第9章 その7 番外 セブンシスターズ!後編
妹たちのお茶会、後編です。
雅人たちは知らないけれど、妹たちは、みんな仲良くなっていました。
宮倉さんちの菜菜花ちゃんは咲耶の親友です。
番外 セブンシスターズ 後編
「だからなんで僕が入ってるのさ!?」
「え? なんでって?」
きょとんとする、咲耶。
「セブンシスターズでしょ? 妹同盟だよね? 僕は、い、いちおう、あれだから。男だから!」
常日頃、クールで冷静沈着、天使のスマイル王子、榊原伸は、心からこう叫んだのだった。
シスターズじゃないよね、と。
しばしの沈黙。
「だって伸くん。七人っていうのは重要なとこよ?」
それまで沈黙を守っていた人物の一人が、くすっと笑って、言う。
「なんたってセブンよ。これはかっこいいわよね~。ロマンよね~」
「そうそう。ロマンは、何より大切だわ」
「はあそうですか。って杏子さん! それに香織さん、あなたもですか!?」
目の前に座っている三人の女子高生に、伸は不満を訴えた。
ひとりは杏子。その隣に座っているのは並河香織。
二人とも、人ごとと思っているのでお気楽である。
そして、最期の人物は。
「そうなのよ伸くん。セブン・シスターズっていえばプレアデス七姉妹とかが連想されるけれど。国際石油資本だとかイングランド南部の白い崖のこととか、アメリカの名門女子大学のことだったりするのね。まあ言ってみれば七不思議みたいなものなんだから!」
立て板になんとやら。一気に言い放ったのだった。
「……だから?」
なめらかな弁舌も、天使なんかじゃない不機嫌な伸の前には意味を成さない。
「つまり男女の別なんてほんの細かいことだってことなの。ともかく、伸ちゃん。あたしたちはトモダチで仲良し同盟なの! ってことで、いいよね?」
にっこり笑う、女子大生。
青山葉月。
「葉月さんも香織さんも、女性だけど、一人っ子ですよね??」
大いに疑問を呈する、伸。
「いやぁだ伸ちゃんたら。おほほ」
わざとらしく葉月はおしとやかそうに笑ってみせた。
「セブンシスターズには、七人いなくちゃ格好がつかないでしょ。だからまあ、代役ってことで。こんな面白い会合には参加しておきたいし!」
「あら。葉月姉さんは、わたしの姉がわりだもん! メンバー資格はじゅうぶんでしょ。それに、わたしと香織は、義姉妹みたいなものなの!」
「ありがとう、杏子」
杏子の言葉に、香織は顔をほころばせた。
場の空気が、一気に明るいものへと変わった。
「……まあ、いいや。ここは納得するよ」
ほうっと息を吐いて伸は肩を落とした。
続いて、香織はそっとつぶやく。
「そのうち、メンバーも増えるわきっと。七人じゃなくなっても、セブンシスターズって名前はそのままでいたいわね」
「増える?」
きょとんとする咲耶。
「そのときになれば、わかるわ」
並河香織は、あでやかに笑った。
和やかに会議は進んだ。
「にーちゃん、バイトしてるのは、料理が好きだし、社会勉強したいっていうんだけど。クリスマスプレゼントのためじゃないかって思う。無理しないでほしいなあ」
だって彼女もいないんだよと咲耶は暴露した。
「咲耶ちゃんのためね。素敵じゃない」
終始にこやかに香織は微笑んでいる。
「雅人はどうかなぁ。やっぱりクリスマスを意識してるのかな」
杏子は腑に落ちなそうに首をかしげる。
「そこは雅ちゃんを信じてやってよ。あの子、自分で納得しないと先へ進めないの。不器用だけど、良い子なのよ」
と、葉月。
「欺してたあたしが言っても説得力ないかもだけど」
「葉月姉さん! そんなことないわ。……わかった。雅人のこと信じる。あたし、心配しすぎの、過保護みたいね」
「杏子はそのままでいいのよ」
香織はきっぱりと言った。
「いずれ、何もかも、落ち着くところへ落ち着くことになっているんだもの……」
あらがっても仕方がないのよと、付け加えた言葉は。ごく僅かな者にしか、聞き取れなかった。
その一人が、杏子ではないことだけは確かである。
「やれやれ」
再び、天使のような微笑みを浮かべて、伸は、このセブンシスターズのメンバーたちを見やった。
「すべては白き魔女の手の中で」
伸の、この囁きは。
双子の妹、紫苑に届く。
「それでいい」
紫苑は答え、紅茶のカップを手に取った。
「ま、いっか」
双子たちは笑みを交わす。
「香織さんの意図は……誰にとっても、悪いことじゃないから、ね」
「ねえねえ、ケーキ追加で頼もうよ!」
咲耶が菜菜花に、メニューを見せる。
「菜菜花、ダイエットしようと思ってるのよ? ん~、でも、この生チョコケーキ美味しそうね」
「でしょでしょ! 一個頼んで分け合わない?」
咲耶と菜菜花の悩ましい会話に、葉月が加わった。
「もう! ダイエットはあたしもしてるけど! 明日からってことに!」
それをきっかけに、ケーキの追加の嵐が巻き起こる。
笑い声があがる。
賑やかにおしゃべりに興じていたセブンシスターズたちには、双子たちの会話は聞こえなかった。
第9章、これで終わりです。
次からはクリぼっち脱出大作戦!?
……に、なるか?




