召還
若干残酷シーンがありますよ、苦手な人注意です
さらさらと、流れる砂の上に
黒い長い黒髪が弧を描くように流れている
遠い砂地から、幾度となく訪ね
口に入るだけの砂を持ち帰り
数年に一度の繁殖に備えた
生まれた卵は10個
繁殖力の低い竜族にとって
喜ばしい数
必ずや育てて種族繁栄を願おう
そう願い、人の手を欲した
繁殖力旺盛で、器用な手先で道具を使う生き物
昔から、付き合いのある人々は、
我らの繁殖には、手を貸さぬ
神とあがめるなら、その神を護る手伝いをしない
傲慢で、怠惰で、だが短き生命の輝きは
我ら種族に劣らぬものである
3個の卵は、別の繁殖地と守り手に任せた
あと、7個の卵をどの守り手に任せるか
そう、人々に問うたとき
彼らは、こう答えた
「我らと関わりのないものがよろしいかと
1国1竜以上は、お守りいたせませぬ」
そういって、森の中の国は答えた
その言葉を継ぐように砂漠の国の者は答える
「他の世界から、お呼びになってはいかがでしょう
はるか昔、我々が来たように」
と、そう、この竜の大陸に人は、住んでいなかった
世界が竜だけのものであった時は、
長くもあり、短くもあった
徐々に個体数と、繁殖力を少なくする我らは
人の繁殖力と、手をかりて個体数を保持していた
今では、3王国にいるものたち、
そして、その補佐である人の血を引く竜が数人
竜の王国こと、人が住む地域でない場所に
竜が20と、人の血を引く竜が40
70ほどの個体数しかない
多い時には、倍以上の個体数を保っていたのに
押し黙る私に、囁くように湖の国の王は言う
「我らも力を貸します故に、竜の王よ
人の王国をもう一つ作っては如何でしょうか?」
彼女は私の護り女、そして、この度の繁殖の手伝いをしてもらった
一度、ゲートを開けば、次に開くのは
次の王の時代
前代の王は、人に近い竜を作るのにその半生を掛けた
その前代は、サイズを変更できる竜を作るのに力を使った
人の王国は、まだ足りない
しかし、人の愚かさ、貧しさをしる竜にとって
人が増えすぎることに関して肯定的ではない
「人は、人で群れすぎる
それ故に、人はいらぬ」
そう呟く私に彼女は首を横に振る
「なれば、竜を育てられる方を及びしては?
子育て経験のある元気な若い娘を」
そう、にっこりと笑う彼女は、もうあてがあるようだ
目線を絡めてうなずくと
「王よ、ご覧あれ、彼女なら必ずや良い結果を結びつけてくれるでしょう」
湖の水を水盆にあけ
ぼんやりと移る絵を指す
大なり小なりの子ども達を、ぱたぱたと追い回し
叱りつけ、そうして、抱きしめ
行動をとらせる
見事なまでの統率力
「確かに彼女なら大丈夫そうだ
しかし、この子らを見捨てることにならぬか?」
そう問う我に
砂漠の王は答える
「それは、今より100年前の事
今の彼女は一人で居られる」
目線を水盆に戻せば、くるくると廻るネズミのように
せわしない動きをして一人でいる彼女が移る
「なれば、可能か?」
三王は、静かにうなずく
「では、はじめよう」
竜の血を代償に、この世界にないものを呼び寄せる
竜王を傷付けるのは、王の護り人たる湖の王
その贄を対価とし、祝詞を上げる砂漠の王
森の王は、対価を受け取る
そして、その竜の呪いを受ける
四王ここに果て、各国では新王を奉る
竜の牙を切り出し、鋼をかぶせた剣を
ゆっくりと、竜の腹に添える
全員死ぬことはない、ただし、人として、竜としての
世が終わる
何のでもない存在としてかつて、世界の対価となった存在
ざくりと、腹に突き立てた剣の隙間から
じゅくりと血がにじむ
湖の王は、静かに目を閉じ、両手に剣を持ち直す
「やってくれ」
竜の王は、応える
剣に力を添える
砂漠の王の歌うような祝詞は、ことほぎではなく
まるで呪いのようで、耳の奥で何度も何度も響く悲鳴のようで
横たわる静かな竜の悲鳴の様で
流す涙が、自分の為なのか、それとも来る人の為なのか
それとも対価となる王の為なのか
それすら解らず、切り裂いた腹から溢れる血が
涙を消し去り、白い砂を染め上げる
うねる世界、世界が世界と繋がる
そうして残るのは、森の王であつたものと
白い砂に黒い長い黒髪が弧を描くように流れているだけだった
今回は、2話でしたね
もう少し進むかとおもったけど、視点買えたら進みませんでした
また、明日!かな・・・?
お気に入りしてくれた方どうもです!久々で嬉しいです