Season
燦々と浅葱色は風を映してひらめく。
初夏の陽気が、長閑な工業地帯を照らしている。
あまりに大きなものを前にすると、僕の肉体は伝導性を失い、立ちすくんでしまう。それは例えば大自然であったり、発電所であったり、また芸術であったりする。
萌芽の季節を超え、生命が青き春を謳歌する時、空の恵みをたくわえた光は彼らを一層輝かせる。
その圧倒的な生命力の放射に頭が真っ白になった僕は、いつまでもこのままで居たいとさえ思うのだった。
木の葉が老いを迎え、衰えを隠しきれなくなる頃、僕の神経は彼らのように脆く壊れやすくなる。
おおらかさを失って網の目のようになった心にはなにごとも重く苦く、あらゆる彩りは無彩色を塗りつけられてしまう。
悲しさを昇華する方法はいくらでもあった。
ただ、昇華した後に何も残らないことが問題だった。
限りなく真空に近いその空間には何も許されず、雪すら降らない。
いつの間にか、降らなくなってしまっていたのだ。
何度目かの春は、玄冬のごときモノクロームの中にあった。
太陽がおそろしい。風が肌を刺す。
僕はブリキの人形のようにビリビリと耳障りな音を立てながら群衆の隙間を目指して逃げ惑うことしかできなくなっていた。
還りたい。
何にでもなれた頃に。