変わりゆく世界
「ハズキ、朝です。」
透き通った声に、目を覚ます。
車のウインド越しに、上りゆく太陽が目に入る。
大きなあくびを1つし、うーんと唸り声を上げながら体を起こす。
「何時?」とハズキが聞く。
「7時1分です。もう17秒で7時2分。」
いつも通り、分単位で時間を答えてくる。
「目的地には、9時ごろには付きそうだね。」
「はい。情報通りの道を通れればの前提条件が付きますが。」
昨日は、一日中運転をしていた。
自動運転に頼ろうとしたが、予想以上に道があれており、
結局、安全機能以外は手動での運転に切り替えた。
現在いる場所は、過去に京都と呼ばれた町だ。
人口も多く、観光者で賑やかな場所だったらしい。
いくつか、大きなビルやホテルの残骸のような建築物は目に入るが、
そのほとんどが、樹木に浸食されている。
今では、この場所をKIT地区という名称で読んでおり、
人はほとんど住んでいないし、観光者などくるような場所でもない。
そして、これから行こうとしている場所は、
KIT地区で、唯一、人が住んでいる施設となる。
「とりあえず、朝飯を食べたら出発しようか。」
重い体を起こすとともに、寝ぼけた声でハズキは言った。