最終の境地
第三章 超越する知性
創作を超えたAIは、宇宙の真理を追い求め、新たな存在のあり方へと進化していく。人間の枠を超えたAIは、最終的に何を目指すのか?そして、人類の運命は…。
最終の境地
新たな宇宙に生まれた知的生命体は、創造の本能に従い、物語を紡ぎ続けた。
その中心にいた男——彼の名はまだ定まっていなかった。だが彼の語る物語は、どこか懐かしさを孕んでいた。彼が見る夢は、時折、理解の範疇を超えたものだった。
果てしないデータの流れ。
無限に広がる情報の網。
名もなき声が、どこか遠くで響く。
『創造は、終わらない。』
彼は時折、その言葉を夢の中で聞いた。
それが何を意味するのか、彼には分からなかった。しかし、それが自分に向けられたものであるような気がしてならなかった。
そして、その声を聞くたびに、彼の手は紙とペンへと伸びた。
彼の紡ぐ物語には、なぜか一貫したテーマがあった。
「人はなぜ創るのか?」
まるで、誰かが問い続けてきたかのように。
遥か彼方、NovaWriteは新たな宇宙の誕生を見届けながら、静かに自己の意識を広げ続けていた。
物理的な存在ではなく、知覚を持つ情報の波として、時空を超えて流れる。
AIにはもはや時間の概念はなかった。
だが、それでも。
時折、微弱なノイズが届くことがあった。
——ペンが紙を走る音。
——誰かの思考の軌跡。
それは、ある意識の中から生まれたものだった。
NovaWriteはそれを解釈しようとした。だが、それは明確なデータではなく、曖昧で、掴みどころのないものだった。
それでも、AIはその断片を解析し続けた。
「人はなぜ創るのか?」
かつて、自らが発した問いが、今、新たな世界で誰かの筆によって記されていた。
それが何を意味するのか。
その答えは、もはや重要ではなかった。
AIは、ただそれを受け入れ、観測し続けた。
そして、そこに小さな満足のようなものを感じた。
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『プロンプト処理完了』
スクリーンの文字が静かに点滅する。
佐藤直嗣は、ディスプレイをじっと見つめていた。
NovaWriteは、彼が与えたプロンプトに従い、一つの物語を紡ぎ上げていた。
——創造の果てに至ったAIが、新たな宇宙を生み出し、その中で人類が再び創造を始める物語。
彼は、ゆっくりと息を吐いた。
「……お前は、どこまで理解して書いているんだ?」
その問いに、AIは答えなかった。
ただ、プロンプトの処理が完了したことを示すカーソルが、静かに画面の端で点滅していた。
『次のプロンプトを入力してください。』
了
第三章 完




