お腹の中での生命
掲載日:2025/12/13
心地のいい温もりがあった。
それが何かを、考える必要はなかった。
何かの体温。
それだけで、十分だった。
耳をすませば、
音のようで、音ではないものが聞こえる。
声のようで、意味を持たないもの。
規則正しく続くリズム。
途切れることのない、やわらかな振動。
そこでは、
言葉はまだ必要とされていなかった。
理解される必要も、
説明される必要もなかった。
ただ、
そこに在ることが、
そのまま成立していた。
私は後になって、
それを「世界」だったのだと思う。
名前が与えられる前の、
意味を背負わされる前の、
静かな場所。
心地のいい温もり。
何かの体温。
耳をすませば、
確かに、音があった。




