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祟られ体質の俺、疫病神仕込みの呪術で、世の中の不幸を無双します!  作者: 書仙凡人
離島での不幸編

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二十の巻 極秘交渉

    [二十]



 幸太郎が小早川から自白を引き出した後、空洞内にいた者達は皆、そこで待機となっていた。

 女達の亡骸はそのままになっており、犯人である小早川は、刑事である春日井の手により、手錠を掛けられ、尚且つ、逃げられぬよう、ロープで拘束されていた。

 そして、貴堂沙耶香達は地元警察に連絡し、今はそれらの経緯を説明しておるところであった。


「……はい、そういうわけですので、至急よろしくお願いします」


 貴堂沙耶香はそう話すと、スマホを耳から離した。

 そこで、皆に視線を向ける。


「今、警察に連絡をしました。皆様はここで、暫く待機をお願いします。それと、遺体には触れないようにしてください。加えて、向こうの穴にも近づかないように、お願いします」


 この場にいる者達は皆、沈痛な面持ちで、その言葉に頷いていた。

 事態が事態なだけに、遺族は辛いが、従うしかないようじゃ。

 するとそこで笑い声が響いたのじゃった。


「あはは、お前達は哀れだねぇ! 身内を殺した奴に、復讐も出来ないなんてな。おい、知ってるか? この国は法治国家だ。秩序の為に、殺された者には人権がなく、生きている犯人には温かい人権があり、手厚く保護されるんだよ。お前達は、最後まで俺に、負け続けるんだ! こりゃいいや。どうだ、悔しいか!」


 この場にいる者達は、怒りの形相を小早川に向けた。


「ヒドイ! 貴方は本当に悪魔よ! お姉ちゃんを返して!」


「クッ、貴様ァ! いけしゃあしゃあと!」


「許さんぞ、よくも妹を!」


「こんな最低な奴に妹が殺されたなんて……あんまりだわ!」


「こんな奴に、沙織さんが!」


 小早川はそれらの怒号を聞き、ニヤニヤと笑っていた。


「そうだ、もっと怒れ! そしてスッキリしろよ、クソ共が! かかってこいやぁぁ!」


 そこで、貴堂沙耶香が小早川に近づいた。


「貴方……いい加減に黙りなさい!」


 貴堂沙耶香は毅然とした表情で言い放った。

 しかし、今の小早川には効果がなかった。


「いいや、黙らないねぇ。それにしても、アンタも美しい女だねぇ。そういう、強気で美しい女も悪くないよ。そうだ! 俺はいつまでも綺麗でいられる方法を知ってるんだよ。どうだ、試してみるかい?」


 小早川はそう言って、歪んだ笑顔を貴堂沙耶香に向けたのであった。

 流石の貴堂沙耶香も、ワナワナと握り拳を作り、憤っていた。


「あ、貴方ね……」


「ぐっ、キサマァ!」


「そうだ、もっと怒れよ! クソが!」


 春日井が血相を変えて握り拳を作り、小早川に手を出そうとしていた。

 じゃが見かねたのか、幸太郎がそこで、小早川と春日井の間に割って入ったのである。


「どけッ、三上さん!」


 春日井は物凄い形相で、幸太郎を睨んだ。


「はいはい、やめ、やめェ! 春日井さん、まずは冷静になりましょうか。コイツの思う壺ですよ」


「しかし、だな……ぐぐッ」


「貴方は刑事だ。なら……今はどうすべきか、わかっているのでは?」


 春日井は理性と激情の狭間で揺れ動いていた。

 だが程なくして、春日井は肩の力を抜いたのじゃった。

 起きた獣を、なんとか理性で押さえつけたのじゃろう。 

 幸太郎はそこで他の者達に視線を向けた。


「それと皆さんも、色々と思うところはあると思いますが、とりあえず今は、このクソ野郎から離れてください。コイツの言う事はどうせ、負け犬の遠吠えなので。コイツに付き合って暴行すると、もれなく不幸が付いてきますよ。冷静にお願いします。皆様には家族がいるのですからね」


 すると小早川は、皆を嘲笑ったのである。


「負け犬の遠吠えだって? ならもっと吠えてやるよ。俺がお前達の家族を殺したんだよ、さぁ俺が身動きできないうちに、仕返しに来いよ! 腰抜けが! それと良い事を教えてやろう。この壁の工事をしたのは、西岡さんの会社だ。俺が依頼したんだよ。自分のポケットマネーでな。西岡さんも快く引き受けてくれたよ。なんせ、手抜き工事で3000万だもんな。そりゃボロイ商売だ。役所に内緒で、理由は聞かないでくれと言ったら、ニヤニヤ笑って引き受けてくれたからな。コイツも共犯みたいなもんだぜ! NOC建設は色々と裏業界では有名だからなぁ」


 もう開き直ったのか、小早川は色々と暴露を始めた。


「な!? ふざけるな! 俺はこんな事になっているとは知らなかったぞ! 大体、俺は依頼主であるアンタに従っただけだ! 仲間みたいに言うな!」


 西岡は慌てて弁明した。

 まぁ確かに、こ奴は結構危ない橋を渡ってそうじゃから、こういう仕事はやってるじゃろうな。

 それはさておき、幸太郎は小早川に向き直り、そこで微笑んだのである。


「必死だねぇ……小早川さん。でも、不幸になるのはもう、お前だけでいいんだよ。西岡さんはともかく、他の方々はもう、十分苦しんだんだ。お前のせいでな。あ、そうそう、お前さっき面白い事言ってたな。『秩序の為に、殺された者には人権がなく、生きている犯人には温かい人権があり、手厚く保護されるんだよ』って。良いこと言うねぇ。確かにその通りだ。この国では死んだ者には人権がない。既にいないんだからな。法律は生きてる奴等の為にあるモノだ。死者にはない。だから……殺されれば、顔も名前も晒されるし、犯人はご丁寧にも、法的拘束力で生きながらえる事すら出来る。場合によっては、報道機関は名前まで伏せてくれる始末だ。おまけに、警察は逮捕の際、望めば顔まで隠してくれるしな。アンタの言う通りだよ。でも、俺は思うんだよね……簡単に死んじまったら、苦しみを返せなくなるじゃんて。苦しみや喜びは生きてるからこそ、味わえるモノだ。だからさ……お前みたいな人の心を持たない獣には……それこそ、死んだ方がマシだ、って思えるくらいの不幸が降りかかるべきなんだよ。まぁ精々、余生を苦しむがいいさ。十数人は殺したんだ。法治国家と言えども、どうせ、極刑は免れん。お前にはこの先……そういう未来が確実に待っているからな。それ意外にも……様々な災難が降りかかるだろうしね。自分の積み重ねた業の深さを思い知るんだな」


 小早川の呼吸が荒くなる。

 幸太郎の言葉に動揺したんじゃろう。


「な、なにが、そういう未来が待っている、だ! ふ、ははは、俺はこの女達よりも長生きするんだよ。馬鹿が!」


「あ、そうそう……お前に見てもらいたいモノがあるんだよ」


「見てもらいたいだと?」


「ああ、彼女達が来た通路を見てみなよ。何が見える?」


 幸太郎はそう言って、女達の亡骸が這い出てきた、暗い壁の穴を指さした。

 小早川はそこに視線を向ける。

 と、その直後、小早川孔明は恐怖のあまり、顔を引き攣らせ、発狂したのじゃった。


【ウワァァァァァ! く、来るなぁァァァ! 来ないでくれェェェ! ギャァァァ!】


 どうやら、見てはならぬモノを見てしまったようじゃな。

 まぁ多くは語るまい。

 沢山の陰の気を取り込んだのじゃ。

 こ奴には見えるであろう。

 亡者達の怨念の籠った姿がな。

 この後、小早川には死んだ方がマシだと思えるほどの不幸が襲い掛かるじゃろうのう。

 さて、この奇妙なサバイバルイベントも、コレで一応の幕は降りたようじゃ。

 ちなみに、上にいる他の参加者達は、まだそこで待機となっておるようである。

 上にいる者の中にはこの亡骸の家族もいるが、今回は殺人事件という事で、現場に足を踏み入れないように言われておるとの事じゃった。

 春日井が言うには、現場保存だそうじゃ。

 幸太郎も素直に従っておるので、これが今の世の理なのじゃろう。


    *


 サバイバルイベントはその後、警察の者達が来て、規制線などを張ってゆき、八王洋館ホテルは立ち入り禁止となった。

 そして、イベント関係者は皆、警察署にて事情聴取を受ける事となったのじゃ。

 まぁ犯人がはっきりしとるので、それらはすぐに終わったが、色々とこの後が大変じゃろうな。

 じゃがそれに当たり、貴堂沙耶香達はイベント参加者にお願いした事があった。

 それは何かというと、『警察に事情を聞かれたら、壁が崩れて、そこから遺体が出てきたという事にしてほしい』というモノであった。

 流石に、死体が動いて小早川が自白したとは言えぬからである。

 参加者達も、貴堂グループの口裏合わせには従っていた。

 まぁこれには、リゾートの開発権を与えるという餌をぶら下げていたので、貴堂グループとしても、少しばかり想定外の事だったのじゃろう。

 というわけで、まぁ色々とあったこの不幸イベントも、これにてようやく終わりとなったのであった。

 で、幸太郎はというと、今は貴堂沙耶香に呼び出しを喰らい、とある部屋にて1対1で話をしておるところじゃ。

 ちなみに、ここは八王島にある宿泊施設の1室であった。

 景色の良い、今風の最新ホテルといったところかのう。

 これらは貴堂グループが手配したホテルらしく、他の参加者達も、ここで宿泊のようである。

 理由は、警察の取り調べとかもあり、色々と時間を食ったせいで、帰る手段がなくなったからであった。

 そんなわけで、今晩は一泊して幸太郎も帰るようじゃ。

 まぁ厄落としも終わったので、今は不幸もそうは来ぬじゃろう。


「さて……約束通り、1対1での極秘交渉といきましょうか。まずその前に、貴方が呪術を使えたとはね」


「ええ、仰る通り、私は少々、方術の類を使えるんですよ。貴方もそうなんでしょう? 貴堂沙耶香さん」


 貴堂沙耶香は幸太郎をジッと見据えていた。

 何かを探るような感じじゃったのは言うまでもない。


「へぇ……という事は、ワザと、私に見せる為に呪術を使ったって事かしら?」


「はい、仰る通りですよ。私も非常に困っている事がありましてね。それもあり、手の内を見せておいた方が、信じてもらえそうな気がしたモノですから」


 すると、貴堂沙耶香は面白くなさそうに溜息を吐いた。


「フン……なるほどね。でも……お陰で大変だったわよ。貴方の所為で、色々と根回ししなくちゃいけなくなったから。おまけに、高度な反魂の術まで使えるとはね……でも、アレは頂けないわ。反魂の術は、私達の呪術業界では禁忌とされてるのよ。後で私も、それについての報告をしなくちゃいけないから、頭が痛いのよ。本当に、なんて事をしてくれたのかしら……」


 幸太郎は申し訳なく思ったのか、深々と頭を下げた。


「すいません。でも、私は呪術業界に身を置いてないので、その辺の事情は分からないのです。今知ったところですから」


「呪術業界に身を置いてない? という事は潜りの呪術者って事ね。まぁいいわ。で、私に用があると言ってたけど、何なの? お金に困ってて、実入りの良い、裏の仕事が欲しいとかかしら?」


 幸太郎は首を左右に振った。


「いや、違います。非常に申し上げにくいのですが……お祓いをお願いしたいんです」


「は? お祓い? どういう事?」


 貴堂沙耶香は怪訝そうに眉を寄せた。


「おい、疫病神……出て来い」


 呼ばれたので姿を現そうかの。


「ほほほほ、そういう事か、幸太郎よ。この女子に我を祓ってもらうつもりか。じゃが……うまくゆくかのう」


「な!?」


 するとその直後、貴堂沙耶香の顔が引き攣ったのじゃった。

 突然の登場に驚いたようじゃな。


「な、なに……あ、貴方……幽霊……いや違う、何よこの霊力! まさか……コレって……」


 幸太郎はそこで土下座をし、貴堂沙耶香にお願いをした。


「貴堂沙耶香様! お願いです。どうか、この疫病神を私から取り除いてくれないでしょうか! この通りです。もうコイツの所為で、私の人生は滅茶苦茶なのです! お願いです、助けてください!」

 

 じゃが、貴堂沙耶香の芳しくない声が、そこで響いたのじゃ。


「ム、ムリよ……こんなヤバい霊力の存在、私じゃ無理! これ……祟り神じゃない! なんてモノに憑りつかれたのよ!」


 そして、幸太郎の咽び泣く声が、この部屋に響いたのであった。


【そこをなんとかぁぁ! 貴堂沙耶香様ァァァ!】と―― 

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