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祟られ体質の俺、疫病神仕込みの呪術で、世の中の不幸を無双します!  作者: 書仙凡人
離島での不幸編

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一の巻 不幸なる者

    [一]



 この世に生きる全ての生命には、必ず不幸が訪れる。

 それは、この世に生を受けた以上、決して逃れられぬ宿命でもある。

 じゃがそれも、幸福を知ってしまったが故に、そう感じるモノでもあるのじゃがな。

 但し、何が幸福で、何が不幸なのか……それは体験した生命の物差しによって変わるので、明確な線引きはない。

 それが世の理じゃ。が、しかし……それは通常ならば、と付け加えねばなるまい。

 この世には、誠に不思議な縁というモノが、確かに存在するからじゃ。

 本当に稀にじゃが、そういった不幸を司る疫病神のような存在に魅入られてしまう者も、またいるのじゃよ。そう……稀にの。

 そして、そういった存在に憑りつかれてしまった者は……これまた非常に数奇な運命を歩む事となるのじゃ。

 さて、前置きが長くなったが、そろそろ本題に入ろうかのう。

 今、ここに、そういった不幸の神に愛された1人の若い男がいる。

 その名を三上幸太郎。年は24歳。今は、そこそこ大きな地方都市に住んでおる男じゃ。

 親に幸せの一文字を入れられておるが、その実は、不幸の神に魅入られた男じゃった。

 見る者が見れば、可哀想なほどじゃろうの。

 唯一の救いは、外見くらいか。

 この男、なかなかに体格もよく、精悍な顔付きをしているので、女子(おなご)にモテそうな見た目だが、そんな気配は微塵もない。

 おまけに、長年の不幸に慣れてしまったが故か、表情に覇気もなく、明るい活動的な雰囲気も全くないのじゃ。

 その所為かわからぬが、折角の男前も搔き消すほど、暗いマヌケ面にも見えるのである。

 言うなれば、惜しい男であった。

 上背も180cmくらいはあり、程よい筋肉質な身体をしているので、頼もしい男に見えるのじゃがのう。

 やはり、不幸の神による力が強過ぎるのじゃろうか。

 この男には、それらの良い面を全て掻き消すほど、不幸の気が発せられているのじゃ。

 幸太郎を見た幸福な者や普通の者達は、恐らく、こう思うのじゃろう。


(なんだこの男……なんとなく嫌な感じがする奴だな……)と。


 これは仕方あるまい。

 なぜなら、そういった者達は直感的に、不幸の力によって、そう捉えてしまうからである。

 幸太郎が悪いのではない。

 全ては、幸太郎に憑りついている疫病神の所為なのじゃ。

 哀れなり、幸太郎。しかし、不幸の神も、なぜこうなるのか理解はできぬのじゃよ。

 さて……遠回しになってしまったが、これは……そんな不幸の神に魅入られた青年の物語なのである――


 ほら……今もそこで、幸太郎は周囲に不幸を撒き散らしているぞ。

 スーツ姿の幸太郎が出勤すると、小太りな中年の社長が、神主を伴って会社の玄関前におり、今まさに息巻いておるところじゃ。

 幸太郎が勤めておるのは、中小企業と呼ばれておるモノだそうじゃが、そこそこ大きい建物じゃった。

 それもあり、沢山の従業員もいた。その数、100名ほどかの。

 そして、そんな従業員達も今、驚き(まなこ)で固唾を飲み、この状況を眺めておるわ。

 ほほほ、朝一番から修羅場じゃな。

 今日は快晴だというのに、幸太郎はいきなり不幸に見舞われて大変じゃのう……。 


「神主様! コイツだ! コイツが昨日話した悪魔だ! 早くお祓いをしてくれェェェ! コイツが入社したせいで、当社の売上は右肩下がりだ! コイツの所為で得意先に契約切られた上に、それを聞いて私が車で事故っちまった! 息子は大学受験に失敗して、娘は婚約破棄された! おまけに、この間の税務調査の時、コイツの余計な一言で、折角の裏帳簿が見つかってしまったんだよ! 追徴課税と延滞税と重加算税で、我が社は火の車だっちゅうねん! どんだけ我が社に損失を与えるんだァァ! こんな悪魔みたいな奴に、私の会社の敷居を跨がせてたまるかァァァ! さぁ一刻も早く、お祓い始めてくれェェェ!」


 神官服に身を包む神主は、やや引き気味にお祓いに取り掛かった。


「は、はい、畏まりました。ではこれより、お祓いをさせていただきます。かけ~まくも、かしこき~」


 その様子を見て、幸太郎はやれやれと溜息を吐き、小さく呟いた。


「はぁ……またいつものか。もうそろそろ来る頃かなとは思ったが……」


 まぁでも、今回は長かった方であった。

 幸太郎も一応、半年は勤め上げたからじゃ。

 いつもなら、3カ月くらいで周囲に不幸が襲い掛かるのにのう。

 ()に恐ろしきは、幸太郎に憑りついた不幸の神の力であろう。

 しかし、案ずるではない。

 幸太郎はこういう時に備え、すぐに出せるよう、常にあるモノを用意してるからである。

 お、ようやく、ソレを出すようじゃぞ。いよいよ出番じゃ。

 幸太郎は鞄からソレを取り出して地面に置いた。


「社長……今までお世話になりました。ここに辞表を置いておきますね。では、今までありがとうございました」


 小太りな社長はその言葉に耳を貸さず、幸太郎に向かって一心不乱に塩を振りまき、血走った眼で吼えていた。


「悪霊退散! 悪霊退散! 悪霊退散!」


 哀れな、不幸の連鎖よ。

 そして幸太郎はというと、残念そうに踵を返し、この会社を後にしたのであった。

 幸太郎はまたもや事実上のクビになったようじゃのう。

 さてさてどうなる事やら――

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