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異世界から戻ってみれば異世界!?  作者: 緑野
第一章 水の惑星アエロイデス
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第一章3

「そろそろお昼にしようかと思う」

「了解しました~」

 太陽が中天に差し掛かるころ、自分の腹のすき具合を確認して俺は昼飯を食おうとミトに伝えた。ミトはニッコリと笑みを浮かべながら、小走りで俺の隣へと立つ。

「それじゃ、オープンボックス・・・」

 俺は懐からテレビのリモコンのような物を取り出して、小さく唱えながらてきとうなボタンを押した。そして、何も無いはずの空間に開いた穴に手を突っ込むと、パンやら干し肉やら果物を取り出す。これらは、前の世界で魔王討伐の際に用意した食料の残りだ。

「はぁ~、相変わらずすごい機械ですね」

「そ、そうかな・・・」

 その様子を感心するように眺めるミトに、俺は笑みを引きつらせながら答えた。

「すごいですよ! 亜空間技術を個人で使えるレベルにまで発展させているなんて! 現在の最新技術でさえ、まだ宇宙船に搭載された亜空間航行装置が限界で、個人での使用は研究段階という話なんですよ!?」

「はは、そうなんだ・・・」

 実は科学じゃなくて魔法なんです・・・。なんでこんなことになっているかと言うと、ミトから離れてジャイアントワームを倒した直後、魔法の確立されてないこの世界で魔法を使うことの危険性をいまさらながら考えた俺は、途中で拾ったこのリモコンを『亜空間収納装置』に見立てることを思いついたんだが。バカの考え休むに似たりというか、そんな装置さえオーバーテクノロジーと指摘される始末である。ならば使うなとも思うが、一度魔法に慣れちゃうとなかなか止められないというか、そもそも水も食料も無い状態で4、5日も歩くのは無理なので使わざる得ないというか。まぁ、そんな感じでごまかせてるのか、ごまかせてないのかわからない状態でここまでやってきている。

「それじゃ、いただきます」

「えっと、い、いただきます」

 手を合わせて食事の挨拶(?)をする俺に合わせ、ミトもぎこちないながら手を合わせる。さて敷布の上に用意されているのはパンや干し肉や果物、それと金属でできたガラクタ。え? ガラクタなんて用意してどうするんだって? そりゃぁ食べるんですよ・・・彼女が。

「もぐもぐ・・・」

 俺は固いパンを千切って口に入れては、ゆっくりと噛んで柔らかくしながら、チラリとミトのほうを見る。

「(ベキ!)もぐもぐ・・・(グシャ!)もぐもぐ・・・(メキョ!)もぐもぐ・・・」

俺の目の前では、金属製の円盤に何かペイントされた看板みたいなものを、一口大に引き千切ったり(!?)、その華奢に見える手で握りつぶしたり(!!)、むしろそのままかぶりついたりして(!!!)、口に入れていくミトの姿。

「あ、あいかわらず、いい食いっぷりだね・・・」

「もぐもぐ・・・ありがとうございます!」

 いや、褒めてないけどね! 初めてその光景を見たときは、さすがに驚きで口に含んでたものを噴出してしまったものだ・・・。


 最初は俺達がガラクタ置き場から抜け出る際のことだった。

「そんなにいっぱいガラクタ持ってどうするつもりだ?」

「あ、はい! 私の修理の材料にしようと思いまして」

 ミトは両手いっぱい、どころかその数倍のガラクタを抱えて持って行こうとしていた。

「へぇ、はたから見れば、もう直ってるように見えたんだけど」

「いえ・・・これはあくまで外側だけ直した応急処置なので、骨格部など内部の修理を完全に行うにはもう少しお時間が必要になります」

「そっか、それじゃ無理させるわけにも行かないし、そのガラクタは俺が持ってくよ」

「そんな! ヒトシ様にそのようなお手を煩わせることはできません!」

「気にしなくていいよ、ほらこうやって亜空間に仕舞っておけばいいから」

 それを修理に使うと聞いたので、必要な部品などをガラクタから拝借して利用するのかなと思った俺は、勝手に納得して亜空間にそのガラクタを仕舞いこみ、俺達はガラクタ置き場を後にしたのだ。まぁ、それがあんなことになるとは。


 ガラクタ置き場を抜け出してしばらくして、太陽が真上に来たことに気づいた俺は、昼飯を食うことにした。

「そういや、ミトはメシとか食うのか? 人間の食い物なら結構あるから分けてやれるけど?」

「はい、本来は私のようなアンドロイドは専用のエネルギーカプセルを摂取してエネルギーを維持するのですが、そのような物資が無いときのために生物用の食事も取れるようになっています。まぁ、かなり効率は落ちてしまうのですが」

「そうか、じゃあ一緒に昼飯にしようぜ」

「わかりました!」

 その日も俺は、亜空間からパンや干し肉などを取り出して食事にしようと思っていたのだが。

「ヒトシ様、さきほどの壊れた機械類はございますか?」

「ん? そりゃあるけど・・・今出すの?」

「はい、お願いいたします~」

 ミトの言葉に俺は首を傾げつつも、言われたとおりガラクタを取り出した。

「全部出すのか?」

「あ、今日の分はそれだけで十分です」

 まだこのころは、昼の休憩中にでも修理するんだろうなどと考えていたわけだ。俺はそれ以上気にせずに、お昼の挨拶をしてパンを口に入れ、水筒の飲み口に口をつけたそのとき!

「(バキ!)もぐもぐもぐ・・・」

「ぶふうううぅぅぅ!!!」

「うひゃあ! ヒトシ様、大丈夫ですか!?」

 いきなりガラクタを砕いたかと思えば、それを口に運んで咀嚼し始めたのだからたまらない。俺は口に含んでいたパンと水を一緒くたに、思いっきり噴出してしまった。しかも、鼻に入るわ、喉の気管に入るわで苦しいのなんの。あまりに何気ない表情で、まるでパンを食べるような感じだったから、余計その異質さが浮き彫りにされたせいだ。

「げほ! げほげほ・・・ぅぅ。大丈夫かはこっちの台詞だろ!」

「?」

 俺が突然噴出したものだから、ミトも驚いた様子で慌てて俺の背中をさすってくれた。いや、原因はコイツだけどな。俺の言葉には、わけがわからないとばかりに首を傾げて困った笑み。

「いや、お前、今食ってただろ! それ!」

「はい、食べましたが、なにか拙かったですか? もしかして、ヒトシ様にとって大事なものだったとか!? ああ! 申し訳ありません! いま何とか再構成ができないか・・・」

「いや、別に大事な物とかじゃなくて、つうかそれ拾ったのお前だし。そうじゃなくて、なんでガラクタなんて食うんだよ!」

「それはもちろん、身体の修理のためですよ~」

「え、お前って、金属とか吸収して自分の身体にしちゃったりできるわけ?」

「はい、少しだけ違いますが、似たような感じでしょうか」

 半信半疑で聞いた俺に、あっさり頷くミト。俺は開いた口が塞がらないというのを、初めて経験した気がする。ファンタジー世界ですら、ここまでの驚きは無かった。結構、魔法とかすんなり受け入れられたし。

「えーとですね、金属をこう、もうもぐ・・・身体の中に入れますと、体内のナノマシンが分解してくれまして。それを材料に新しいナノマシンを生成し、故障部分などの修復に使うのです」

 そう説明しながらミトは、再びガラクタを口に入れてもぐもぐと咀嚼し、やがてゴクリと飲み込んでしまった。いや、硬い金属を咀嚼するとか顎の力はどうなってるんだ。それはともかく、本当にガラクタを食って身体を直すらしい。この世界、けっこう無茶苦茶だな。だがおかげでろくな科学知識の無い俺が所有者でも、ミトは勝手に自分で自分を維持してくれるんだから、文句を言う筋合いは無いか・・・。

「そういや、さっき再構成とか言ってたけど、一度食ったやつを元の形に戻して手から出すとかできるわけ?」

「いえ、できませんね~」

「できないのかよ!」

「申し訳ありません、言ってみただけです」

 いつもネジを食べながら、いざってときに武器とか再構築して戦うハードボイルドな人を期待しちまったじゃねえか!


 そんなこんなでここ数日、ミトは俺の食事の時間になると一緒に休んで、ガラクタを食べているというわけだ。

「ほら、ガラクタばっかじゃなくて、干し肉も食え」

 ちなみにミトは、干し肉なども普通に食べれる。たんぱく質は人工皮膚などに使えるそうだ。

「ありがとうございます、でも貴重な食料を私などに分け与えなくてもよろしいのでは?」

「気にすんなって、食料は十分にあるし、今日中には都市に着けるんだろ?」

「はい、わかりました。都市には夕方になるまえにたどり着けると思います」

 なんだかんだと誰かと一緒に食べる食事は楽しい。ミトのこういう人間っぽさは、俺にとっては悪く無いものだと思えるのだった。

今回で都市に着く予定だったんですけどね(苦笑)、次には都市に着けると思います。そうすれば、SFっぽさも出せてこれる・・・かな?

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