333 地球にさようなら4
「ありがとうございます」
読み終わった私に、国分さんは、やわらかくそう言った
「やはり、ユキさんの声で読まれる物語は世界が広がります
私も精進せねばね」
そういって、にこり、と笑い
両手を広げた国分さんに私は、ぎゅっと抱きついた
私たちの間に言葉はなかった
お互いに、ありがとうと幸せでいてね、
言葉に出せてもそれしか言えない
だから、私たちは、お互いのぬくもりを分かち会うように
抱き合った
「ねぇちゃん」
こんこんと、扉がノックされたと当時に弟の声
私たちは、体を起こして、離れがたいぬくもりに別れを告げた
にこりと笑う国分さん
私もほほえみ返す、見えないけど、国分さんには伝わってる
絶対に
「また、聞かせね、その本」
そう、次郎くんがそういうと、もちろんだともと、答える
「ゆきさん・・・お元気で」
「はい、国分さんも」
家に帰った私を待っていたのは、家族全員
仕事はどうしたの?と聞きたくなる父と母
学校は、終わってるけど、部活や親方のところでの修行とか
聞きたいことは山ほどあるけど
今日行くと言ってないのに、
ホントにみんな、みんな知っていた
私が、帰ってきたことを
「塩屋さんがね、連絡してくださったのよ」
おかーさんがそういう
ああ、そっか、誰かが誰かに連絡して、会いに来てくれたんだ
手紙は書こうとおもってた、人たちにも会えたのは
そういう、優しい人たちのつながりがあったからなんだ
偶然もある、でも、きっと、ほとんど優しさネットワークだよね
「あと、りつ姉からも」
携帯にメールで、ユキちゃんかえってます
の文字
飾らない文章、だから、あの別れたあとすぐに
りっちゃんも泣きながらメールを打ったんだろうと想像できた
それでも、ちゃんと、みんなでお別れしてほしい
してあげてほしいっていうりっちゃんの気持ちがメールから伝わってきて
私の涙腺はゆるゆるとほどけて
みんなの顔が涙でゆがんでしまう
「おかえり、でも、いってらっしゃいなのよね」
そう、おかーさんが言う
私はこくりと頷くしか出来ない
ぽとん、ぽとんと、足に当たる涙の熱さが
現実に引き戻してくれてるけど
そうじゃないと、すがりついて泣きたくなる
この感覚は覚えがある
その時は、こんな風にみんなが集まってなんていなかった
おかーさんが、私に、明日から、あなたは一人暮らしねって
急に線を引かれたように、
家を出る前日に言われた
私はいや、みんなといたいと、泣きそうにもなったし
あこがれの一人ぐらしに胸躍らせていた
だって、あの時は、まだ一人暮らしの寂しさなんて知らず
その一人を楽しみたかった
でも、その次の瞬間おかーさんは
私に言った、1年は、我慢して帰ってこないこと
連絡は定期的にするからね、と携帯電話をくれた
ほしかった携帯電話
でも、それは、別れを意味するもので
少し複雑
こう考えるといつも、素直に喜べなかったことが多かったかも
与えられた結果で、いつもいつも、不服におもったり
楽しんだりしてた私だったんだよね
でも、今日、私は自分の意志で行くんだよね
それは、お別れでしかないから
涙が止まらない
ちゃんと、お別れしたいのに、幸せになりにいくって言いたいけど
口を開けば嗚咽が漏れそうで
どうしようもないぐらい、震えて涙がこぼれる
「お嫁に出すようなものなんだろうけど、
会えないというのは寂しいものだね」
そうお父さんが言う
「泣かないで、ユキ姉」
そう言って、ぽすりとタオルを私の顔を押し合えた
「笑って、私も笑うから」
そう言った、 ちゃんの声も震えてた
みんなみんな、おかーさんや、おとーさん
そして、兄弟姉妹全員で話し合って納得してくれたんだと分かる
「うん・・・ごめんねぇ・・・笑いたいね
笑顔がいいよね・・・」
私は必死でそう言う
「写真撮るんだから、不細工になってもしんねぇーぞ」
そう言って、少し怒った声
でも、怒ってるんじゃない緊張してるんだよね
自分の感情が爆発しそうで、泣いたり怒ったり
そして、その勢いを誰かにぶつけることをしないように・・・
みんなみんな、自分と戦ってる
行かないで・・っていわないように
私は、涙をこするように拭く
後でひどいことになっちゃいそうだけど
いたいぐらいがちょうどいい
化粧なんて、ほとんどしてないし、もう泣いて泣いて崩れちゃってるから
いっそのこと全部はがして
素直な自分でいたい
タオルの中、二度三度、ゆっくり呼吸をする
ひりひりする顔と、喉
そして、いたいぐらい締め付ける心臓に
大丈夫、落ち着いてと言って
顔を上げた
「ただいま」
私はにっこり笑ってそう言った
今更だけど、言いたかった
でも、みんな思い思いの顔をして
そして笑った
「おかえり」なさい」
って
いやぁ、昨日の夜 2時になったけど
かけましたー
続き、うん、仕事も今日もいっぱいでしたよ
ひそかに一人でし終わったらしい自分すっごーい・・・遠い目
な感じですが、泣いてそして、心ふるわせていただけたら幸いです