邂逅の理
おはようございます!
今回は勇者登場回になりますネタバレだという声が聞こえてきそうだけどまぁまぁ
実はメインキャラを先に出しておこうと思ったら必然的に勇者を早めに出さなきゃいけなくなったんですよね
それではご覧ください。
ギルド登録から一ヶ月。
俺の日常は、驚くほど単調な「作業」の繰り返しとなった。
いくつかの依頼を効率よくこなし、昇級試験も最低限の手間でパスした。今、俺の胸元で揺れているのは中級の証であるプレートだ。周囲からは「期待の超新星」だの「無傷の死神」だのと勝手な二つ名で呼ばれ始め、心の底から「コンニチハ」と挨拶が聞こえてきそうなほど恥ずかしい思いもしたが……そんなことは横に置いておこう。
今日も今日とて、俺は少し足を伸ばした深緑の森で、指定された魔物の間引きを行っていた。
「……一、二。これで十体目か。今日のノルマは終わりだな」
指先から放たれた不可視の熱線が、魔物の脳幹を正確に撃ち抜く。
断末魔の叫びすら上げさせない。物理法則に基づいた死は、常に静寂と共に訪れる。
作業を終え、死骸を魔法袋に放り込もうとしたその時だった。
森の奥から、耳障りな「爆音」と、不自然なほどに眩い「光」が漏れ出してきた。
「……始まったか」
俺は眉をひそめ、光の発生源へと視線を向ける。
鼓膜を刺すような高音の共鳴、そして肌をチリチリと撫でる『聖属性』特有の、あの生理的な嫌悪感を催す魔力残滓。それはまるで、自然界には存在しない色を無理やり網膜に焼き付けられているかのような、歪な波動だった。
木々の隙間から覗いた先には、きらびやかな鎧に身を包んだ四人の少年少女がいた。
彼らは、たかが数体の魔物を相手に、まるで世界を救う決戦かのような派手な魔法を乱舞させている。
「燃え上がれ、聖なる炎! 悪しき影を焼き尽くせ!」
男一人が叫び、巨大な火球が放たれる。
……非効率極まりない。
熱変換のロスが大きすぎる上に、聖属性の『概念』を上乗せしているせいで、魔力の半分以上が発光と霧散に消えている。
彼らが全力で放ったその一撃は、俺が指先一つで出す熱線の数倍のエネルギーを消費して、同等の殺傷力さえ得られていない。まるで最高級の薪を使って、線香花火をしているようなものだ。
そんな滑稽な「演劇」を眺めていると、勇者の一人が、木陰に立つ俺の存在に気づいた。
「おい、君! 避難して! ここは危険だ!」
慌てた様子で駆け寄ってくる少年。その瞳には、純粋な正義感と、それ以上に深い「無知」が宿っていた。
俺は内心で深くため息を吐くと、一歩も動かず、ただ指先を彼らが苦戦していた魔物へと向けた。
放たれたのは、聖属性などの不純物を含まない、純粋な「火属性」――ただの超高熱。
一瞬。
轟音も閃光もなく、魔物の生命活動が物理的に停止し、その巨体が炭化して崩れ落ちる。
「……俺はお前らよりも強い。心配される筋合いなんてないんだが」
静寂が森を支配した。
勇者の少年は、差し出した手を空中で止めたまま固まっている。背後で大技を構えていた他のメンバーも、何が起きたのか理解できず、マヌケに口を開けていた。
「あ……え? 今、何をしたんだ……?」
少年が絞り出すような声で問う。
彼らにとっての魔法は「神から与えられた聖なる力」であり、祈りと共に放つものだ。指先を動かしただけで物理法則を書き換えるような、エルの無機質な「現象」は、彼らの常識の範疇に存在しない。
「単なる熱処理だ。……お前たちの魔法は、見ていて目が疲れる」
俺は事務的に魔法袋の紐を締め直すと、踵を返した。
背後から「待ってくれ!」と声が聞こえたが、無視だ。檻の中で幸福に踊っている連中に、外の世界の歩き方を教えてやる義理はない。
いかがでしたでしょうか
ぶっちゃけこのあと勇者をなんやかんやで登場させようか考えているんですよね
【今回の変人メモ:この作品のまえがきやあとがきについて】
実は言うと、1話完成ごとに書いているため、そのままの気持ちで書いているときもあります。
なので、まえがきやあとがきが投稿前日で内容を変更していたりします
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