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D.E  作者: Oshow3
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校門前

 結論。どうにもならなかった。


 色々な人脈を頼り、西へ東へ走り回った結果、たどり着いた答えが『抜けないなぁ』だった。

 少しだけいつもより暖かな入学式当日、重い足どりで正門をくぐる匠。(とりあえず先生方にお力をお借りするしかない)と重々しいため息を吐く。

 

 退魔師専門の学校だけあって、武器講師の先生も少なからずいるらしい。入学早々、面白い生徒がいると先生達の間で噂になるのは間違いない。悪い意味で。

そんな暗い気持ちで正門をくぐり、桜並木を歩いていると、後ろから爽やかな声で呼び止められた。

 

『あのー、すみません。もしかして、天道匠さんですか』


 爽やかな声の主は女性徒だ。そんなことにすら頭の回らない匠は、ぼんやりとした頭で振り返る。体に電気が走り頭が一瞬で冴えわたる。目の前に可愛らしさを絵に描いたような美少女が立っている。

(うわぁ、すっごい美少女だなぁ!あれ、でもなんだかどこかで見たような…)

ボーッと見とれている匠に美少女が再度話しかける。

『やはり、天道さんですね。私、高坂咲霧です。覚えてますか?』

(はて、どこかで聞いた名前だなぁ…いや、全く思い出せない)

『あのぉ、失礼ですが、私とはどういった知り合いで?』

まったく思い出せない匠は素直に聞き返す。こういう素直なところは匠の数少ない長所なのかもしれない。

『やっぱり覚えていらっしゃらなかったのですね。ほら、あの一週間前、たくさんの人に囲まれているところを助け出してくれた』

一週間前、それは匠がガラクタの日本刀を手に入れた日だ。

『あぁ!!思い出した!あの時の帽子にサングラスの!』

 匠が武器店に買いに行く最中、帽子とサングラスで顔を隠した女の子がたくさんの人に囲まれて困っていたので、手を引いて人混みをかき分け逃走したというエピソード。(よくよく見ると、武器店にいた女の子も美少女だったけど、あの子に負けず劣らずの美少女だなぁ)

 高坂と名乗ったその少女は、身長は160センチ程度と、そんなに高くはないが、ショートカットの内側にカールした桃色の髪に、小動物のような仕草と笑顔。そして、ふんわりとした雰囲気とは正反対の凹凸のはっきりとしすぎたボディラインに、制服の超ミニスカートと、そこからのぞくニーハイストッキングに繋がるベルト。

 

なんと素敵な制服なんだと、心の中で制服をデザインしたデザイナーに敬礼をする。

『あ、あのー、その節はお世話になりました。同じクラスになれると良いですね!予定がありますので、それではまた後ほど』

ペコリと頭を下げた咲霧は、極上の笑顔でニコリと微笑み、足早に校舎の方へかけていく。

 (いやぁ、それにしても可愛いなぁ。ってか、うちの学校って女子のレベル高くねぇ?)

 辺りを見回しながらそんな邪な考えを巡らせていると、後ろから肩に腕を回してくる男子生徒が一人。


『おーい。匠ちゃん。いつから美少女と友達になったのかなぁ?俺は友達として悲しい。なぜ俺に紹介しないんだぁ!』

肩に回された腕に力が入る。それを振り解こうとする匠だが、相手の筋力の方が一枚上手だ。

『イテテテッ折れる折れる!!』

首の骨がミシミシと悲鳴を上げ始める。その音を合図に、ふっと首が解放される。

『そんな大げさだなぁ。俺が親友の首折るわけないだろ?』

 そう言って肩を常識とは逸脱した力でバンバン叩いてくるこの男子生徒は五代真司。匠の幼なじみだ。背は高く、真新しい制服の上からでもわかるほどの隆起した筋肉。顔もそれなりにイケメンで、意外と隠れファンは多かった。腐女子と男子生徒にだが。


『今知り合ったばっかりなのに、いつ紹介すればいいんだよ!ったく、イテテテ』

『コラ、真司!匠をイジメないの』

 匠のことをかばっているこの女子生徒。赤色の髪をポニーテールにし、大きな黄色いリボンで止めている。ちょっと体の凹凸は緩やかだが、すらっと長身で足の長いスタイルの良い女性。広瀬真理。彼女もまた匠の幼なじみだ。

 

 幼い頃からいつも一緒に遊び、気づけばいつも一緒いる三人。三人が能力を発動するきっかけになったのも、一緒に死海文書の展示会に行ったのが原因だった。


『べつにいじめてねーよ。匠に知り合いの美少女を紹介してくれって頼んでただけだよ。なぁ匠』

『今のが人にものを頼む態度かよ』真司の怪力にへし折られそうになった首をさわりながら答える。


『ところで二人とも、武器は何にしたんだ?』自分の武器が使い物にならないせいか、やたら他人の武器が気になる。

『私は弓にしたわ』と、背中に装着された折りたたみ式の朱い弓。

『なるほど。真里の家は神社だからいいんじゃないか?朱い色も似合ってるし』

真里の顔がほんのりとピンクに変わる。

『そう?あ、ありがと』

『お、おう』

 はにかみながら笑顔を向けてくる真里は、逆に匠の頬を赤くするのに十分な破壊力を有していた。

『ちょっとお二人さん。二人の世界に浸って、幼なじみの俺のことを忘れるなんて嘆かわしい。そんな子に育てた覚えはありませんよ!』と泣き真似をしながら両手で匠の首を絞めようと迫る真司。

その両手をすんでの所で払い落とす匠。

『お前に育てられた覚えなんかねーよ!で、真司は何にしたんだ?』律儀にちゃんと質問をするあたり、匠のマジメさがうかがえる。

デッカいゴリラが体をくねらせて


『ひ・み・つ』


『あ、はーい。了解でーす』と、冷たくあしらい足早で真司の横を通り抜けていく。

『うそうそ。後でちゃんと見せるから、ちょっとおいてくなよー』と焦りながら匠を追いかける。


 そんな二人を後ろから見ていた真里はため息を吐きながら『はぁ、また三年間この二人のやりとりを見続けるのかぁ。二人とも、ちょっと待ってよー』

追いかけている真里の顔がほんの少しだけ寂しそうな笑顔だったことを、前を走る二人は気づかないままだった。

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