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ロボットコレクション  作者: 藤村文幹
ロボット&キャラクター紹介編
5/7

ガンアタッカー・ドラグーン(世界観1)

ファランクス2と同じ世界観です。

 コージは格納庫の手すりに掴まり、宙に漂いながら自分が乗る予定のマシンを見つめていた。

 格納庫は通常、人工重力が切られている区画にあるため非常に危険で、必要が無ければ来るものはあまりいない。現在は航行中今まで一度も出撃がないので整備士すらおらず、コージ一人だけがファプル・ライトの光に照らされていた。

「どうしたんだよ、お前」

 コージは後から声を掛けられたが、振り向かない。

「言わなくてもわかるでしょ?」

 振り向かずにコージは答える。10時間前も、同じ場所で同じ質問に答えたばかりだったからだ。質問者も同じ。

 質問を投げかけたのはコージと同じマントをした青年だった。ドラグーンに乗る者にのみ許された、死に装束。特殊な力場を出して衝撃から守る、簡易な防御手段だ。パイロットスーツの上から着る事でその効果を向上させる。艦に乗ってる最中は、常に着ていなければならない制服だ。

「不安だから、か? 誰でも一緒だろ。だからみんなで騒いで誤魔化してるんだがな」

 ドラグーン乗りは連帯感を持っている。同じ艦に乗る、他の誰とも共有できないそれは、マシン一つ与えられて孤独な死地に向かう者だけが得られるのだ。

 だが、コージはまだ持っていなかった。

「僕は、混じれない」

 今回が初航行で、出撃は一度も無い。だから、他のドラグーン乗りと一緒にいても居心地が悪いのだ。

「気にするなよ。すぐに、混じれる。お前だって、ドラグーン乗りなんだから」

 青年――マチス・バーナードがゆっくりと漂いながらコージの隣に来て手すりを掴む。

「まだ出撃してない」

 マチスをちらりとも見ず、コージは言う。

「乗ってりゃいつか出るさ」

 腰のホルダーに固定していたドリンクパックを取り、コージに差し出しながらマチスは答える。

「死ぬかも」

 受け取って口答え。

「お前の腕なら大丈夫」

 マチスはハハ、と笑って続け、

「おれだって5回出てるけど死んでないんだぜ?」

 親指を立ててマチスはコージに笑いかける。

「だからさ。時化たツラしてないで、騒ごうぜ」

 コージは返事を躊躇いながらドリンクに目を向ける。ミカンがプリントされた空色のパッケージ――オレンジジュース。

 マチスが返事を聞く前、コージがパックを空ける前。格納庫が赤色に染まり、警報が鳴った。

『バグスの襲来』

 通信士の通達の一瞬前に揺れ。

 通信士がスピーカーから喚き散らす中、マチスはコージの肩を叩いて

「終わったら一杯やろうぜ」

 とだけ、言った。



 狭いコックピットの中、コージは息を切らす。自然と呼吸が焦り、鼓動も高鳴る。初めてのワープカタパルト順番待ちだった。

 耳元のスピーカーから他のドラグーン達がカタパルトから飛ばされている様子が嫌でも聞かされる。

 目が霞む。緊張で脚が震える。コージはそんなときにどうすればいいか既に聞いていた。右肩を強く押さえる。それだけだ。

 コージが抑えた下で、パイロットスーツから無針注射器が稼働し、数十種の薬品が混合された液体が注入される。視界ははっきりとし、時間がゆるやかに感じられた。集中すれば何でも出来そうな万能感がコージを支配する。

 他のドラグーンでも同じ光景が繰り返されている。だれしも、恐怖を消すには薬が一番簡単なのだから。

 やがてコージが出撃する番になる。待っていたのはほんの2分程度なのに、コージには十倍にも長く感じられたのは薬の所為だけではないだろうと、コージは思った。

『コージ・ムラサメ機、ワープカタパルトに入ります。準備はよろしいですか?』

「はい」

 コージは自身の返答に驚愕した。常の自分ならどもっただろうに、驚くほど簡単に返事ができたのだ。

 これも薬の力だろうか、とカタパルトまで運ばれる揺れを感じながら考えた。

『コージ・ムラサメ機、状態良好。ワープカタパルト準備完了。コージ・ムラサメ、カタパルト発射権を譲渡します』

「アイハブ」

 全天周囲モニターが灯る。真ん中に『READY』と大きく表示されていた。

「コージ・ムラサメ、出ます」

 左コントロールレバー側面にあるボタンを左手親指で押した。モニター全天が光の粒で覆われて行く。瞬き数回の内に格納庫の景色は見なくなった。光の粒子が輝きを増していき、何かが震える音が大きくなる。光の粒子が集まりだしてから何回目か瞬きをコージがすると、音と光がかき消え、モニターは暗い宇宙を写し出していた。

「ワープ成功……」

 独り言。だれも答えないのは艦からどれほどの距離を離れたからか。

 何もない景色に数瞬だけ呆け、意識を取り戻す。敵影無し。ならば次の場所に急がなくてはならない。

 右のコントロールレバーから手を離し、多少焦りながらレバー横にあるワープレバーを力一杯引いた。

 再びモニターは光の粒子で埋め尽くされ、一瞬で景色が再び変わる。次は艦の直上だった。周囲では戦闘が始まっている。テレビで見たことのあるファランクスが戦っていた。

『コージ・ムラサメ機確認しました。直ぐに艦直上ハッチから戻って下さい』

 モニターにハッチまでのルートが赤いラインで表示された。周りの戦いを無視してコージは早急にハッチまで機体を移動させた。再び見慣れた格納庫に入り、予め言われていたようにワープカタパルト前にある金具に機体を引っかけた。

 敵がどこからワープさせてくるのか、解析ができない。だから、こうやって虱潰しに沢山のドラグーンをワープさせて探る必要があるのだ。そしてもしワープした先に敵がいれば、3分以上、帰還しなければそこに何かあると判断され、次のドラグーンが送られる。それでも戻ってこなければ、複数のドラグーンが送られる。援軍が来るまでは、単機で凌ぐより他はない。そういう、戦いなのだこの戦場は。

『コージ・ムラサメ機、頭部交換に入ります』

 モニターがブラックアウトし、機体が揺れる。30秒も経たない内に通信。

『コージ・ムラサメ機、頭部交換完了。ワープカタパルトに入ります。準備はよろしいですね』

 通信士は返事を聞かなかった。

『ワープカタパルト準備完了』

 機体の状態を欠片も調べなかった。

『コージ・ムラサメ、カタパルト発射権を譲渡します』

 モニターが灯る。

「アイハブ」

 コージは答え、左レバーの決定ボタンを押してワープした。

 光が収まりホワイトアウトしたモニターが周囲を写し出す。今度は何かある。1080°全方向に、敵がいた。

 人型なのに太く丸いバグスのビートルタイプがいっぱい。細くて小さいモスキートタイプが数え切れない。大きく細長いアーモンド状のバグスの戦艦、ケイジウッドが一つ。そして、壊れて宇宙を漂う、ガンアタッカー・ドラグーンの残骸。

 コージにはそれからの記憶は、ない。


 気がついたときはまだドラグーンの中だった。周囲にはバグスの残骸しかない。大小様々で、ケイジウッドの大半が形を残したものもある。

 コージは震える手でワープレバーを引いた。



 後に聞いた話だ。コージはビートルやモスキートの攻撃をかいくぐり、ケイジウッドを撃破。データには逃げていくビートルやモスキートが写っていたと、コージは聞いている。

 あの残骸は、マチスのドラグーンだったことも聞いた。

 仲間のドラグーン乗りに聞いたら教えてくれたのだ。そのドラグーン乗りはコージにビールの入ったジョッキを差し出した。

「帰還おめでとう。これでお前も俺たちの仲間だな」




GA-001 ガンアタッカー・ドラグーン


 搭乗型攻撃機。ファランクスとは違い、直接機体に乗り込む。大型で遠隔操作ではないので艦船から離れての行動が出来る。攻撃部隊をワープさせてくるバグスの戦艦を攻略するために開発された“決定的な”対抗手段。

 機動性が高く、戦艦を倒せる火力をもつ攻撃手段は高速機動しながら使用する必要性から格闘をメインに選択されている。随伴機に対抗するための射撃武器と、すれ違いざまに斬る背部ブレードユニット、切り札の脚部爆弾が主装備。

 ワープカタパルトによって敵艦が存在すると予想される位置に飛ばされ、いなかったら機体に装着されているワープユニットによりワープで帰還する。敵艦が存在した場合、そこで敵艦を破壊してから帰還する。またワープ用の燃料は帰還用の一回分しか搭載されていない。

 ワープユニットは頭部に付いており、頭部を破壊された場合は帰還が難しくなる。

 ガンアタッカー・ドラグーンのパイロットはファランクス系オペレーターになったことの無い者が選ばれる。理由としてファランクス系を操作しすぎると、感覚が麻痺してしまうことにある。何度落とされても死なず、またすぐに新しいファランクスで出撃できるためだ。

 なお、運用の特徴として敵母艦位置は大まかにしか分からないので、アタリを付けて数機ほど試しにワープさせる。ワープ先に何も無かったら帰還させ、帰還してこなかった機体のいる地点に2,3機まとめて送る。それでも帰ってこなかったら全てのドラグーンを送る。最初のドラグーンは後援がくるまで孤独に戦うのである。



コージ・ムラサメ

 ドラグーンのパイロット。ファランクスに載ったことのない新人で、ゲームセンターで勧誘された。

 シミュレーターでの成績は随一だが、数を用意されたドラグーンのパイロットの一人であることには変わりない。

 内向的で内気、コミュニケーションが苦手。20才。


 なお、ドラグーンのパイロットは専用の黒いマントを着用することが許されており、艦内では強制着用を命じられている。

ゲームみたいな戦争と同じ戦争で起こっていることです。

※描写を少し修正しました。

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