序章4
今回、少しだけエッチなシーンが含まれます。といっても、お風呂場で鉢合わせといったぐらいのもので、期待されるようなものではありませんが(笑)。それでも、「エッチなのはいけないと思います!」という方はご注意ください。
「貴方様はエルフでは無いそうですが、もしかして自然文化保護区出身の方でしょうか?」
「自然文化保護区?」
「自然と共に生活する文化を保護している地区のことで、科学技術の持ち込みと使用が厳しく管理されており、自然に影響のある大規模な土地開発も禁止されている場所のことです。貴方様の身につけている物が、自然文化保護区で使われている物に似ていますし、この地区に住んでいる者の中には不思議な能力を持った者もいると聞きます」
「・・・あ、ああ、そうなんだよ。科学とかまったく無い場所で暮らしててさ、外の常識とかもさっぱりなんだ」
なるほど、どれほど科学技術が発展して便利になっても、敢えてそれを捨てて自然と共に生きたがるヤツも出てくるんだな。だが、これは俺にとって好都合かもしれない。別世界から来たと言っても信じないだろうし、この世界についてまったく何も知らないことをごまかすにも、その自然文化保護区に居たということにしたほうが都合が好い。
「やっぱりそうなのですね~。でもご安心ください、私のデータベースには政治・経済・地理・文化その他もろもろ様々な情報がインプットされておりますので、わからないことがあれば何でもお聞きください!」
「じゃあ・・・」
元の世界への戻り方を・・・と、いくらなんでもわかるわけないだろうし、もし知っていたとしても今ここで聞くべきではないな。今はまだ、この世界のことを詳しく知ってからでないと、下手な行動を取ることはできない。魔法についても、ある程度ごまかしておいたほうが無難だろうか。
「え? なんですか?」
「いや、なんでもないよ。っと、そろそろ次のパーツの近くまで来たようだな」
「本当ですか!? では、サーチしてみます」
別世界の話はとりあえず保留にしておき、次のパーツの場所に着いたことをミトに伝える。反応はここを含めてあと二つ、ちゃっちゃと探して終わらせて、人のいる場所へと向かわないとならない。
「ありました~! このまま正面、あの物体の奥になります!」
「了解、このガラクタを退かせばいいんだな、っと!?」
ミトの指示に従い、電子レンジのような箱型のガラクタを持ち上げて退かす。そして、その奥をライトで照らすと同時に、俺は思わず目を背けた!!
「私の胴体ですね! 右腕もちゃんと残ってます! ・・・ってどうしました?」
そう、そこにあったのは胴体。もう少し詳しく言うと、胸部と右腕の部分。ミト、女性型アンドロイドの胸部・・・あ~、何が言いたいかと言うと、つまりは付いているのだ、女性特有のアレが・・・。
「では、取り出していただけませんか?」
「う、あ~、っと、俺が? 触るの? アレに?」
「はい、なにか問題が? あ、しばらく放置されていたので汚れてしまっているかもしれませんが、あそこから取り出して頂きませんと、修理ができないのでお手数で申し訳ありませんがお願いします」
「・・・」
ミトに促され、とりあえず逸らしていた視線をソレに向ける。今までの例に漏れず、ソレは実に精巧に人間を模しており、その部分だけ見れば本物と変わらない。ああ、実際に本物を見た記憶は無いんだが。
「ゴクリ・・・」
やや小振りであるが形の良いソレは、身体とのバランスが良く取れており。柔らかそうなマシュマロの上にツンと立った小粒のレーズンに、思わず音を立てて唾を飲み込んでしまった。
「あの~・・・」
「っ! わかった! すぐに取り出す!」
ミトの声に非難の色を感じるのは、俺の罪悪感のせいなのか。とにかく、俺は心を無にするよう努力しつつ、慌てて頭部と左腕を適当な場所に置いて、胴体へと両手を伸ばす。
「(フニュン)うぉっ!」
焦っていたためか、指先が胴体から突き出た一部分に少し触れてしまった! ワザとではない、決してワザとではない! だが、想像以上の柔らかさに驚きを隠せないな!
「どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもない!」
ともあれ、胴体部分の腋の辺りを掴み、ガラクタの山から取り出そうとする・・・が?
「あれ?」
持ち上げようとしてみるも、何かに引っかかってるように思うように取り出せない。どうやら、右腕がガラクタに挟まれているようだ。とはいえ、潰されるほどがっちり挟まってるわけでもないようなので、少し力を込めれば引き抜けるはず。
「そらよっと・・・うわっ!?」
そう思って、勢い良く胴体を引っ張ってみたところ、スポンといった感じに右腕がガラクタから抜けた拍子に、俺は体勢を崩して後ろに倒れてしまう。
「くっ、ちょっとお約束過ぎるだろう。・・・ん?」
なんだ? 顔に何か柔らかい感触が・・・。視界を占めるソレは、先ほどから俺が手に取っていたモノ。まぁ、ぶっちゃけ『おっぱい』である。
「うぁぁあああ!」
慌てて俺はそれを身体から離し、素早く起き上がった。いくら作り物といっても、精巧に作られた女性のソレに顔を埋めるなんて・・・は、恥ずかしい!
「大丈夫ですか~?」
「はっ! わ、ワザとじゃない、ワザとじゃないからな! 変態とか女性の敵とか、そういうのじゃ無いから!」
「・・・はい?」
傍らから聞こえる声に、俺は思わず弁解の言葉を口にするが、どうやらミトは気にしていない。というか何故俺が弁解するのかもわかっていないようだ。
「そ、それで、このあとどうするんだ? さすがに俺はアンドロイドの修理なんてできないぞ?」
「それについては、大丈夫です。頭部と左腕を、胴体にくっつけてくれればいいだけですから」
「くっつけるだけ?」
正直半信半疑なのだが、ミトの指示通りに俺はまず頭部を胴体の首の付け根に押し当ててみた。
「おお!?」
するとどうだろう、くっつけた部分から泡のようなものが吹き出てきて、やがてそれは固まり頭部と胴体が接着されてしまう。
「えっと、これで直ったのか?」
「はい、とりあえずナノマシンによる接合は完了しました。完全に修復するには、多少の時間は掛かりますが、応急処置としてはこれで十分です」
「ナノマシン・・・?」
ナノマシンってのはあれか、目に見えないぐらいの小さな機械で、生物の細胞やウィルスのように扱うことができるとかいう。
「あ、ナノマシンというのはナノサイズの機械の総称で、私のこれは主に自己増殖するナノマシンによって自動的に破損部の修繕を行ってくれます。その他にも、皮膚のお手入れをしてくれたり、細かいゴミや汚れなどを取り除いてくれたりと、とても便利なんですよ」
「ふ~ん、じゃあさっきの泡みたいなのがナノマシンの固まりだったわけか」
「はい、その通りです」
なるほどね、やっぱり元の世界よりもすごく発達した科学文明だな。まぁ、見た目たんなる泡だからちょっと地味だけど。発光してトランス! とかは無いのだろうか。
「さて、これで残りはあと一つだが・・・そのまえに」
「?」
無事に左腕も接着し、出来上がったのは女性の上半身。しかも裸。いくら精巧に作られているからといって、あくまでロボット。人形やマネキンと一緒である、といくら頭に言い聞かせても、正直この姿は目に毒なのは間違いない。言っておくが、俺は決して美少女フィギュアに欲情するような変態ではない。ではないが、これほどに人間そっくりではしかたない、あくまで一般的な男性の感性から言っても普通のことなんだ!
「これを羽織っててくれ」
「え、これはマント?」
「あ~、正直、そのままだと目のやり場に困るからな」
「あう、お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません」
そういうわけで、俺は前の世界からずっと肩に羽織っていたマントをミトの身体に巻きつけるように被せた。ミトも俺の言うことの意味がわかったようで、少し恥ずかしそうな表情を浮かべながら、自らの両手でマントを押さえる。
「それじゃ、次のパーツの場所に行くか。えっと、抱えるぞ」
「はい・・・」
だから! そういう人間っぽい仕草をされると余計恥ずかしいんだって! という心の叫びをなんとか抑えつつ、俺は再びミトを抱え上げると最後のパーツの元へと歩き出すのだった。
次で序章は完了になる予定です。その後は、本編として本格的な冒険を開始したいと思っています。本当は序章は8月以内に終わらせる予定だったんですけどね・・・。明日には、完成させたいと思います!