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D.E  作者: Oshow3
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入学式

そして始まった入学式では、政府の役員や国会議員、有名人や著名人なんかも多く参列している。


 校長祝辞という進行役の声で壇上に一人の少女が現れる。

真っ白いロリータファッションに身を包み、包帯だらけの熊のぬいぐるみを抱き抱えている。


小さすぎる身長のせいで、マイクの備え付けられたら机に全身が隠れている。

教頭らしき人が慌てて踏み台を持ってくる。

うんしょ、うんしょと登りようやく頭が見えてきた。身長だけではなく、見た目も少女…いや、幼女。そんな女の子がしゃべり始める。

『みなさん、ごにゅうがくおめでとうございます。校長のセルフィ・ミルキードールです。はじめてのことばかりでたいへんだとはおもいいますが、べんがくにたいまにがんばってくだふぁい、んぐ』

どうやら舌を噛んだらしい校長は、えーんと泣きながら舞台袖に走っていく。

それを見た会場の反応は満場一致でほっこりと笑顔を浮かべ癒されていた。真司にいたっては『やっべーよ!あんなに可愛い生き物がこの世にいるのか!?校長!萌え~!!』と、お祭り騒ぎだ。

『うるせーよ!ロリ萌えゴリラ!!』匠に注意されてようやくおとなしくなる真司。

 会場のざわつきも治まった頃、進行役の新入生答辞の言葉で会場が静まる。

 新入生の答辞は、その年入学する生徒の中で一番成績のよかった生徒が行うことになっている。

つまり現時点での新入生頂点。

答辞を誰がつとめるのかは、本人にのみ知らされる。

 会場全体を沈黙が支配する。世界から音が消え去ったかのような静けさに、匠ばかりか真司すら息苦しさを感じ始めていた。


 その時、カタリと椅子をならし女子生徒が立ち上がる。会場中の眼が一斉にその女子生徒を射抜く。ただ、新入生は緊張や勝手に辺りを見回してはいけないという常識から、正面だけを見ている生徒も少なからず存在する。

ただ、それでもこれだけの多くの視線を浴びれば、少しくらいは緊張するのは道理…なのだが、その女性徒は緊張の片鱗さえ見せずに優雅さと可憐さを身に纏い壇上へと進む。

 後ろの方の席だった彼女が、壇上付近へと進んできたときに初めて、最前列付近に座っていた匠達の視界へ入る。


その姿を見て匠と真司は驚きを隠せなかった。壇上へとあがる少女は、校門前でつい先ほど話していた高坂咲霧だった。

 

『この、桜が短い命を精一杯輝かせる暖かな春のよき日に…』と、答辞が始まる。

 その美しい立ち姿に木漏れ日のような暖かくも涼やかな声に、会場中が引き込まれ、誰一人としてこの答辞を邪魔する物音を発する者はいなかった。女子生徒の中には頬を朱に染め、うっとりと目を閉じ、胸の前で手を組んでいる者すらいる。同姓が見ても、それほどまでにすべてが完璧な存在だった。

そして、答辞が終わる。

『…精一杯青春を謳歌していきたい所存です。一年代表、高坂咲霧』と、咲霧が自分の名前を発したとたん、会場中がざわめき出す。

『高坂咲霧ってあの…!?』

『彼女にしたいランキング一位でアイドルの!?』

『似てると思ってたけど、髪の色と長さが違ったから気づかなかったぁ!!』

あちこちで学生達が騒ぎ出す。


 高坂咲霧。彼女は日本でもっとも人気のあるアイドルだ。

その人気は日本だけにとどまらず、海外にも熱狂的なファンが多く、海外でライブを開けば数十万人が世界中から集う、他に類を見ない超ド級のアイドル。

神が創りし最高傑作とうたわれる容姿に、声や仕草すらも大勢を魅了するに余りある美しさ。

 そんな彼女がなぜこの学校にいるんだというささやき声があちら此方から聞こえる。

そして隣からは

『なぜお前があんな超弩級アイドルと知り合いなんだよぉ!俺にも紹介しろよ!ってか、お前気づかなかったのかよ』

と、胸ぐらをつかみ匠を揺さぶるという校門前のやりとりを繰り返している。

『誰だよ高坂咲霧って。有名人なのか?ってか手を離せよ』

ゴホッゴホッとむせながら答える。

『嘘だろ!?あの超有名アイドルを知らない…だと!?』

匠は、鳩が豆鉄砲をくらうとこんな顔なんだろうなと、そんな全く関係ないことを真司の顔を見て考えていた。

『知らねぇよ!うちでは基本的にテレビ見ねぇし』

テレビやネットが普及した現代でそんな前時代的な生活を送っているのは日本中を探しても匠くらいだろう。

『あのなぁ、あの高坂咲霧って娘は…やめた。説明するのも馬鹿らしい』

本当にめんどくさくなったのか、真司はそれ以上口を開かずぽーっと高坂咲霧を見つめている。


 騒然とした空気が漂う講堂に、突如鳴り響く警報。その危険を知らせる音と同時に赤色灯が点り、音声が流れる。

『BクラスのD反応発生!発生源は講堂横の第一グラウンド。全職員及び上級生は第一級戦闘配備!』

 講堂内の上級生と職員たちが慌ただしく動き始める。

グラウンドへ向かう者がいれば、来賓客の周りを囲み結界をはる者。慣れているのかテキパキした行動に新入生たちは呆気にとられる。その時、新たな警報が凶報を告げる。

『D反応上昇。クラスA3に変更!繰り返します!クラスA3に上昇!』

この放送で、先ほどまで訓練かと思うような安定した空気だった会場を、一気に焦燥感が支配する。

『なぜAクラスが!?』

『D反応の上昇!?クラスを変えるほどの変化なんて聞いたことないぞ!』

『新入生の安全を確保しろ!結界師は講堂を中心に対魔対物理結界展開!急げぇ!!』

 

 その時、講堂の外壁がとてつもない爆音と同時に吹き飛ぶ。

 講堂の外にいたのは大型トラックよりも巨大な化け物だった。

『これが悪魔か!?なんてデカさだ!?』

『こんな化け物を本当に倒せるのか?』

『助けてぇー!』

新入生たちは恐怖に震え腰を抜かす者。逃げようとするのを上級生に止められる者。その行動の多くは、恐怖に支配された危機回避行動だろう。


 そんな彼らの視界に悪魔と対する者の姿が目に飛び込んできた。

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