父として
この作品は時系列は関係ありません。
ただ単に突発です。
理由は言いません。
書きたかっただけという事にしてください。
俺は今、野営の準備をしている。
子供達が冒険者になりたいと言っているからだ。なので俺の知っている知識を教えようと思い、故郷の森の少し開けてる場所で準備を整えた。
反対はしてるが、報告も無しに出て行かれて、知識が無いまま困るのも、親としては少し思うところがある。
「一応誰かが教えてくれると思うが、父親として知っている事を出来る限り教えようと思う」
そう言うと子供達は真剣な顔で聞いている。
「まずは火だな、コレが無いと煮炊きが出来ない、父さんは魔法でお湯が出せるから良いけど、煮る事は出来ないからな。とりあえず燃えやすい枯草とかを火口として扱い、どんどん太い枝に火を移して行き、普通の枯れ枝に火をつける方法が一般的だ」
手に持っていた丁度良い太さの枝を、右手で持って、左手を叩きながら説明を続ける。
「主にマッチなんかが有名だけど、濡れると使えないから、溶けた蝋に浸して、防水処理をするのも一つの手だな。まぁ二人とも火属性の魔法は使えるから問題無いと思うけど、予備として一応持っておけよ」
そう言ってマッチに火を付け、揉みほぐした枯草に火を付け、どんどんと小枝を足して火を大きくしていく。
「こんな感じで安定してきたら、取りあえず薪さえ絶やさなければ燃え続けるから、寝る場合は順番を決めて管理する事」
そして、牧場から買ってきた兎を、物陰から二羽取り出し、二人に渡す。
「兎が大好きなミエルには悪いが、二人にはその兎を下処理してもらう。手順は知ってるか?」
「豚の解体なら知ってるけど、兎みたいな毛皮が有るのは、やった事が無いわ」
「僕も」
「そうか、毛皮も売れるからな、まずは皮剥ぎの方法からか」
そうなる事を想定して、三匹目の兎を取りだす。
「頭を落とした兎を仰向けに寝かせ、前足と後ろ足の所に横に切り込みを入れて、お腹の所を縦にも切り込みを入れる」
丁度『エ』になるような感じだ。四つの目が食い入る様に兎を見ているので続ける。
「そうしたら四本の脚に円をかく様に切り込みを入れてから足を折り、ナイフの刃先に指を当てるようにして、皮に穴を開けない様にしながら皮を剥いでいく、ここまではいいか?」
子供達を見ると、頭を縦に振っている。
これで皮を剥ぐのは終わったが、俺は毛皮職人に弟子入りした事も、毛皮を売った事も無い。なのでわからないから正直に言う。
「まぁ、父さんは狩ってきた獲物をそのまま肉屋とか、スリートお婆ちゃんに渡してたからわからないけど、これだけは言える。皮についてる油をスプーンでそぎ落として料理に使え。毛皮なんか、どうやってなめすのか知らないし」
そうしてスプーンで皮の内側に有る脂身を削ぎ落し、皿の上に取って置く。
その後は内臓処理だ、
「お腹を喉から肛門まで割いて、丁寧に内臓を取りだし洗って血を落とす。内臓は処理が面倒なら穴を掘って埋める事、じゃないと野生生物や魔物が来るからな。父さんが知ってるのは有名な内臓くらいしか無いけど、詳しくは先輩冒険者にでも聞いてくれ」
バケツに入れた内臓を色々な部位に別け、胃腸系は念入りに洗い、ぶつ切りにして、心臓や肝臓も丁寧に処理して鍋に放り込んでいく。胆嚢? 良くわからない部位は、傷つけずに捨てたね。色々怖いから。肉は関節でぶつ切りだ。
「この鍋に入れた内臓だけど、煮こぼせば臭みが消えるけど、今回は野営って事で省略だ、香辛料でごまかすぞ?」
そして俺は、なるべく同じ太さの一メートル程度の長さの丸太を三本用意して、テント用の大きな杭で、三本とも繋げ、簡易三脚を作る。
「こんな感じで鉄製の三脚が無くても鎖で鍋が吊るせる。まぁ、燃えて倒れるかもしれないから注意な、それと杭が無い場合は、蔦で三本を縛って真ん中の丸太だけを一回転させる方法も有るから、蔦は柔らかい物を選べよ」
子供達は必死で覚えようとしているが、まだやる事も有るので気にせず続ける。見て覚えろ。
「あとはさっきの脂肪を使って、軽く香辛料を振ってから臭みを消して、肉や内臓系を炒め、手元に残ってる適当な野菜が有ると仮定して言うぞ? 好みの大きさに切って入れても良いけど、火の通り具合を速くする為に、今回は薄切りと、細かい角切りで済ませるぞ」
そう言って、吊るしてある鍋に、火の通りにくい順から豪快に入れる、野菜は家に有った人参と玉ねぎだ。多分一個くらいならばれないだろう。
そして肉にある程度火が通ったら、水を入れて煮込む。カレー粉? 知らない子ですね。うちには塩と砂糖と香辛料しか有りませんよ!
「んじゃ煮込み終わるまで少し時間がかかるから、お前達も兎を処理しろ」
そう言って兎を指差し、解体をさせる。
「あ! 破けちゃった」
うん、力入れすぎ。リリーはもう少し細かい作業を丁寧にしてほしいね。
「ごめんなさい兎さん」
ミエルは中々踏ん切りがつかないみたいだ。まぁ、その為に今回の教材に兎を使わせてもらったんだけどな。
□
「二人ともとりあえず終わったな。んじゃ、取りあえず片方は串に刺して焼く、もう片方はフライパンで焼く。とりあえず直火の場合だけど、手をかざしてゆっくり五つ数えても熱く無い高さが理想だ」
そう言って火に手をかざし、ある程度の場所を決める。
「場所が決まったら、この二股に別れた枝を地面に二本刺して、串を置く、後は適当に回せば焼ける。フライパンを使った方法だけど、変な三脚みたいな、五徳って奴を置いて使う事も有るけど、邪魔だから持ち歩くのも嫌だな、って場合だ。そのまま振っても良いけど熱いからな、少し特殊な方法を教えるぞ? 丸太を十字に割って、少し間を開けてその真ん中で火を付けるんだ。そうすると、真ん中で火が燃えてるし、フライパンも置ける。な? 便利だろ? そのまま丸太が燃料になるから、料理が終わったら、そのままにしておいても問題無い。んじゃ味付けは二人に任せる」
「なら私は直火で炙る方の兎の味付けをするわ」
「じゃあ、僕がフライパン?」
うん、わかってた。リリーなら豪快な方を選ぶと思ってたよ、まぁやってみたかったんだろうな。
□
兎が焼き上がり、大雑把に三つにして、お互い口に運ぶ。
「お姉ちゃん、味が薄いよ、それになんか変に臭い」
「本当、あんなに塩を使ったのに」
「まぁ、簡単に言うと、直火で炙ると油が出て、塩が油と一緒に流れ出るからな、良く刷り込むか、頃合いを見て、もう一回塩を振りかけるか、食べる時に好みの味にしてもらうかだな。それと香辛料は、絶対にすり込む様にしないと駄目だぞ」
「はい」
「変に臭いのは、油が垂れて、煙が肉に着くからだ、これは燻煙って言って、食べ物に香りを付けるのに付ける方法だけど、今回は木が悪かったな。リンゴの木の煙は言い香りがするんだが、野営でリンゴの木なんか探せるはずもないし、リンゴの木の薪なんか売ってないからな。よし次だ」
そしてフライパンの兎も三つにして、食べようとするが、見るからに肉の中のほうが赤い、生焼けだ。寄生虫が怖いから、しっかり火を通したい所だな。
「とりあえず、大きいまま焼いたのがまずかったな、確かに焼いて見ろとしか言って無かったけど、そのまま焼くとどうなるかくらい自分で判断しないと駄目だ。それと、出た油がもったいないから、薄く切った野菜を一緒に炒める事を進めたいね、油を吸って美味くなるからな。まぁ、これは経験だな。料理は慣れてくれ」
「はい」
「さて、父さんのスープの方だが、明らかに火力が足りてなくて、火が通ってなくてなんか怖い、臭みが残ってる、って場合だ。そんな場合はこの焚き火の近くか、火の中に入れた焼けた石を入れる、そうすればすぐにグツグツと煮立つ」
そう言って木の枝を二本使って石をつかみ、鍋の中に入れてゴボゴボと煮立たせる。
うん、湯気が多くて、香りも良いな。
「あとは食べられる野草が有れば、この頃に入れても良いな。それも聞く様にしろ、父さんはなぜか毒に強いからあてにならないぞ、だから売ってる野菜か知ってる野菜しか料理に使えない。あと木とか葉っぱに毒が有る場合は出た煙を吸っても駄目だから気を付けろよ、もちろん肉を刺す串にしても駄目だ」
そう言って、リュックの中から葉物野菜を取り出しちぎって入れ、少しだけ蓋をしてしんなりさせる。
「まぁ、料理に関してはこんなもんだな、もし鍋がない場合は、水袋を地面に埋めて、焼けた石を入れて、袋の中でスープにしても良いけど、それ専用の水袋になるから買い換えろよ。同じ感じで風呂も作れる」
そう言って、小川の脇を軽く魔法で掘り下げ、水を引き入れ、水の濁りが取れるように、排水口も小川に向けておく。
そしてしばらくして、濁りが取れたら上流側を塞ぎ、焼けた石を数個入れて熱めにする。
「こうして熱めに作って、熱かったら上流の堰を軽く開けて、少しずつさます。コレで風呂の出来上がりだ。まぁ、小川や湖で水浴び程度でも良いと思うが、どうしても風呂に入りたいって場合だけだ。体を清潔にしないと皮膚が病気になったり、カビが生えるから、父さんとしては出来れば毎日入って欲しい。それが無理なら濡れたタオルで拭くだけでも違うし。砂で体をこする手段もあるけど、それは水がない場合だな」
子供達は変な顔をしているが、無いよりは良い。
「それと、水が無くて洗濯できない場合は、風通しの良い場所で太陽の光に太陽が二個分傾くくらい、天日干しで服に付いた虫とかを殺す方法も有るから、頭の片隅に入れておけ。まぁ何が言いたいかって言うと、体は綺麗にしておいて損はないって事だ。香水とか付けると魔物や動物に気がつかれるからそう言うのは気をつけろよ」
軽くさわり程度の野営での料理を教えたが、落ちた油で燻煙って言ったら、焼き鳥が食いたくなったな、タレって醤油と砂糖だったっけ?
野営の料理メインの知識だけでした。




