コモン
その日は雨が降っていた。
誰もが鬱蒼とした気持ちを抱えるようなどうでもいい雨だった。
雪が降るほど寒い訳ではないが、その日は十分に寒い日だった。
ごみが散らばり朝方や夕方になると汚いカラスが飛んできて、やはりゴミを散らかしていくような路地裏だった。
そこで、僕は一つの人形を拾った。その人形はとても可愛らしい人形でダイヤモンドを散りばめた様なキラリキラリとした眼をしていて、まるで生きているかのような温もりをかんじた。
それはとてつもない偶然だったのだろう、あるいは出会いはいつも必然であるとも言うが。
当然の様に僕はその人形を家に持ち帰った。
その人形──彼女を家に持ち帰った僕はいつもの用に窓をあけシャボン玉を空に流した、シャボン玉は曇天のなか不思議なぐらい割れずに高く飛んで行きその鬱蒼とした雨空に浮かぶ雲を吹き消した。
それは僕の仕事、美しくない世界であれば変えても良いという全てからのお達し。何もかもに疲れた人とすれ違うといつも思う、なぜ世界を変えないのかと。
晴れ渡った空に彼女は喜んだみたいだった、彼女もまた彼女の持つ世界に疲れていたようだった、キラリキラリとした美しい瞳からは涙のような物が流れた。そんな気がした。
世界は思っている以上に簡単であると気がついたはのはいつの頃だったか、たぶんあいつが居なくなってからだ。
物事は簡単な事象の複雑な絡み合い。
それは真理元を辿ればものすごく簡単なものだったんだ、世界なんて。
さて今日は何をしようか、どうせ暇だし彼女と遊んだ。
人形のくせに、どこかに行こうとしたので枷を嵌め鳥かごにしまいこんだ。
叱りもした。
お湯をかけて殴ったら泣かなくなりました。
いつの間にか温もりが感じられなくなり、気がついたら彼女は人形になっていた。