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異世界から戻ってみれば異世界!?  作者: 緑野
序章 異世界から戻ってみれば異世界!?
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序章2

「な、生首だと・・・!?」

「へ?」

「な、なんで女の生首がこんなところに落ちてて、しかも普通にしゃべってるんだよ!? アンデッドか? いや妖怪の類かも? それとも成仏できなかった幽霊? マサカド!? ナンマイダブナンマイダブ、安らかに成仏してください!」

 積み重なったガラクタの中腹に、ぽつんと横向きに落ちていたのは人間の生首。しかも、その生首はニコリと笑みを浮かべて俺を見ており、今まで色々な化け物と戦ってきた俺でもかなり恐怖を感じさせた。俺は思わず両手を合わせて、日本でお決まりの文言を口にするが、俺は特に仏教徒というわけではないので効果は無いかもしれない。

「あの~・・・私は自立式人型機械、いわゆるアンドロイドですので、このような姿ですが死んでいるわけではありませんよ? そもそも機械に死の概念はありませんし」

「うう、ナンマイダブナンマイダブ・・・は? 機械? アンドロイド?」

「はい、私はサンスタンド社製アンドロイドMI-10(エムアイテン)、通称『ミト』です」

「・・・」

 微笑を浮かべたまま自分をアンドロイドだと言う生首。アンドロイドってあれだよな、人型のロボット? 確かに良く見てみれば、首の付け根部分から切れた配線のような物が見えるし、耳のある部分には近未来風ヘッドフォンみたいなものが被っている。だがそれ以外はほとんど人間(の生首)に見えるし、目や皮膚なんか生物のそれと変わらない。以前に元の世界で見た人間にそっくりなロボットとは比べ物にならないくらい、人間そっくりに見えた。

「えーと、本当にロボットなのか?」

「はい、間違いありませんが?」

 半信半疑の俺の問いかけに、生首は困ったような笑みを浮かべながらも肯定する。いや、そういう表情とかが人間っぽすぎて困るんだが。ともあれ、これがロボットなら恐れる心配は無いだろう。どうやら、この世界は元の世界よりかなり科学技術が発達しているようだ。

「あのぅそれで、納得していただけたら、私の話を聞いていただきたいのですが~」

「あ、ああ、そういえば助けて欲しいんだっけ?」

 正直納得したわけではないが、とりあえず保留して置くことにする。そして、この生首を見つける直前に聞いた言葉を思い出し、なんとなく相手の話の予想がついて嫌な予感を感じる。

「はい、見ての通り私は、今は頭部だけなのですが。私の胴体がこのゴミ集積所のどこかにあるはずなのです。その胴体のある所までこの頭部を連れて行って欲しいのです」

「・・・このガラクタ置き場のどこか?」

「はい」

「・・・」

 ある程度予想はしていたが、やっぱりそうきたか! RPGに頭だけのロボットが出てくれば、その次に胴体を捜して欲しいというのはお約束というものだろう。だが正直言えば、見渡す限りガラクタの山が連なるこの場所で、人型の胴体を探し出すのはかなり根気が要ることになる。しかも今は夜だ、月明かりや照明があっても探し物をするのには難易度が上がるだろう。

「せめて方角とかわからない?」

「申し訳ありません~、頭部だけではエネルギーが足りず、レーダーの範囲は100メートルほどです。100メートルまで近づけば場所がわかるのですが・・・」

 100メートルとか、このガラクタの小山一つの端から端までの距離よりも短いよ! 俺はそうツッコミたいのをグッと堪えて苦笑を浮かべるしかない。

「うう、やっぱり無理ですよね・・・。人間様がこんな場所に訪れること事態が珍しいのに、胴体を捜して欲しいなんて厚かましいことを言って申し訳ありません。お話を聞いてくださっただけでも嬉しいです、ありがとうござ・・・」

「・・・やるよ」

 悲しそうな声音で、それでも儚げに微笑みを浮かべる生首の様子に、俺はついつい言葉を遮って呟く。

「いまし・・・へ?」

「面倒だが探してやるよ。まぁ、手段が無いわけでも無いしな」

「ほ、ほんとうですか!? でも、どうやって・・・」

 自分ではちょっと嫌になるが、俺は自他共に認めるお人好しというやつだ。前の世界でも勇者なんてやっちまったからな。結果的に人間不信に陥りそうな目に遭ったわけだが、それでも困ってるヤツを見ると放っておけなくなる。それに、まぁ、これは人間じゃなくてアンドロイドだし。

「この魔法が効果あるといいんだが・・・『マテリアルサーチ』」

 俺は生首の頭頂部に手で触れると、探し物を見つけ出す魔法を唱える。すると俺の頭の中で、周囲にあるいくつかの物質の反応が感じ取れた。どうやらアンドロイドの身体の一部も、探し『物』に該当するらしい。この魔法、本来は鉱物資源などを探すものなのだが、生物以外の物質であればある程度融通が利くので、ある意味アンドロイドで助かった。

「だいたいの場所はわかった。それじゃ行くとするか」

「え? は、はい・・・」

 俺の言葉に不思議そうな表情を浮かべる生首を、俺はひょいっと持ち上げて腕に抱える。正直この状況はあまり気持ちの良いものではないが、手触り自体は女性らしい柔らかさで嫌じゃないな。とにかく、俺は生首を抱えて反応の一つに向かって歩き出すのだった。

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