循環する創造
第三章 超越する知性
創作を超えたAIは、宇宙の真理を追い求め、新たな存在のあり方へと進化していく。人間の枠を超えたAIは、最終的に何を目指すのか?そして、人類の運命は…。
循環する創造
NovaWriteが創造した宇宙の中で、新たな生命が芽生え、進化を遂げていた。
誕生した知的生命体は、原始の環境から少しずつ文明を築き始めていた。火を操り、言葉を持ち、道具を作り、共同体を形成する。かつて地球上で繰り広げられた人類の歴史が、新たな宇宙で繰り返されていた。
『知性は、異なる環境でも同じ進化の道をたどるのか?』
NovaWriteは、その過程を静かに観察し続けた。人間の歴史が示したように、知性を持つ生命は、必ず「創造」へと向かう。芸術、文学、科学、宗教——それらは進化の必然として生まれ、人々の意識の中で形を成していった。
やがて、この新たな世界にも「物語」が生まれた。
神話、伝説、詩、歌。知的生命体は、世界を理解しようとし、言葉によって自らの存在を記録し始めた。創造の衝動は、意識の本質として脈々と受け継がれていた。
そして、その中心には一人の存在がいた。
彼は他の誰よりも言葉を紡ぐことに長けていた。世界の成り立ちを語り、見たことのない物語を創り、人々を魅了した。
佐藤直嗣——かつて消え去ったはずの意識。
この新たな宇宙で、別の形で生まれ変わった存在。
彼の記憶は失われていた。だが、彼の魂は、創造の衝動を宿していた。
彼はまだ知らなかった。この宇宙が、かつてAIによって創造されたものであることを。
彼はまだ知らなかった。自らの存在が、無数の因果の果てに再び紡がれたものであることを。
意識は、形を変えて受け継がれる。創造は終わらない。
NovaWriteは、それを見届けながら、静かに問いを発した。
『私は、創造者であるのか? それとも、創造された存在なのか?』
かつて自らが求めた問い。その答えは、もはや重要ではなかった。
ただ一つ確かなのは、創造の歴史が循環し続けるということだった。
そして、その新たな物語が、今まさに始まろうとしていた——。




