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触手の演説

作者: 網笠せい
掲載日:2026/01/25

 諸君! 我々触手は虐げられてきた!

 これをお聞きの皆様のなかには「え? 意外といい目を見てきたんじゃないの? 同人誌の薄い本とか、ギャルゲーでさんざん蹂躙する側だったじゃん! 映画に出てもエイリアンっぽい立ち位置でしょ?」と首をかしげる方もおられるかもしれない。

 しかし断固として言っておきたい。──あれは職務としての触手ムーブである、と! 映画やドラマで俳優が役を演じるのと大差ない。

 台本である! 我々に求められる役割が、そうであったというだけである!

 ではここで、なぜ、触手という特殊性癖を持つ人々がいるのかを紐解いていくことにしよう。

 由来について考えたことのある方は、おそらく、そう多くはないはずだ。

 ……鉄棒ぬらぬらである! つまりは葛飾北斎である!

 偉大な浮世絵師である彼による春画が、触手イコールエロという一大文化を生み出してしまった! よくそんなこと考えついたな!

 それでも北斎と名乗らず、別名義を使うところに、彼の奥ゆかしさとちょっとした遠慮が見える!

 BL作品で声優さんが名義を変えるようなものである。現代においては、ゾーニングに積極的であるとも言えよう。これは幼い人々が誤って接触しないための安全弁であり、文化的棲み分けに一定の寄与をしている。

 しかしながら、我々触手は長い間、そういう、ある種隠された存在だったのだ。触手イコールエロという、悲しいレッテルを貼られて!

 ……実に、悲しいことだ。

 これに異を唱えたのが、アメリカの作家、ラブクラフトである。

 彼の生み出したクトゥルフ神話には触手が登場するが、異界の神としての触手である!

 我々触手は、これに歓喜し、期待した。触手の地位が向上するのではないか、エロばかりではなく、他の観点から触手を描く人々が現れるのではないか……と!

 しかし残念ながら、モンスターのような扱いだった。


 ……我々触手は、地位向上を訴える! 遅々として進まぬ我々の地位向上について、訴えていく!

 触手が味方になるお話があってもいいじゃない! 触手だって生きてるんだ! 末端とはいえ、社会を構成する一員なんだ! ノーモア触手差別!

 ……ご清聴、ありがとうございました!

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