328 竜の契約4
「あ、起きた」
ふわふわと頭をなでる感覚が気持ちいい
泣き疲れて寝ると、また子供みたいなことしちゃったようで
顔が上げられない
「はい、水、それとも、果物がいいか?」
顔をあげるとるりちゃんが水と、果物を持ってた
「ありがと」
こくりと飲む水は、柔らかくてするりと喉を抜けていく
ふぅ、ちょっと落ち着いた
目の周りがぱりぱりする
泣いて、赤くなって
みっともない顔になっちゃってるだろうけど
みんな気にしてない
むしろ、みんな同じような感じ
泣いてはないけど、どこか、泣いた後のようなだるそうな感じが
漂ってる
紫の木たちもちょっと元気がなさそう
「大丈夫?、元気になぁれ」
そばにいって、そう言った瞬間
少ししおれていた木は、目に見えてぴんっと葉が張った
「お゛っ」
後で変な声が聞こえた
振り返るとヴェルデさんが、驚いた顔をしてる
「どうしたんですか?」
「いや、相変わらずすごいなって思ってな」
んー、それ説明になってませんよ
ヴェルデさん
「そうですね、流石、フォルティナです」
名前を呼ばれると、ふわっと優しさがこみ上げてきて
あったかな気持ちになる
「ブロージュさんも説明になってませんよ」
そう、いうと、くすりと笑って
そうですかね、と言ったブロージュさんは
嬉しそうだ
「僕らの名前も呼ぶ」
ぐいっと手を引かれた方をみるとみんながこっち見てる
「名前」
名前読んでほしいの?
んー
「たんぽぽちゃん」
一番近くにいて、手を掴んだたんぽぽちゃんを呼ぶ
うん、と頷く
「ときわちゃん」
こちらをちらりと、みて笑う
「べにあかちゃん」
「るりちゃん」
「あやめちゃん」
「こくたんちゃん」
「はくじちゃん」
そう、一人ずつ見ながら呼ぶと、頷いたり笑ったりして
私を満足そうにみる
「私の名前も呼んでおくれ」
ルアンさんが、離れた所から
「ルアンさん」
「いいもんだねぇ」
やっぱり、満足そう
「オレも」
ロートリアスも、ぼそりとつぶやくように言う
「ロートリアス」
そう言った途端、ロートリアスの顔が赤くなった
「ガキ」
いやいや、ときわちゃん、ロートリアスよりときわちゃんの方が
年しただよね
「うっせ」
あれ、反論なしなんですか、
んー、よくわかんないなぁ
「オレもね」
ヴェルデさんが言う
「ヴェルデさん」
「うん、ありがと」
やっぱり、満足そう
「さて、これで、名前による契約が全員とすみました」
ブロージュさんが、そう言った
「契約ですか?」
名前を呼ぶだけで?
「そうですよ、フォルティナ
あなたを表すフォルティナ
私を表すブロージュ
私たち竜は、その血の記憶にあなたの名を刻みました
あなたが竜ならば、同じように刻まれたことでしょうけど
それでも、何かを感じたでしょう」
たしかに、抱きしめられるような
そんな感覚と、刻み込まれたような感覚があったよね
それのことかな
「あんたは、竜じゃないけど
ある意味竜に近いな」
そう、ロートリアスがいうけど、そうなのかなぁ
全然、ルールとか未だ分かってないけどね
「紫の木のおかげかもね」
苦笑いのあやめちゃん
「あの人、ホントにいっぱい飲ましたからね」
「・・・まずいのにねぇ」
首を横にふるけど、紫の木の樹液のことかなぁ
見た目は悪いけど、あれおいしいけどね
「おいしいのになぁ」
私がそういうと、全員、苦笑い
あれ、竜にはおいしくないんだっけ・・・
味覚がちがうもんねー
「ま、本人がいいって言ってるからいいんじゃない
それにいいことあったし」
たんぽぽちゃんが、そう言うと
それもそうだと、同意があがって
盛り上がってるけど、私、蚊帳の外ですよー
すごい、雪ですね
こんな日は、家の中で、まったりがいい
幸せになる物語が似合う、そう思います
と、いうことで、更新ですっ