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異世界から戻ってみれば異世界!?  作者: 緑野
第一章 水の惑星アエロイデス
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第一章4

「都市に着く前に、一つよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

 食事を終え、後片付けを済ませたころミトが声を掛けてきた。

「ヒトシ様の亜空間発生装置なのですが、それは人前ではお使いにならないほうがいいと思います」

「あ、やっぱり?」

 いやむしろ、俺はこの何の変哲も無いリモコンが、亜空間発生装置だという説明を信じちゃってるっぽいミトに驚きだよ。透視能力とか何かのセンサーとかで、これがただのリモコンだって気づくとか無いのかな・・・。

「そ、それもあるが、隠しても何かのセンサーとかでバレるとか無いかな?」

「たぶん、その心配は無いと思われます! 私のあらゆるセンサーを用いても、それがただのリモコンでしか無いように見えますので、実際に使って見せなければわからないと思います!」

 いや! ただのリモコンであってるよ!! ま、まぁ、そういう風に勘違いしてくれるなら願ったりかなったりなのか。

「それにしてもすごい技術です。こんなに小型な亜空間発生装置なんて通常ありえないうえに、ただのリモコンのように偽装してあるなんて・・・。本当にただのリモコンにしか見えません!」

「・・・(汗)」

 本当にバレてないんだろうな! むしろ、たんなるドジッ子属性なだけなんじゃないだろうか。これで演技だったとしたら、異世界のアンドロイドは化け物かって感じになると思う。

「と、とりあえず、この装置はなるべく使わないことにするよ」

「はい、そのほうがよろしいかと思います。万が一他人に見られれば、命を狙われるかもしれません」

「うぇ、マジで!?」

「これほどの技術であれば、世紀の大発明とも言えますので、もし心無い者に知られればこの技術を奪うためにどんなことでもしてくると予想されますよ」

「なるほどな」

 まぁ、魔法使いと知られるほうがもっと危険な気がするが、用心に越したことは無いということか。ミトがアンドロイドで本当に良かったな、出会ってたのが人間だったら俺はそいつを殺す必要があったかもしれない・・・。

「あの・・・ヒトシ様はその技術を公開されるのですか?」

「なんでそんなことを聞くんだ?」

 そもそも魔法だから無理だけどな。だが俺はそ知らぬ顔で聞き返し、ミトのその意図を聞こうとする。

「はい、おそらくその技術を公開すれば、ヒトシ様は巨万の富を得ることができるでしょう。ですがそのためには、高い地位とよほどの信頼のある人物を味方に付けなければ、逆に技術を奪おうとする者に、場合によっては国すら敵に回す可能性もあります。その技術は、それほどに価値がありながらも危険なものなのです。ですから、もし公開なされようとお考えでも、その危険性をご考慮いただきたいと思うのです」

「・・・」

 いつにないミトの真剣な表情に、俺は少し気おされながらもしっかりと頷いて返す。

「大丈夫だ、これは公開なんてしないよ。そもそも、俺にもどういう理屈でこの機械が亜空間を作ってるのかわからないしな!」

「そうなのですか!? でも、それはそれで良かったのかもしれません。技術だけでなく、ヒトシ様の脳すら狙われるかも知れませんからね」

 怖ぇ・・・やっぱりSFとかだと、脳を取り出して直接情報を引き出したり、ただ考えて答えを返すだけの機械にされちゃったりするのだろうか。

「これは、森で拾ってくれた俺のじい様が作ったもので、俺は使い方しか知らないんだ。じい様も死んじまったし、家も無くなってるから、もう再現するのは無理なんじゃないか」

 という設定にしておこう、いざとなったらこれをぶっ壊して、もう使えませ~んとかにすれば何とかなる・・・かな?

「おじい様がお亡くなりになってしまったのですか・・・」

「え、あ、うん、まぁその話はこの辺にしておこう」

「はい・・・」

 悲しそうな表情を浮かべるミトに、俺は罪悪感で頬が引きつってしまう。アンドロイド相手に、どんどん嘘を積み重ねていく俺の明日はどっちだ(汗)。

「それじゃとりあえず、いまのうちに必要なものは取り出しておくか。食料とかは、今日中に都市に着くなら出さなくてもいいよな。替えの下着と、あれとこれと・・・」

「護身用の武器は出しておいたほうがいいですよ~」

「え、マジ? これから都市に入るのに?」

「はい、基本的に私がお守りしますので大丈夫かと思いますが、いざというときの護身用はお持ちになっておいたほうがいいかと」

 護身用の武器を持ってるのがデフォとか、この世界の都市はどうなってるんだ? いや、アメリカとかだって懐に護身用の銃とか忍ばせてるらしいしな。いまだ日本の感覚が抜け切れてないだけか。

「じゃあ、こいつを腰に差しとくか」

 そう言って取り出したのは、ジャイアントワームを倒したときの野太刀ではなく、黒塗りの鞘に収まった80cmほどの打刀、現代で一般的に日本刀と呼ばれている物である。これもドワーフの鍛冶屋に無理言って作ってもらったもので、刃紋の無い無骨な作りだが(俺がドワーフにそこまで説明できなかった)、ドワーフの秘儀により切れ味と強度が両立されたすばらしい一品なのだ。個人的には日本人としての心を忘れないようにという思いが込めてある。

「それは実体剣ですね? 最近ではあまり見ることが無い武器ですが、まぁいざとなっても私がお守りするので大丈夫ですよ!」

 ミトの物言いが、なんとなくこれを役立たずといっているように聞こえるが、まぁ気にしないでおこう。どうせこれもこの世界では規格外の装備だろうし、無理にそのことを教える必要もないだろうしな。

「よし、これでいいだろう。それじゃ、向かうとするか」

 久しぶりに感じる腰の重みにも違和感は感じず、俺は軽く刀の柄を撫でると歩き出した。

「あ、ヒトシ様! お荷物は私が持ちます!」

「いやいいよ、たいして重くないし」

 そこで、ミトが慌てたように、先ほど取り出した荷物を持とうとするのを俺は軽く首を横に振って断る。だが、ミトは何故か悲しそうな表情で俺を見つめてきた。

「ヒトシ様・・・どうか、もっと私に頼ってください。私はヒトシ様の所有物なのですから、もっと色々と使って欲しいのです!」

「いやでも、女の子に荷物を持たせるとか、男としてどうかと・・・」

「私はアンドロイドです! アンドロイドは所有者様に尽くすために作られているのです・・・だから、お願いです・・・」

「うっ・・・はぁ、わかったよそれじゃこれ持ってくれ」

「はい! お任せください!」

 ウルウルと瞳を潤ませてこちらを見つめてくるミトに、俺は抵抗できずに荷物を渡すことにした。それを受け取ったミトは、パーッと表情を明るくして、嬉しそうにその荷物を胸に抱える。まったく、普通の女の子とはまったく反対に気を使わないといけないのは、ちょっと面倒だな・・・。


 そんなこんなとミトとの付き合い方を考えながらも、それから間もなくして俺達はようやく人の多く住むという都市へとたどり着いた。

「おお! あれが都市か!」

 俺の視線の先には、いくつもの高い塔のように立ち並んだビル群が薄っすらと見え、その周囲にはゴマ粒のようなものが幾つも、蜂の群れのように纏わりついてるように見える。

「はい、都市プリンキピウムです。ちなみにプリンキピウムとは古代語で『始まり』を意味するそうですよ」

「へぇ、始まりね・・・」

 たしかに、俺からすればここは始まりとも言えるが、随分と狙ったような名前だな。

「ここはこの付近の自然文化保護区と隣接する唯一の都市で、保護区から出てきた人、保護区へ入る人、どちらにとっても新しい生活の始まりになるから名付けられたらしいです」

「なるほどね、やっぱり俺みたいなのがここへ来ることが多いんだ」

「そうらしいですね。とはいっても、年に数人程度と聞きますが・・・」

 ふーん、そんなにホイホイと行き来する感じではないんだな。俺はそんな話を聞きながら、荒地と整地された土地の境目のような場所へと近づいていく。

「あ! ヒトシ様!」

「ん?」

 突然の声を上げるミトに、俺は前に進んだまま首だけ少し後ろを歩くミトへと振り向いた。と、そのとき、なにやらゴムの壁のような弾力のある何かにぶつかると、弾き飛ばされるように後ろへと尻餅をついてしまった。

「な、なにがあったんだ!?」

 俺は慌てて前を見たが、そこには何も無い・・・いや、よく見てみれば多少都市側が歪んで見える?

「ヒトシ様、都市とその外の間には透明な防御膜が張られているんですよ。ですから、都市に入るには指定の入り口から入る必要があります」

「透明な防御膜? これがそうなのか?」

 俺は起き上がってさきほどぶつかった辺りを触ってみる。すると、なにかゴムボールのような弾力で押し返してくる何かに触れた感触がした。どうやら、これがその防御膜というものらしい。

「都市の外には危険な生物が多く生息しています、ですが壁のようなものを立てては景観が損なわれてしまいます。そのため、一般的な都市にはこのような防御膜が張られているのです」

「なるほどな、ってそういうことは先に言え!」

「ごめんなさい~! 忘れてました!!」

 アンドロイドが簡単にそういうの忘れるなよ! と思うが、たぶんこの世界の都市では一般常識すぎてわざわざ言うことじゃなかったんだろうな。

「そ、それじゃ、その入り口っていうのに改めて向かおうか」

「はい・・・ここからでも見える、あの門のような場所ですよ」

 ミトが指差す先には、たしかに門のようなものが見える。まぁ、その周りは何も無いように見えるので、どこぞの凱旋門のような感じか。俺達はとりあえずそこへと向かって歩き出すのだった。

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