時越えサンタさん
一足早すぎるクリスマス
街はクリスマスモードに突入、イルミネーションが商店街を輝かせる中、マサテルは帰り道を急いでいる。
正直云うと、マサテルはクリスマスどころではなく、明日を生きる事でいっぱいいっぱいだ。
年の暮れにも関わらず、マサテルの脳では次の仕事の予定が既に廻り出していた。
(嫌だ……この時期のアレ……吐き気がするほど嫌すぎる‼)
今日から勤め先のカラオケ店で暫くの間続けられてる『地獄のトナカイカチューシャレジ対応』が、マサテルには生き地獄な訳だ。
このシーズン、あらゆる店のスタッフが意志を無視され、上からの、命令でサンタ帽子やトナカイカチューシャを装着させられるという恐怖の儀式。
因みにハロウィンのシーズンには、男性なら悪魔やミイラ男、女性なら魔女のコスプレ。
(サンタ帽子はサンタが、トナカイカチューシャはトナカイが付ける、トナカイには要らねえか。
兎に角、嫌なんだよ!)
命令の愚痴を胸にしまっている最中、端末に会社から連絡が入った。
『聖夜、決行!
集合場所、『カラオケ集まれ音痴共二号店前』
役割、紫サンタ』
(紫……!)
「うっしゃああっ‼」
少し声量が飛び抜けてしまい、通行人から注目を浴びた。
(トナカイカチューシャレジ対応は嫌だけど、聖夜のサンタは最高なんだよな‼)
最高と両手グーを決める、その理由とは……。
聖夜を迎え、『カラオケ集まれ音痴共二号店前』には、各々の支店からスタッフ達が数人集まっている。
赤サンタ、白サンタ、緑サンタ、茶サンタ、黄サンタ、灰サンタ、そして紫サンタがペアのトナカイと組んで肩にプレゼント用の袋を担いでいた。
色とりどりのサンタ達の前に、金サンタが動きの説明をし始めた。
「皆さん、今年も時越えサンタ活動の時期が来ましたね。
サンタ服の色によって配達場所の時代が異なり、言語の使い方もそれに連動します。
時の流れに身を任せながら、決して今の言葉『論破』『塩対応』『親ガチャ』等の通じないワードは言わないことです。
良いですね?」
注意事項を聞いたサンタとトナカイ達が、親指を鼻の下に当てて、同じ言葉を唱えた。
ーだあいじょううぶうう‼ー
「それなら安心、それでは皆さん……時越え配達、身バレしないように気を付けていってらっしゃい!」
各々散らばるサンタとトナカイ。
配達ペアは現れた歪みに入り、配達先へと赴いた。
紫サンタのマサテルとトナカイが向かう先は、彼らの両親が幼かった時代。
クリスマスはそれほど浸透しておらず、なおかつ二人の親たちは貧しく物に恵まれていなかったらしい。
「マサテルサンタさん、いよいよ今夜恩返しが出来ますね‼
俺らの両親たちへの!」
「おうよ‼
育ててくれた親に、気持ちを伝えられるのはこの日くらいしかないからな‼」
今はこの世にいない両親のもとへ、紫サンタとトナカイは嬉しさとプレゼントを配達しに時を越えて行った。
カラオケ店にした理由は年代物の曲が沢山あることから、時を越えている事を連想するからです
「だあいじょううぶうう‼」が分かる方、どれだけいますでしょうか?




