れるはずだが本当にそれでいいのか?

いい大学、いい会社、俺はあまり深く考えずにその庇護下に入ろうとしている。

それが普通だから、皆もそうしているから流れるように進んでいる。


なぜなら人間ひとりでは何もできないから。


ひとりでできないなら皆でやればいい。

そうやって組織は生まれる。

組織は目的を達成するために行動し、そこに所属する人間は組織の意向に従って行動する。


俺たちに自由意志はない。勝手気ままに行動して会社に損失を与えたらクビになる。

会社のために働く。その対価として金を貰えるのだから反発するのは筋違いだ。


情けない。徒党を組まなければ生きていけないなんて。

悔しい。無力な自分が。

他の生き方はできないのか?


ゲームやマンガみたいにモンスターを倒して金を手に入れる。

そんな世界に。

魔法もぶっ放せるなら最高だ。


俺は剣と魔法の世界に行きたい。


(なるほど、剣と魔法の世界がご所望なんですね)


!!!


思考に割り込んできた声に心臓が跳ね上がる。


誰だ!?


驚きと戸惑いの声で誰何する。


(それは僕と契約すれば自ずと分かりますよ)


落ち着いた声音で正体をはぐらかす。

俺は更なる追及をしようとするが相手の落ち着きっぷりを見て口を閉じる。

こいつには余裕がある。自分が優位な立場にいると分かっているだ。


謎の存在の突然の出現に混乱する俺と何かしらの目的を持って出現した本人、状況をよく理解しているのは間違いなく後者の方だ。


契約って何だよ?


(簡単な話です。僕と魂を交換して僕の世界に行って下さい)


魂を交換?

何を言っているんだ、こいつ?


(突然の事で驚かれるのは無理ないのですが、これはチャンスなんですよ。

あなたは剣と魔法の世界に行きたい。

僕はその願いを叶えることが出来る。であれば悩む必要はない。そうでしょ?)


俺が異世界に行ってお前に何の得がある?


(得ならあります。今僕がいる街は魔獣の襲撃を受けています。迎撃はしていますが魔獣の数が多すぎて街の戦力だけでは防壁を守り切れません。

魔獣達に防壁を突破されれば、街の住人は餌として狩り殺されるだけです。その中に僕も含まれます。

このまま何もせず死を待つより、強大な力を持つ者を援軍として喚ぼうと考えあなたのもとまでやって来たのです)


強大な力を持つ者? ……それが俺?


こいつの目的はわかった。だがお目当ての人物が自分だとは信じられない。


強大な力なんて持っていない。ただの高校生だ。

陸上部だったから人より少しだけ足が速いくらいだ。


(そんなことありません。あなたにはとびきりの才能があります。魔法の才能が)


マジか!?


(マジです)


マジか!?


(マジです)


じゃあ、炎出したり雷出したり魔法で空飛んだりできるのか?


(出来ます)


マジか!?


(マジです。どうです、行く気になりました?)


おお、すげー行きたくなった!


(では、行きましょう。あなたの肉体は僕が責任持ってお預かりすますので心配しないで下さい)


おお、マジか? 有難い。


俺は喜び勇んで少年の手を取って、力強く握手した。



後書き欄はここか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ