334 地球にさようなら5
当たり前の日常
それが、幸せと気付く瞬間が幸せで有ったらその人生は最高である
しかし、それが、幸せでは無かったら
その人もまた最高である
その幸せを探しにいくことができるから・・・
私の幸せはここにあり
そして、竜の国にあるはず
だから、ただいま、そしてさようなら
寝静まった部屋の中
私はぎしりと音を立てて学習机の椅子に座った
小さな小さな机と椅子
小学生の時買って貰ったけど、共用になり
そして、すぐに使えなくなって私はちびちゃんたちと
居間や和室で勉強したりしてた
受験の時はさすがにここでしたけど
勉強する人専用の机ということで、この机を使いたくて仕方ない子に
譲って譲ってで、結局私は大きくなってしまって
使う機会を失った
でも、第一子である私が一番最初に座り
一番最初に勉強した机
いろんな所に傷ができて、この傷は私がつけた傷って分かる
きっとみんなも覚えてるだろう
机は全部で3つあるけど、この古い味のある学習机は一番人気だった
シンプルで、照明すら付属でついてなくて
宮大工になりたいと言った弟が、この机みたいなの作りたいと言ってたの覚えてる
味のある机
静かに、そして暖かくこの机は、座る人、座る人
がんばる人たちを応援してくれた
そんな風に私たち家族も一緒に幸せを育んでたんだなぁって
しみじみ思えた
この家族で良かったって
「眠れないの?」
布団から、顔だけ起こして咲良が聞いた
「ううん、そうじゃないけど
なんかね、座りたかったの」
ごそりと布団から抜け出して私のそばに来て
膝の上に頭をのせる
「何甘えてんのよ」
笑いながらそう言うと、
なんか、思い出す
そう言葉少なく言われた
私が勉強してて、みんなは寝静まって
かりかり鉛筆の音
そしてぱらりとめくられる紙の音
柔らかな寝息
そこに、咲良は起きてきて
ねぇちゃん話していいかって言ってきた
どうしたの?寝ないの?
って言ったけど、私もその言葉が白々しいのを知った
だって咲良は泣いてたから
話するまでは寝られない
そう言って、泣いてる顔を見せたくないのか
私の膝に顔をつっぷして、ぼそぼそ話した
あの時の話はなんだっけ
たしか、彼女がどうとか・・・そういう話だった気がする
「すげぇ寂しい」
そういって、じわりと暖かくなるスカート
それは、咲良が泣いてる証拠
「私も寂しい
でも、行きたいなって思ったし
やりたいって思ったの」
そう言ってさらさら髪を梳きながら頭をなでる
こくりと頷く
「いつかは、いなくなるって
当たり前だけど知ってた
今だってほとんどいないけど、
それでも安心してた
ねぇちゃんは、どこにも行かないって・・・」
保守的で、内向的な私だから
そう思われてた
「でも、今のねぇちゃんがやりたいなら
そうすればいいって、頭ではわかってんだ」
だけど・・・寂しい
そう消え入る声で咲良は涙とスカートの布に吸い込まれる声で言った
「私も寂しい
だから、泣いちゃうよ・・・
両方できたらいいのにって何度も考えた
でも、できないから、選ばなきゃ駄目だったの」
私の頬をするすると滑り落ちる涙は
咲良へ降り注ぐ
「辛いけど・・・辛いけど
乗り越えなきゃ行けないって
みんなが、教えてくれた
幸せにはなる、だからね・・・咲良も明日は笑って」
そう言うとスカートにすりよるように頷いた
私も泣いて、意識がもうろうとしてた
いつの間にかに布団に入っていて
目が覚めると、抱きつく晴紀と
早起きしてた奈津などにつつかれた
そうして私の地球の最後の日の朝が始まった
久しぶりです
とりあえず、4月に新話を目標に終わらせましょう
こんな時なので、もっと楽しいお話を多くりしたいですが
お別れもじっくり堪能してください
また、次の話で




