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異世界から戻ってみれば異世界!?  作者: 緑野
序章 異世界から戻ってみれば異世界!?
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序章 エピローグ

「ただいま~」

「に・・・にんげん・・・さ・・・ま・・・、ご・・・ぶじ・・・で・・・」

 俺がミトを置いてきた場所へと戻ると、ミトはうつ伏せになって倒れていた。どうやら、俺を追いかけようとしたらしく、多少身体を引きずった痕が見える。

「お前こそ大丈夫だったか? 悪かったな、何の説明も無しに『エネルギーコア』を抜き取って」

「わた・・・し・・・のことは・・・きに・・・しないで・・・くだ・・・さい・・・」

 ミトを抱き上げて起こしてやるが、いまだ俺が開けた胸の穴は開いたままで、途切れ途切れになりながらも笑みを浮かべて話す様子がとても痛々しい。

「それで、これを返そうと思うけど、修理するにはどうすればいい? また中に突っ込めばいいか?」

「わ・・・たし・・・のて・・・に・・・それを・・・おい・・・て・・・くだ・・・さい・・・」

「わかった」

 ミトが差し出してきた右手に、俺は持ってきた『エネルギーコア』を渡すと、ミトはそれを穴の開いた左胸に差し込んだ。そして手を引き抜くと、左胸の穴は泡に包まれて、やがて石膏のように固まってしまった。

「応急処置は完了しました。完全に修復するには多少の時間が掛かりますが、無理をしなければ現状は問題ありません」

「はぁ、心臓が取れたってのに、随分と簡単に直っちまうもんなんだな」

「アンドロイドですから!」

 見た目はまだ痕が残っているとはいえ、さきほどまでの話し辛そうな様子は無くなり、あっさりと元に戻った様子に俺は感心とも呆れとも取れるため息をついた。本当は、無事に直ったことによる安心なんだけどな。

「それじゃ、最後のパーツのところに行くか。ここから、さほど離れてないからあと少しだな」

「それよりも! ジャイアントワームはどうされたのですか!? 省電力によりセンサーが効かず状況が把握できませんでした」

「ん~、あれは、まぁ・・・倒した」

「は?」

「いやだから、ジャイアントワームは倒したから脅威は去ったってことで」

「そんなありえません。ジャイアントワームはA級危険生物に指定されており、戦闘用飛空船などを用いなければ退治するのは難しいとされています。ましてや、人型携帯兵器での戦闘は無謀としか言えないわけで・・・もしや貴方様が戻られる直前に見えた高出力ビームのような光が? しかし、あれほどの強力な攻撃が可能な大型兵器がこの場所にあるはずが・・・」

「あー、詳しい話は後でってことで。とりあえず、お前の身体を完成させてしまおう」

 驚いたような困ったような表情を浮かべるミトへの答えは保留にしつつ、俺はまたミトを抱き上げて目的の場所へと歩き出す。正直、今説明しても到底信じられることでは無いだろうし、まだ完全にはミトを信用できてない俺の気持ちもあった。


「よし、これで完成だな!」

「はい! 本当にありがとうございました!」

 それからしばらくして、俺達は無事にミトの最後のパーツを見つけ、その身体を完成させた。まぁそんときに、またちょっとした問題が起きたわけだが、たいしたことじゃなかったので割愛しておく。いや、ほんと、たいしたことじゃないんだ、最後のパーツが下半身だったことは関係ない・・・うん。

「衣服までお借りしてしまって申し訳ありません」

「いや、さすがにそのままだと、俺が困るから・・・」

「大変お見苦しくて申し訳ありません~」

 正直、女の子の裸にマントのみというのは、いくらなんでも俺が色々と困る。というわけでミトには、亜空間から取り出した俺の代えの衣服を着てもらうことにした。さすがに女物は無いので、男物のシャツとズボンなわけだが、かなりダブダブになってしまっている。

「じゃあこれで、お前のお願いは完了したわけだ」

「そう・・・ですね」

「これからどうするつもりだ? なんなら人のいる場所まで送っていくぞ」

「・・・」

 俺の言葉にミトは困ったような笑みを浮かべた。たしかに、ミトには身体を捜してほしいと頼まれただけで、その後のことは決めていない。だが、白々しいにもほどがあるだろう俺!

「あの・・・アンドロイドは人間様に奉仕するために作られたため、所有者の居ないアンドロイドは違法として、処分されてしまうのです」

「・・・」

「私にも以前は所有者の方がいらっしゃったのですが、捨てられる際に所有者登録は抹消され、現在は所有者無しとなっています」

 ここまで人間と変わらないってのに、捨てるとか処分とか酷い世界だ。いや、元の世界だって自分の子すら捨てたり殺したりするんだ、どの世界でも人間ってのはどうしようもない生き物だな。そして、俺もそのどうしようもない人間なわけだ。

「たくっ、助けるって決めたときから、このあとどうするかなんて決めてるだろうによ!」

「はい!? ご、ごめんなさい!!」

「あー、いや、いまのは自分に対しての言葉。それで、一緒に来るか?」

「え、それって?」

「人間の所有者が必要なんだろ? 俺でもいいか?」

「・・・は、はい! もちろんです!! それよりも貴方様は本当によろしいんですか!? 私は捨てられていたアンドロイドですよ・・・?」

「なにが悪いんだよ、故障も自分で治しちまうアンドロイドだぞ? めちゃくちゃ良い拾い物だろ? どこの誰だか知らないが、捨ててくれてありがとうって俺が感謝するよ。あ、お前にとっては嫌なことだったよな、すまん」

「いえ! そんなことはもうどうでもいいのです! それよりも、貴方様のお名前を教えていただけませんか?」

「あ? 言ってなかったっけ・・・。俺の名は天地人志アマチ ヒトシ、姓がアマチで名がヒトシだ」

「アマチヒトシ様・・・ヒトシ・アマチ様をサンスタンド社製アンドロイドMI-10の所有者として登録いたします。以後、MI-10の全ての権限をヒトシ・アマチ様が所有することになりますが、よろしいでしょうか?」

 俺が名を教えると、ミトは視点を宙に固定し、機械のような抑揚の無い声で問いかけてくる。

「ああ、俺が所有者だ」

「登録は完了致しました。以後、MI-10はヒトシ・アマチ様の所有物となります。ふぅ、ありがとうございます! 今後ともよろしくおねがいします」

「こちらこそ、今後ともよろしくな」

 登録が完了すると、ミトは再び視点を俺にあわせ、にっこりと笑みを浮かべた。人にはありえない青色の髪はゆるいカールの掛かったミディアムヘアで、日に焼けることのない純白の肌のすっきりとした顔立ちにはやや大きめの金色の瞳、ツンと上向きの小さな鼻とふっくらとした桜色の唇がバランスよく配置されている。まさしく作られたような、いや作られた美。しかしそこには作り物めいた表情は無く、感情を表現する自然な笑みが浮かべられている。改めてこうして見てみると、恐ろしいほどの美少女だ。

「それでは、これからどうなさいますか?」

「あ、ああ・・・そうだな」

 前の世界でも、お姫様やらエルフやらと美女・美少女を見る機会は多く、結構慣れたと思っていたのだが、少しだけ見蕩れてしまっていた。ともあれ、あくまでミトはアンドロイド、ロボットや人形と同じだ。どれだけ綺麗でも、マネキンに恋をすることは無い・・・はず。

「とりあえず人の多く住んでいる場所へ向かおうと思うが、ミトはなにか意見はあるか?」

「わぁ! 初めてヒトシ様に名前を呼んでもらいました!」

「え、あ、そうだったか?」

「はい! あ、意見ですね。私は特にこれといったものはありませんが、この近くではプリンキピウムの町へ向かうのが良いと思います」

「じゃあ、そこへ案内してもらえるか?」

「はい、お任せください!」

 嬉しそうに胸を叩くミトの様子に、俺は苦笑を浮かべながらも心の中で少し安堵していた。まだ俺の心の中では他人への不信感が渦巻いている。だが、ミトはアンドロイドだ。この世界のアンドロイドというものがどんな物かはまだちゃんとはわからないが、人に奉仕するために作られたという彼女が、俺を裏切ることは恐らく無いだろう。だから、彼女なら信じられる、信じてもいいんじゃないかと思っている。そう思えることで、俺の心は壊れないですむ・・・。

「どうかなさいましたか?」

「ん、いや、今行くよ」

 少し前に進み、振り返って俺に首をかしげる彼女に、俺は軽く笑みを返しミトと並ぶように歩き出す。こうして、俺の新しい異世界での冒険が始まった。

 まずは、ここまでお読みくださってありがとうございます。序章はここまでとなります。本来はもっと早く完成させる予定だったのですが、自分の怠け癖が出てしまって時間掛かってしまいました(苦笑)。これからの本章は、もっと早く書けるようがんばりたいと思います。では、今後もお付き合いいただければ幸いです。

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