短編:「Ⅿagic Pillow」
赤、青、緑、紫、黄色。五種類の布をランダムに縫い合わせてできているカラフルな枕。こいつと出会ったのは、行きつけの雑貨屋さん。そこの雑貨屋さんは一点物が多く、こいつもそうだった。枕がほしくて行ったわけではないのだが、magic pillowという名前に珍しく一目惚れというものをした。
帰りの電車では、袋の中のを見てはにやにやしていた。久しぶりにいい買い物をしたと上機嫌の僕は途中コンビニでホットアイマスクを買った。何かいいことが起こりそうだ。
小学生のころから使っていた枕にはお礼をして、サブ枕になってもらうことにした。グレーのベットには相性の良くはないそいつを初代の定位置だった場所に置き、シャワーを浴びた。
最近仕事がうまくいっていなかった僕にとって寝るという時間は、人より重要な時間になっていた。いつもよりも入念に歯磨きをした後にホットアイマスクを装着し、完全装備で布団の中に入った。
それからの僕の記憶はない。いつも通りの時間に起きて仕事に行った。枕の使い心地はよくもなく悪くもないという感じだった。
しかし、やたらと周囲の人間が僕を見てくる。それも目線からして顔を見ている。駅にいくまでの道も、電車に乗っている今も。何か僕は変なのだろうか。
「すみません。」
ドキッとして小さな声のもとへ振り返った。声をかけてくれたのが、黒髪で黒縁眼鏡をしたかわいらしい女の子だったことに、またドキッとした。そして、僕の耳元の顔を近づけて囁いた。
「素敵ですね。」
本日三度目のドキッと。。あの枕で寝てから違和感はあったが。僕を違う世界に飛ばしたのだろうか。魔法の枕。ジ〇リの世界からでも飛び出してきたみたいだ。まぁいい、帰ったらあいつにお礼しよう。
すると、顔を赤くしてい僕に彼女がもう一囁き。
「そのアイマスク。」
僕が次の駅で降りたことは言うまでもない。