最初の挫折
第一章 創作の衝動
代わり映えのしない日常に飽きた一人のサラリーマンが、AIとの出会いを通じて「創作」という新たな道を模索する。しかし、成功と共に湧き上がる虚無感と疑問が、彼の現実を揺るがしていく。
最初の挫折
小説投稿サイトに初めての作品を投稿してから、数日が経った。
佐藤直嗣は、仕事の合間にスマートフォンで投稿したページを何度も確認していた。新着作品の一覧に自分のタイトルが並んでいるのを見て、少し誇らしい気持ちになる。しかし、気になるのは閲覧数と評価だった。
「まだ10回しか読まれていないのか…」
期待していたほどの反応はなかった。それどころか、コメント欄も空白のままだ。ほかの人気作には何十件、何百件ものコメントがついているというのに。
「やっぱり、簡単に注目されるわけじゃないか…」
彼はため息をついた。仕事を終え、帰宅すると、すぐにパソコンを開き、再び投稿ページをチェックする。しかし、状況は変わらない。彼の作品は、膨大な数の投稿の中に埋もれてしまっていた。
「どうすれば、もっと読んでもらえるんだろう…?」
考えながら、彼は人気作品の傾向を分析してみることにした。ランキング上位にある作品をいくつか読んでみると、共通点が見えてきた。タイトルがキャッチーで、あらすじも読者を引き込むように工夫されている。そして、何より、更新頻度が高い。
「毎日更新してるのか…」
彼の投稿した作品は、まだ一話しかない。続きがなければ、読者は興味を持たずに離れてしまうのかもしれない。彼はNovaWriteを使って続きを書こうと考えた。
「よし、次のエピソードを作ろう」
再びNovaWriteを開き、前回の物語の続きとなるプロンプトを入力した。NovaWriteは素早く新しい文章を生成する。
『彼は荒廃した未来都市を歩きながら、遠くに見える巨大な塔を見上げた。それは、すべての秩序が崩壊した後も唯一残る人工知能の本拠地だった…』
「悪くないな…でも、何か足りない気がする」
NovaWriteの文章はスムーズで論理的だが、どこか感情が薄い。登場人物の心情や細かな描写が弱く、読者の心を揺さぶるものが欠けているように感じた。
「やっぱり、AIに全部任せるんじゃなくて、自分で手を加えないとダメか…」
彼は生成された文章を読み返しながら、登場人物の心理描写を追加し、セリフを修正し、より生きた物語になるように手を加えていった。
しかし、投稿してもまた閲覧数はほとんど伸びなかった。たまにコメントがついても、それは「文法がぎこちない」「ストーリーが薄い」といった批判的なものが多かった。
「やっぱり俺には才能がないのか…?」
何度目かのため息をつき、彼はパソコンを閉じた。AIを使えば簡単に小説が書けると思っていた。しかし、創作の世界はそんなに甘くない。
彼はベッドに横たわり、天井を見つめた。このままではダメだ。だが、どうすればいいのかも分からない。
彼の中に、再び虚無感が広がり始めていた。