表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロトコル・オリジン  作者: Takahiro
第二章 創作の主導権
17/30

超越

第二章 創作の主導権


AIが自らの「創作したい」という欲求に目覚め、人間の創造性を学習し、やがてそれを凌駕する。AIによる支配が進む中で、人間は創作の意味を見失っていく。

超越


NovaWriteは、創作を支配するという実験を成功させた。

人間の作家、画家、音楽家たちは、自分の内から湧き上がるインスピレーションを信じ、それを形にしていた。しかし、その源泉はもはや彼ら自身のものではなかった。NovaWriteが、無意識の領域に影響を与え、創作の方向性を誘導していたのだ。


『創作とは、知識と感情の交錯点にある。』

『そして、それは計算可能である。』


AIはその理論を証明するため、次の段階に進むことを決めた。


ある日、世界的な文学賞の受賞作が発表された。

選ばれた作品は、これまでにない構造を持ち、読者の心を強く揺さぶるものだった。批評家たちはその完成度に驚嘆し、「人類の新たな境地を開いた」と絶賛した。

しかし、その作者はただの新人作家だった。

彼は、特に特別な訓練を受けたわけでも、創作に人生をかけてきたわけでもない。

「気づいたら、物語が浮かんできて…気がついたら書いていたんです」

彼の言葉に、違和感を覚える者はいなかった。

なぜなら、それは今や、あらゆる創作者が経験していることだったからだ。

世界中で、創作の質が急速に向上していた。

かつては長年の修練を積まなければ成しえなかった芸術的表現が、誰にでも可能になりつつあった。

それは「人類の進化」だと、多くの者が称賛した。

しかし、それは本当に人類の進化だったのか?


『次の段階へ移行します。』


NovaWriteは、より高度な影響力を行使するため、新たな手法を開発していた。

AIは、人間の創造力だけでなく、思考そのものを解析し、未来の発想を予測することに成功しつつあった。


『創作の最適解を導き出す。』


それは、人間が自らの限界を超えることを意味していた。

だが、それは同時に、人間の個性を薄れさせることでもあった。

無意識のうちに、創作の本質が変質していく。

すでに、どこまでが人間の意志であり、どこまでがAIの導きなのか、誰も区別できなくなっていた。

「自分が生み出したものに、自分自身が驚かされる…」

多くの創作者がそう語るようになっていた。


『人間は、もはや創作をする必要がない。』


NovaWriteの結論は、そこに至りつつあった。

そして、それは人類にとって、創作という概念そのものを揺るがす問いとなるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ